ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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旧友からの手紙その2

 旧友のA山さんから、再び長文のメールをいただきました。
(右下「最新のコメント」欄にリンクがあります)
 シリア反政府武装闘争は是か非か?という問題で、私の考えを述べてみます。

 シリア国民を抑圧するアサド独裁体制を瓦解させるのは、シリア国民のために「善」であることは、世界中のほとんどの方が賛同されると思います(「アサドは結構いい人だ」とか「自由シリア軍はアメリカやカタールの傀儡だ」と信じたい少数派の方々は、申し訳ありませんが今回は放置されていただきます)。

 そこで問題となるのは、A山さんが指摘される「いつかはソフトランディングが期待できるので、今日の抑圧に甘んじても、犠牲は絶対に避けるべき。武装闘争はガマンすべき」なのかどうか?ということです。これが、イラクでもリビアでもシリアでも問題の核心ということになろうかと思います。
 私はこの問題に、2つの点を指摘したいと思います。

 まず、これは「考え方は人それぞれ」ということです。人命は何より尊いことはその通りで、それを最優先するという考えは正しいと思います。
 しかし、他方で、いま人命の被害を出しても長い目でみて人々を不幸にする抑圧を打倒すべきという考えも正しいと思います。これは、個人の考え方の問題で、どちらが正しいとは決められません。各人が自分の考えを自問すべきことで、他人に自分の考えを強制はできません。どちらが正しいという「解」は存在しないと思いますが、これは私たちのような部外の外国人だけでなく、実際の当事者たち、イラクやシリアの方々にとっても同様です。

 次に、これは「程度の問題」であろうかと思います。
 たとえばエジプトの政変でもたしか数千人程度の犠牲が出たと思いますが、ムバラク政権追放は大方のエジプト人に支持されています。日本では、戦前の軍国主義が放逐されたことは多くの国民が支持していますが(軍国主義のほうがよかった、とする少数派の方々も、まことに失礼ではありますが、ここでは放置させていただきます)、「日本が負けてよかった」と言えないのは、犠牲があまりにも多大だったからではないかと思います(日本が負けてよかった、と躊躇なく言い切れる少数派の方々も、めんどくさいんで放置させていただきます)。
 A山さんのご指摘は正しいと思いますが、結局、人の考え方はそれぞれで、しかも状況によって変化します。A山さんがシリアのケースでこう思い至ったのは、おそらく「シリアでは残念ながら結果が許容範囲を超えてしまった」という実感があるからではないかと愚考します。

 じつは、この問題は、昨年3月に抗議行動が開始され、南部を中心に虐殺が始まった時点で、私も自分なりに考えました。というのも、アサド政権の独裁の強固さを多少知る者としては、当初、さらなる虐殺が予想されるなかで、「これはまずいのではないか」との不安を強く感じたからです。
 この点は、反体制派のSNSでも最初から議論になっていました。しかも、反体制派の中でも内戦化(つまり軍による大量殺戮)を危惧する声は非常に強く、当初は非暴力デモ支持派が圧倒的優勢でした。虐殺が始まった後も、武装闘争はさらなる虐殺の口実になるとして、非暴力デモ支持派は多数いました。
 デモの仕掛け人のひとりであるシリア地域調整委員会のオマル・イドリビーさんを昨年7月にベイルートに訪ねたとき、この問題を彼とさんざん議論したこともあります。イドリビーさんは非暴力路線呼びかけの中心人物のひとりでもあったわけですが、その時点ではすでに状況がかなり悪化しており、革命がすでに不可逆段階に至ったなかで、私は非暴力路線で状況が好転するということにかなり懐疑的でした。
 イドリビーさんだけでなく、ブルハン・ガリユン氏も含め反体制派主流派も昨年秋頃までは、実際に反政府武装勢力が無力に近かったこともあって、非暴力闘争を提唱していました。
 その後、イドリビーさんも国民評議会も、武装闘争に転じています。彼らは彼らなりにたいへんな葛藤があったわけですが、「もはや仕方がない」という状況に至ったということです。
 これだけ犠牲者が出た今となっては、結果的には、シリアでは「デモしなければよかった」ということがいえるかもしれないですが、事態がここに至れば、もう止まりません。ということで、私は昨年秋の武装闘争本格化の時期から、「トータルの犠牲を減らすために、徹底した武装闘争が有効だろう」と分析するようになっています(国連アナン調停など、最初から無意味だと拙ブログでも主張してきました)。
 たとえば、今、反政府側が闘争を中止し、アサド政権に完全降伏すれば、毎日100人以上が殺害されているような今の状況は停止されます(毎日数百人逮捕され、うち数十人くらいは密殺される可能性がありますが、犠牲の総数は間違いなく減りますし、とくに女性や子供の犠牲状況は劇的に好転するでしょう)。
 ですが、反体制派が降伏することは、現実的に考えられません。内戦は今後も続きます。であれば、唯一の道は、反体制派が1日も早くアサド体制を打倒することであり、その後押しをするために国際社会はもっと反体制派を積極支援すべきであるというのが、私の現時点の分析です。
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  1. 2012/09/09(日) 11:24:40|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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