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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

「反米」について

 先日、中東畑でないあるジャーナリストの方と話したのですが、こんなことを言われました。
「リビアでは昨年、NATOの空爆のせいで余計ひどいことになりましたよね」
 余計ひどいこと???
 私の認識では、カダフィ軍が国民を殺しまくっていたのを、NATOがくい止めたというものです。私のリビア人の知人も全員その認識です。
 そのジャーナリストの方が言うには、「カダフィは独裁者ではあったが、国を平和に治めていた。NATOの介入のせいで、戦闘が拡大し、より多くの人が死ぬことになった。しかも、その後、武器が国中に出回り、収拾がつかなくなった」
 なので、「カダフィ独裁のほうがずっとマシだった」と言うのです。

 シリアの場合もそうなのですが、2つの大きな論点があります。
 ひとつは、「現地の社会文化なので、独裁もしかたがない」という独裁必要悪論。
 もうひとつは、「秩序を破壊すると、余計に多くの犠牲者が出る」という被害拡大論。

 いわゆる「反米」派の方に、こうした認識の方がしばしば見られます。
 たしかに後者は事実でもあり、非常に難しい問題です。奴隷状態のままでも、いま目の前の被害を少なくすることを最優先すべきかどうかということは、一概に答えが出せる問題ではありません。
 私は基本的には「いま苦しくても、自由を求めて戦う人がいるならば、それを助けるのが国際社会の責務だ」という考えですが、独裁政権は「国民という人質をとった凶悪犯」なので、そこは被害を最小限に留めるためのさまざまなテクが必要、という立場です。
 前者については、私自身は激しく不同意です。
「中東には中東の秩序、考えがある。イスラム社会にはイスラム社会の論理がある。アメリカ流の民主主義を押し付けてはいけない」
 日本の論壇でしばしば聞く論理です。「独裁の下で生きよ」ということでしょうか。少なくとも私の中東の知人たち(※アメリカ人ではありません)は、外国人のこうした考えをいちばん嫌っています。独裁政権内のエスタブリッシュメント層は、知人がいないのでわかりませんが。

 イラク戦争の頃、反米言説が凄い勢いでしたが、米軍攻撃がなければ、イラク人はずっとサダム・フセインの圧政下で生き続けることになっていたはずです。私のイラク人の知人も全員、米軍攻撃時はアメリカにサダム排除を強く期待していました。平たく言えば、米軍侵攻を支持していたわけです。
 その後の治安維持に失敗して、アラブ諸国では米軍批判が高まり、米軍撤退を要求する声が広がりましたが、当時から、私の知る限り、多くのイラク人はそれほど単純ではなかったです。米軍の強引なやり方に反発しつつも、テロが凄まじい時期に米軍が撤退すれば、治安がさらに悪化するのではないかと多くの人が危惧していたからです。
 アメリカの中東政策に対する批判はいいと思うのですが、「反米」ありきの論はどうも・・・。
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  1. 2012/09/04(火) 09:16:09|
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コメント

