ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

日本人ジャーナリストのシリア報告その3

 昨日、TBS「報道特集」で安田純平さんのシリア・レポートが放送されました。知り合いだから身贔屓で言うわけではなく、非常に秀逸な内容で、海外メディアで放送されても遜色ない出来映えです。アラビア語と英語の字幕を付けて、ぜひともユーチューブに流して欲しいですね。非アラブ・非欧米人の視点ということの価値もありますし、シリアの人たちにも多少は励みになるかもしれません。日本人記者が今後、現地を取材しやすくなるということもあるでしょう。
 さっそくインターネットに動画がアップされていました。ぜひ御覧になってください。
▽内戦のシリア潜入ルポ_報道特集20120811
 プロデュースされた高世仁さんが、ブログでこの安田レポートについて書かれています。
▽安田純平が見たシリア内戦 高世仁の「諸悪莫作」日記
 ちょっと面白いなと思ったのは、高世さんの次の一文です。
「私自身、シリア内戦をどう捉えてよいか、迷っていた。こういう仕事をしていると、アサド政権は独裁だからダメ、反政府側は無条件に『よい人たち』という作られたイメージに乗っかるわけにはいかない。
 詳しくは次回書くが、国際的には、実に多様な情報が流され、その中には意図的な情報操作も入っているので、シリア内戦の『実態』は、私にとって謎だったのである」
 これはなにも、親米VS反米とかいうことではなくて、報道に携わる者がステロタイプを警戒するのは当然なことといえます。だから、いろいろ手を尽くして、実態を知ろうと努力します。
 私自身、最初の紛争取材だった中米内戦で、「右」も「左」も言論界には盲目的シンパがいましたが、実際はどちらもダメダメだったことを知りました。ボスニア内戦では国際メディアのセルビア悪玉論に反対の立場でしたし、報道業界のスタンダードだったパレスチナ善玉論、南アフリカANC善玉論、イラク反米論などにも自分なりの取材・分析からむしろ反対の立場に立っています。基本的には天邪鬼な体質なのかもしれません。
 なので、シリアの実情をよく知らない人が上記のような意識を持つことはむしろ健全だと思うのですが、シリアに関しては、私自身は現地取材こそしていませんが、シリア国内に個人的な情報ルートがそこそこあって、それなりに情報収集と分析を進めた結果、基本的には「アサド政権は独裁だからダメ、反政府側は無条件によい人たち(もちろん例外はありますが)」と確信するに至っています。
 まあ、自分としては、もう30年近くもそういう世界を見てきて、ステロタイプへの懸念の問題などはさんざんくぐり抜けてきたうえでの分析・判断であって、自信を持って拙ブログにも書いているわけですが、当然ながら「オレ言説」では説得力がたいしてありません。現地の人々が命がけで撮影した反政府デモや弾圧シーンの膨大な映像を提示しても、「誇張かもしれない」「反政府側も同じようにひどいことをきっとしている」ということで、なかなか信じようとしない人が実際多くいます。これは要するに、情報収集の総量が少ないことからくる誤解だと思うのですが、私自身の力量不足で、なかなかそこを説得することは難しいわけです。
 その点、しっかり取材された現地報告の説得力は圧倒的です。安田さんご自身は単純な善悪論とは距離をとっているようで、番組中もご自身の主張を注意深く避けていましたが、レポート自体は明らかに「反アサド情報は作られたイメージ」論の幻想を打ち砕くパワーを持っていました。余計な先入観をおそらく意識的に排除して、現地の人々の声を掬い上げているところが素晴らしいと思います。もちろん安田さんと私の意識は同じではないでしょうが、とにかく好レポートですので、上記リンクをぜひ。

(追記)
 安田さんのレポート、私の周囲では大きな反響です。
 シリアの現状を初めて知って衝撃を受けたという人が多いことに、逆に少し驚いています。マスコミ関係者ですら、それに近い意識の人が結構いらっしゃいます。もう1年半も前から、現地の若者たちが決死の思いで弾圧現場の映像を発信してきたのに・・・やはり日本人からは遠い国なのでしょう。
スポンサーサイト
  1. 2012/08/12(日) 10:17:54|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<シリアを北朝鮮と仮定すれば | ホーム | シリア政府軍による市街地砲撃の瞬間>>

コメント

私も黒井さんの記事にあったので、拝見しました。
命がけの貴重なレポートですね。ご無事で何よりだと思います。
  1. URL |
  2. 2012/08/12(日) 14:08:48 |
  3. 田中 #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/862-018a966b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。