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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シリア軍のトルコ砲撃の狙い

 当初はトルコに譲歩の姿勢を見せていたシリア政権ですが、その後もトルコ領内への砲撃を続けています。この件に対し、「シリアはトルコを紛争に引きこもうとしている」との分析があるようですが、それには疑問です。
 アサド政権にとって、トルコとの本格的な戦闘は、NATOの軍事介入を招く危険な導火線になる話ですから、それは極力避けたいはず。なので、公式には今後もトルコとの緊張緩和を模索する動きを見せるでしょう。
 しかし、それで自由シリア軍が国境エリアに地歩を固めるのは(すでにその動きが顕在化しているのは既報)、政権崩壊に結びつく話なので絶対に認められない。なので、トルコの本格的な軍事攻撃に至らない程度に、自由シリア軍を叩くという戦術かと思います。
 実際、シリア軍が砲撃しているトルコ領内の標的の多くは、自由シリア軍の拠点です。シリア政権は、その程度なら、同程度の報復砲撃を受けても全面戦争には至らないとの読みがあるのでしょう。実際、トルコも全面戦争には出ないでしょう。
 シリア軍はトルコから応分の報復を受けますから、それなりの死傷者が出るでしょうが、政府軍将兵を多少失っても、自由シリア軍の拠点を潰すほうが重要との考えですね。自軍将兵の生命を考慮しないなら、軍事的にはたしかに合理的な戦術といっていいでしょう。
 アラブ社会では珍しくない考えですが、アサド政権も「口先と実行は別」という方針は一貫しています。トルコとの関係を破局しない程度に、口先で緊張緩和を掲げ、実際にはトルコ領内の自由シリア軍拠点攻撃を続けるということになるでしょう。

(追記)
 シリア反体制派SNSをフォローしてますが、じつは反体制派にトルコに期待する声がそれほど盛り上がっていません。反体制派のメイン世論では、「これまでの長い期間、冷たい諸外国がまったく支援してくれなかった中、自らの手で、多大な犠牲を払いながら、ここまでバシャールを追い詰めるところまで来た」という意識がたいへん強く、昨日のエントリーで紹介した旧友のメールと同じく、「自らの力で革命をやりぬく!」という威勢のいい声が高まっています。
 ですが、私自身はちょっと違う考えで、トルコ軍が国境地帯に事実上のセーフゾーンを担保するかどうかが決定的に重要になると見ています。リビア・モデルのようなNATOの本格介入は期待できませんが、事実上の安全回廊を確保し、後は反体制派への本格的な軍事支援がスタートすれば、かなり状況が変わると思います。
 米大統領選でオバマに追いついてきたロムニーは、シリア反体制派への軍事支援を公約していますが、仮に勝利したとしても、来年になりますね。バッシャールのこれまでのやり口をみれば、とにかく現在の政権を一日でも早く崩壊させるのが、犠牲者を抑える唯一の道です。なんとか早急な軍事支援が望まれます。
(武器を置いて話し合えば流血は終わる・・・まあ理想ですが、もう無理です。「交渉を!」などと外部が言って事態を長引かせれば、結果的に犠牲者を増やすだけです。アナン氏みたいに。人道というのは結果責任なのですね。国際部隊が50万くらいの兵力で乗り込んでいって力づくで停戦させるなら話は別ですが。反体制側はウエルカムでしょうが、政権側は内政干渉とか言って拒絶します。それが何故か考えれば、両サイドの暴力がどうのとか言っているロシアの論理がいかにデタラメかがわかりますね)
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  1. 2012/10/10(水) 10:33:22|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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