自由

 お久しぶりです。A山です。八月は二週間ほどトルコにいました。マイレバノンも閉店したことだし、本来はレバノンに行きたかったのですが、代わりにトルコ料理を堪能しました。昔よく行った恵比寿のボデギータや一度は行きたかった横浜ホンキートンクブルースで歌われた関内のオリヂナルジョーズも閉店し、鎌倉のキャラウェイは逆に今は行列で、江の電は人気ものになったし(私は小学校卒業まで鎌倉育ちなので込んでなかったころのキャラウェイのカレーも楽しんだし、潰れそうだった江の電は今では考えられませんが、昔は空いていたので海パン一丁の裸で乗ってたし、サーファー達はボードを持ったまま乗り込んでいました)、どんなものでも、例えば国の体制も、長くかかるとは思いますが、時間とともに移り変わるのではないでしょうか。
 ローマ帝国は共和制から独裁制になったし、独裁制から共和制になった国々、例えば韓国やフィリピン?なんてのもあるでしょう。トルコ人の誰に聞いてもアサドは人を殺しすぎたので政権の正統性はもはや失われ、時間はかかるが必ず潰れると言います。そうかもしれませんが、ただ人民の方も無理なデモ(大統領への恐怖心が漸減していったためどこまでが政府軍の暴力の限界点かの民衆側の危険察知能力が鈍ったための悲劇だと思いますが)などせずゆっくりと変革を待ちつつ無血革命をめざすべきだったのではと思います。今は昔の弓矢と違い兵器の性能が上がり一旦内戦になれば、多くの死者がでるからです。無血革命は理想かも知れませんが、シリアの論理は「日本は戦争に負けて本当によかった」とか、さらに言う人は「原爆は終戦を早めた必要悪だ」とかいう論理に似ていると思います。無事生き残った人々とその子孫には良かったという一面もあるでしょうが、戦争や原爆で亡くなった方々、怪我をした方々にとっては一度の人生を完全に狂わされたのではないでしょうか。「シリアには自由がないから国や自由のために戦う」ということですが、自由とは何かということも一歩立ち止まって考える必要があると思います。シリアには自由がなくて日本にはあるのか、ということを考えると、仮に自由をタブーや法規制が少ないことと考えると、シリアのことを良くは知りませんが恐らく日本より自由の範囲が狭いということになるのでしょう。どこまでが許容範囲かどうかの線引きも人によって異なります。全国民を巻き込むほど今早急な軍事革命が必要だったのか。シリアの体制が嫌いな人は亡命や国外脱出も難しかったのかというところが疑問点です。ネットで調べてもなかなか素人の限界でわかりません。トルコに行って聞いてみても所詮は人事のように皆話すだけです。もし自分は国のために戦に行けと言われたら行きません。国とは何か?日本人のことか?守るに値しない日本人も多いし、国の制度か?、国の制度を守るために戦え言われても今の制度がベストとも思っていないし、国土(自分の財産)の侵略や日本人の命をねらう?それなら戦うかもしれませんが、相手が強力なら家族と逃げて別の土地で生きます。ただ侵略者は、国土や命を取るというより今の日本国のシステムを日本国民ごと支配してそこから利益を得ることがを望みではないでしょうか。
 トルコではEUだけでなくロシアや米国のニュースもほとんどのホテルで見れました。私も少しだけラジオモスクワに籍を置いたことがあるだけにロシアのニュース番組は懐しかったのです。当然ロシアの立場は反政府側をテロリスト扱いです。反政府側もロシアの利権は守るから自由シリア軍に加担してくれるよう要請があったとのことで、必ずしもアサド擁護一辺倒から柔軟な姿勢に変わりつつあるとはいうものの、欧米がそれを担保してくれるかどうかロシアは当然不審がるし国際政治上の老練さもあるので、やはりどう考えても内戦はすぐには終わりません。アサド大統領もここまでくれば最後まで戦うしかないと当然思っているでしょうし、自由シリア軍も欧米の援助を受けて勝まで戦うでしょう。
 米ロがどっちの側に加担しても収束までにはまだまだ犠牲者はでるのでしょう。銃の代わりにサッカーや野球で勝負を決めれればいいのですが。結局人間の知能が進み、大量殺戮兵器の製造が可能となったことから大量殺戮戦争はなくならないということでしょうか。鉄人のリモコンは正太郎君がもっていれば正義の兵器だけど、敵に渡った時悪魔の殺戮兵器になる。悪い人間は必ず現れるとすると兵器がある限り戦争は繰り返す。悲惨な状況を報道し、なるべく暴力にならないように、戦争にならないようにするしかない。喧嘩になりそうな時、ちょっと頭を冷やせば、それが多大な損害になることが分かるはず。独裁者やその取り巻きは、不安で仕方がないので、街の不良に似ているところがあるのかな。不良グループで一番弱い奴は常にもっと弱い標的を外部にみつけてグループで攻撃する。さもないとそいつが逆に標的になるからだ。独裁国家も外に敵がいるうちは一致団結的全体主義、内向きには特定の相手や特定人種を攻撃する。人種や宗教の複雑なケースもあるが、それでも人類は無血革命、無血闘争の理想を最後まで目指すべきと思います。できない場合そこから(国)から逃げられれば逃げる。いじめも抵抗できない場合逃げるしかない。他国の介入が難しい主権国家ではその方針に会わない場合、戦うか亡命しかない。人間は生まれた国、地域、家庭で人生の大勢が決まってしまう。まさに運です。日本を含め国際社会はまず亡命者が出れば暖かく受け入れる体制をつくるべきだと思っています。どんな国も他国との国際関係もあり、時間があれば必ず変化すると思う。独裁者もいずれは死ぬ。急激な変革よりもゆっくりとした変革を我慢して待つのも一つの手ではないでしょうか。
 今日は東京出張で20年ぶりに大学のゼミの先輩とお昼にお会いする約束で大手町でランチをしました。学生時代ヤンチャで喧嘩ばかりしていた先輩が今は大手監査法人のパートナーになってました。話をしているうちに、勉強に熱心でなかったゼミの同級生の一人が母校で会計学の教授をやっていることも知りました。どんな国もいつかは変化すると思います。東西ドイツの統一を経験した世代なので、朝鮮半島の統一も不可能ではないと思っています。これもできれば無血でお願いしたいです。どんな繁盛店も閉店するし、不人気店も復活することもある。「いれーぬ」もまだやってますか?閉店しないうちにそのうち一緒に行きましょう、H田君も呼んで。
  1. URL |
  2. 2012/09/04(火) 20:31:02 |
  3. A山 #-
  4. [ 編集]

