ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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金正恩はバシャール・アサドになるか

 まだ真相はよくわからないのですが、軍部強硬派の李英鎬・総参謀長の解任は、父親世代までのガチガチの強硬派を排除して、改革派路線を打ち出す金正恩政権の意思の表れとの分析がちらほら散見されます。
 金正恩の世代は、古いガチガチ強硬派のアナクロぶりはわかっていると思いますし、そのバックにいる張成沢も、自らの最大のライバルでもある旧体制系のアナクロなガチガチ強硬派は、早いうちに排除したいところでしょう。張成沢は中国指導部と懇意とみられていますが、そのラインの意思でもあるということかもしれません。
 そうであれば、張成沢の名代である崔竜海次帥(軍総政治局長・党政治局常務委員・党中央軍事副委員長)に権限を集中させる動きが続く可能性が高いでしょう。
 次の総参謀長に玄永哲次帥がそのまま就任するかどうかは現時点では不明ですが、仮にそういうことになれば、玄永哲は事実上、崔竜海=張成沢ラインの傀儡みたいなポジションになるのではないかという気がします。玄永哲は中国との国境を警備する野戦軍「第8軍団」の司令官ですが、どういう人物なのか、あまり知られていません。それほど注目されていかなかった人物ですが、張成沢と手を握ったということかもしれません(あくまで推定です)。
 注目すべきは、金正覚・人民武力部長(党政治局員兼任・次帥)、金元弘・国家安全保衛部長(党政治局員・国防委員・大将)、金英徹・軍偵察総局長(党中央軍事委員兼任・大将)らの今後の動向です。いずれも先代・金正日に取り立てられ、権力の階段を駆け上がった軍人です。
 金正恩体制下では、金正覚と金元弘は不穏分子粛清で主要な役割を果たしていますが、先代の取立てなので、あまり力をつけすぎるようだと、張成沢の警戒を呼ぶ可能性があります。また、金英徹は最強硬派として知られる人物で、こちらも金正恩はともかく、張成沢と良好な関係かどうかはわかりません。とくに工作機関は党行政部長の張成沢の指導下にあるので、こちらも金英徹の権限が強まるようだと、張成沢が警戒して排除しようとする可能性があります。
 このあたりは最高幹部間の人間関係によるところが大なので、経歴や背景だけで予測はつきませんが、李英鎬解任が張成沢の意思だとすれば、彼は本気で軍内のライバル一掃を仕掛けるのではないかなと思います。

 ところで、北朝鮮指導部が以上のような権力闘争になっていると仮定すると、シリアの12年前の状況と非常に相似しています。シリアのバシャール・アサド大統領は、2000年に父である先代独裁者が病死した後、34歳で世襲していますが、その後、政治・経済・社会の規制緩和を行い、表面上は「改革派」とのフレコミで新政権を運営しました。先代時代からの古参の軍幹部も、次々と失脚させています。
 この世代交代を推し進めたのが、バシャールの後見人だったアシフ・シャウカトを中心とするバシャール派のインナーサークルでした。シャウカトはバシャールの姉の夫で、先代によって軍事情報局長に抜擢され、秘密警察を取り仕切る絶大な権力を与えられていました。婚姻で一族の主要メンバーとなり、若い新独裁者を擁してライバルを排除していくところは、北朝鮮の張成沢に立場・手法がよく似ています。
 もっとも、シリアでバシャールとシャウカトが進めた改革は政治的な「民主化」をともなわないものだったため、2011年に民衆蜂起が起こると、徹底弾圧で国民を殺しまくるようになります。独裁と民主化は両立しないのですね。
 シリアの場合、バシャールが改革派のふりを始めてから殺人独裁者の正体を晒すまで11年かかっていますが、これからの時代はさらに事態の推移が加速されることが予想されます。もしも金正恩が改革派を気取るようになったとしても、数年後には今のバシャールのように北朝鮮国民を殺しまくることにならないといいのですが・・・。
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  1. 2012/07/17(火) 18:59:17|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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