ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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アメリカはどう出るか?

 シリア問題に対するアメリカの介入の是非について、現在発売中の『ニューズウイーク日本版』に「アメリカのシリア介入は誤りだ」と題する興味深いレポートが掲載されています。筆者は中東外交に詳しい米外交評議会名誉理事長のレスリー・ゲルブ氏です。
 ゲルブ氏の考えは、アメリカはひとり前面に出て軍事介入するのではなく、周辺国を主役にして、アメリカ自身は彼らを背後からリードすべきだというものです。これは直接主役になった場合、その後のリスクが高すぎるからで、アメリカの国益というものを考えた場合、たいへん説得力のある言説です。
 ゲルブ氏は、ネオコンやリベラル派の人道主義を、責任を押し付けられるリスクが高いことを理由に批判していますが、シリア国民の側に立てば、アメリカのネオコンやリベラル派の人道主義に頼らざるを得ないのも現実なので、アメリカ世論でなんとかネオコンやリベラル派が優勢になるように訴えかける必要があるということになります。
 以前書いたように、アメリカが腰を上げないと、ただ人々が殺害され続けるという現実があります。アメリカ世論がどう動くかが、たいへん注目されます。

 ところで、上記記事はアメリカのメディアにしては珍しくシリアへの不介入を前面に打ち出した記事だな、と思って少し奇異に感じたのですが、原題は「Kofi Annan’s Exit: Why Obama Should Lead From Behind In Syria」でした。直訳すると「コフィン・アナンの離脱 ~オバマはシリア問題を背後からリードすべきだ」です。日本版の「アメリカのシリア介入は誤りだ」ではだいぶ印象が違いますね。
 ちなみに、記事中のコピー(強調部分)も、日本版では「反政府側がアラウィ派への報復に出ることはほぼ確実であり、殺戮はさらに激化しかねない」ですが、元記事では「Having Annan make his entreaties to the warring parties and to the major powers, like Russia, was never going to lead anywhere. It was just a way for Syria’s neighbors and for Washington to buy time」(互いに対立する国内の各勢力やロシアのような大国の説得をアナンに任せても、効果は期待できなかった。周辺国とアメリカにとっては、時間稼でしかなかった)。日本版編集部はよほど反政府側に対する悪い印象を強調したいようです。
 しかも、日本側のコピーの元文章自体が「In this civil war, the killings could become even more outrageous when and as the rebels start taking their almost certain retribution against the Alawites and their Christian supporters, and when they start killing each other for power」(この内戦では、反政府軍がアラウィ派やそのキリスト教徒の支援者にほとんど確実と思われる報復を始めたり、彼ら自身が互いに権力争いで殺し合いを始めたら、殺戮はさらに拡大する可能性がある)ですから、意図的に「反政府派は少数宗派への大量殺戮を行う」というイメージを「盛って」いますね。
 ご丁寧に、日本版記事の小見出しも「過激派への援助を止めろ」「介入しても内戦は続く」。前者はあたかも「米政府が反体制派を支援すると、イスラム過激派への支援になる」ような印象ですが、本文で語られているのは、「サウジやカタールは、イスラム過激派ではなく、世俗派の反体制派を支援せよ」ということ。後者もまるで「アメリカは手を引け」という感じですが、上記したように、筆者は「手を引け」などとは一切書いていません。
 日本版編集部はアサド政権寄りなのかもしれませんが、せっかく本家の元記事が非常に示唆に富む好記事なのに、こうした印象操作はちょっと残念です。
 まあ私自身、自分の気づかぬうちに間違った記事を書いたこともあるでしょうし、あまり他人様の仕事に口を出す気はないのですが、あちらでは今現在、現実に命がけで戦っている人々がいて、彼らをどうやって救うことができるのか世界中が智恵を絞っているときなので、ちょっと見過ごせずにツッコミを入れさせていただきました。
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  1. 2012/08/09(木) 05:18:36|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

アメリカが民主革命を口実にシリアに戦争を仕掛けて、利権を獲得しようとしているだけでしょう。それ自体、悪事なんだから表向き堂々とやらないほうが得策だって誰でも思うわけですよ。
それにしても、なんでこのブログはアメリカの戦争輸出に好意的なんですかね。
  1. URL |
  2. 2012/08/09(木) 11:34:49 |
  3. 匿名 #93vhRd.Y
  4. [ 編集]

まあ、石油が無いシリアに戦争しかけても米国にとっては一文にもならないので手を出したく無いのでしょう。加えて、ここで米国が中東に張り付いてしまうと、予想される尖閣諸島での緊急事態に米国が対応出来なくなるので日本としても好ましくない。よって、アラブ連盟軍やトルコと英仏伊軍が共同で処理するのが無難でしょうね。
  1. URL |
  2. 2012/08/09(木) 21:57:02 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

ん、尖閣諸島(せんかくしょとう)と書いたら***と出ました。さて、シナイ半島でのテロ事件で軍に追求される筈のムルシー大統領は逆にムハバラットの長官を更迭したようですね。目が離せません。
  1. URL |
  2. 2012/08/09(木) 22:12:47 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

 米軍がわざわざ出張らなくても、携帯SAMをゲリラに供与すれば済む簡単&安価な話なのですが、それに踏み切れないのは、やはりサラフィストの存在が気になるからのようです
  1. URL |
  2. 2012/08/10(金) 00:42:18 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

1.昨年八月九日付けの「匿名」のコメント

2.⇒1に関連する同日付けの私のコメント

3.⇒2に対する再反論無し。普通はここで終わり。

ところが「匿名」君はブログを書いていた。名称内容共に非常にキショク悪いのでここで紹介出来ない(笑)。

4.3は無かった代わりに変態ブログの九月三十日付けエントリー(アーカイブ787)に独り言を書いて溜飲を下げた(笑)。


「(引用開始)このように、シリアの争いは当初より資源戦争の側面も見せていた。どこぞの「道楽オバQ」が資源とか無関係だもんねと言っていたが、シリア問題が起きる前から資源戦争は起きている。今回のシリアでの戦闘もその側面があって当たり前だと考えるべきである(笑)」。


どこぞの「道楽オバQ」って私か(笑)。御丁寧に記事に地図まで付けて(笑)。何で聞こえ無い所で叫ぶんだ(笑)。

そうか、負けず嫌い。プライド高い(笑)。でも気が小さい(笑)。芸の細かさは日本一(大爆笑)。「偽装ナントカ」と同一人物とか言わせるなよもう。

でもさ、「ムハバラット23」君。冷戦期の終わりにシリアから石油が出た事くらいは私も知っているよ。それでシリアはソ連陣営からやや独自路線を歩み始めた。

でも、クウェートとかサウジとかアラブ首長国連邦の比較にはなら無い。でも、もしも「なる」と言うなら阿呆な記事書いて無いでデーターを出してよ。

でも、屈折した全く人生だ。
  1. URL |
  2. 2013/09/21(土) 17:01:06 |
  3. 道楽(どら)Q #-
  4. [ 編集]

「でも、屈折した全く人生だ」は「(でも、)全く屈折した人生だ」の間違いです。
  1. URL |
  2. 2013/09/21(土) 17:24:25 |
  3. 道楽(どら)Q #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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