頑張ってください

黒井さん

勇気ある活動に敬服します。
日本の左翼活動家や,アメリカユダヤ陰謀論者は,「反米=正義」,「アメリカ陰謀論」を
主張する人々が多いです。

マスコミもその影響を受けて,「バッシャールも悪辣非道だが,自由シリア軍も同じだ。似たり寄ったりだ。」という論調が見られます。
特に重信メイ氏などは,盛んにそういった主張を繰り返しており,「自由シリア軍=イスラム過激派テロリスト」「シリアのミドルクラス,アッパーミドルクラスは,皆自由シリア軍やイスラム過激派をおそれバッシャールを支持している。自由シリア軍を支持している人々は,アンダークラスや宗教過激派の人たち,教育を受けていない層」と主張しています。

重信メイ氏とも面識のある常岡浩助氏は,こうした見方とは異なり,「自由シリア軍=西側,サウジ傀儡説」を退け,民衆の抵抗であると主張しています。

また,欧米の左翼でも第四インターナショナルは,早くからバッシャール政権の悪辣さ,非道さを
非難し,立ち上がった民衆に対して支持の表明しています。

シリア内戦が長引いているのは,シリア民衆の抵抗の力,バッシャール政権の支持力の低下だと思います。このブログでも名前がでてきている安田純平さんや,山本美香さんは,そうした民衆の声を届けてくれました。

バッシャール政権の反体制派に対する攻撃は,反体制派だけではなく,反体制派の立てこもる潜んでいる地区都市そのものを攻撃,破壊しており,一般市民をも巻き込んだ戦争犯罪そのものです。

このことから考えると,バッシャール政権の非人道性,戦争犯罪は明らかであり,本来ならば国連が出て行って,虐殺をやめるべきなのです。
  1. URL |
  2. 2012/09/08(土) 11:41:41 |
  3. 名無し #-
  4. [ 編集]

おいおい、重信メイって日本赤軍のテロリスト重信房子の娘じゃない。そんなのを出演させるメディアを支配している日本左翼は恐ろしい。重信メイが行く所行く所に公安警察の要員が張り付いているのは常識。ただ、自由民主主義と祖国日本が嫌いな日本左翼のオッサンのとって重信房子はかつてセ×クスシンボルでもあり、オ×ペットだったので、彼らがメディアの重役クラスとなった今日はテロリストの娘は引っ張り蛸。重信メイは「テロリストの娘にも拘らずに」メディアに出演しているのでは無く、「テロリストの娘だから」出演出来るのだ。こんな異常な国は日本だけ。支那ならとっくに親娘共銃殺。しかも、重信メイは刑務所に居る母親は無罪だと主張している人間の心を持たない鬼畜である。
  1. URL |
  2. 2012/09/09(日) 01:51:58 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

すみません。名無しでコメントした者です。

私は,重信メイ氏がTV出演していることについては,かまわないと思っています。
親は親,子は子です。

ただ,道楽さんがおっしゃられるように,重信という名前にシンパシーを持ち,かつ
無国籍だった過去,日本とアラブのハーフという血筋が,インパクトとなって,メイ氏の実力以上に
メディアの露出が多くなっているという感じがします。

それだけで,今後,ジャーナリストと名乗るのは難しいと思います。重信メイさんは,政府高官や知識人層といった階層の人々だけでなく,一般市民を取材する,街に出て人々の声を聞くことから始めたらいいと思います。
  1. URL |
  2. 2012/09/09(日) 23:57:37 |
  3. 名無し #-
  4. [ 編集]

問題はアメリカ流の民主主義が何をもたらすのかでしょう。

実際は、金の力で情報を意のままにコントロールして世論を作り上げ民衆を支配する。それが西側民主主義の実態。

その見事なサンプルが黒井様ですが。
  1. URL |
  2. 2012/09/12(水) 00:15:40 |
  3. Executor #-
  4. [ 編集]

>勇気ある活動に敬服します。

勇気は必要ないでしょう。
もともと体制にとって好ましい「活動」ですから。
  1. URL |
  2. 2012/09/12(水) 00:45:20 |
  3. Executor #-
  4. [ 編集]

レッテル張り

ブログを拝見していて思ったのは、レッテル張りという意味では、どちらも変わりないということです。どちらの立場も「自分の方が状況を正しく把握して分析できている。」という認識に基づいたものである点では同じです。

「私は基本的には「いま苦しくても、自由を求めて戦う人がいるならば、それを助けるのが国際社会の責務だ」という考え」

それは結構なのですが、米仏他が本当はあなたと同じ考えで中東・北アフリカに軍事介入してきたのではないという点が問題なのではないでしょうか?欧米諸国は自らの国益を守り、利権を増大し、各地域における目的さえ達成すれば、人権など本当は関心すらないというのは明確では?この視点を、単に「反米」と一言で片付けるのは、あまりに乱暴な簡略化と思われます。人道主義の立場から意見を表明しながら、結局は人権を度外視しているのですから。

あなたの周りにいる方々は一辺倒な考えをお持ちの方が多いようですが、現地の意見は色々あります。シリアもリビアも国際社会の援助が必要とする声もありますし、その援助によって結果的に欧米の支配が自国に及ぶことを懸念する声もあります。シリアの状況を「体制はは黒いが反体制派はもっと黒い。」と発言したのは、紛れもなくシリア人とイラク人の友人です。両方あって然るべきでしょう。CIAに指揮された「アラブの春」が良いのは、名前だけであり、無理な転換によって大きな犠牲を払っているのは、結局各国の国民です。今後何年、イラクもシリアもリビアも暗闇を歩くことになるでしょうか。利益を得たのは本当に国民でしょうか、彼らの人権は守られているのでしょうか。応えは否です。

レッテル張りを私もするとするならば、男性は色々と屁理屈をつけますが、結局戦争ゲームが好きなのかな、と女性として思わずにはいられません。
  1. URL |
  2. 2014/01/17(金) 09:25:38 |
  3. MT #-
  4. [ 編集]

大晦日も元旦も休み無しに2チャンネル。時間感覚麻痺して挨拶も無しに年がら年中同じ事を繰り返す。とうとう「女性」を強調したりして性転換でもしたんかボケ。

インターネットスパイは年中無休の鬼畜。近代批判や民主主義批判は結構だが、そんなに主張したい事が有るなら実名で本の一冊でも書いて批判を受けろ。それとも独裁国の代理店で書き込み一日いくらの収入か?

それに私の話した限りの多くのパレスチナ人やパキスタン人、インド人ムスリムは皆アサド追放論者だったけどな。実際彼らのアサドに対する憎しみは大変なもんだよ。


因みに「CIAに指揮されたアラブの春」とかいう馬鹿は何処でもいるがオバマによって作られたムルシー政権を隙を見て潰したエジプト軍部を全面支援したのはイスラエル。

デモ隊弾圧の武器はイスラエル製。その直後エジプトがシリア反体制派への援助をストップした事実からみてイスラエルがシリア反体制派を支持して無いのが分かる。

化学兵器使用後の制裁問題ではシリア権益を守りたいプーチンがイスラエルと先に話を付けて後でオバマに持って行った。だからオバマは断れなかったのが真相だ。
  1. URL |
  2. 2014/01/17(金) 16:30:36 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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