ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ロシア孤立化とシリア大使の叛乱

 日本ではほとんど注目されませんが、シリア情勢は連日のように世界のトップニュースになっています。昨日は、国連安保理でイギリスが新たな制裁決議案を提案。同時にアメリカは、制裁決議が採択されなければ、現在無意味に展開している停戦監視団の引き揚げを主張しました。
 これまでと同じであれば、ロシアは拒否するでしょう。そして、ロシア主導で「非軍事の政治交渉調停任務に移行し、規模縮小で継続駐留」という、どうみてもアサド政権有利になっていた国連停戦監視団は、引き揚げの方向に入ります。
 となれば、国連安保理の努力は失敗ということが明らかになり、その責任はロシアということになります。となれば、次は国際社会もロシア抜き・安保理抜きの解決策を探るというフェーズに(ようやく)入ります。やるだけやったのだから、しかたない・・・・ということですが、そんな政治的アリバイ作りのような「手続き」のためにアラブ連盟の調停から半年以上、1万人以上の命が無駄に殺されたのかと思うと非常に残念です。
 しかも、今後もまだまだ虐殺は行われます。「シリアの友人グループ」などを中心に外交は進むでしょうが、ロシアがいますので、簡単にトルコやNATOが軍事介入とはいきません。ただ、以前も書いたように、自由シリア軍への武器供与だけでも、事態は大きく動きます。
 国際刑事裁判所にアサドを告発という努力も行われるかもしれませんが、そんな悠長なことをやっている間に、まだ何千人も殺害されるでしょう。あと何年、あと何万人が殺されれば、世界は本気で動くのでしょうか。

 グッドニュースは、ナワフ・ファレス駐イラク大使が政権を離脱し、反政府側に合流することを宣言したこと。これは心理戦の最大のチャンスです。ファレス大使と先日離脱したマナフ・タラス准将を前面に押し立て、叛乱の呼びかけを大々的に行うことが肝要です。
 軍閥や地域部族が内戦の主役だったリビアやイエメンと違い、シリア革命のカギはどちらかというとエジプトやチュニジアに似ていて、要は、どれだけの政権幹部が「勇気をもって政権から離脱するか」です。
 シリア情勢の本質を「アラウィ派VSスンニ派」にみる理解は間違いです。あの国でいま行われている戦いの本質は、「恐怖体制」の壁をめぐる攻防戦です。義がどちらにあるかは明白なので、あとはどれだけ「恐怖」を希釈させ、ムードを「アサドなんて怖くない」という方向に持っていけるかという戦いになります。まさに心理戦ですね。
 さらなる叛乱を誘引するのにもっとも有効なのは、新たな叛乱者をどんどん優遇することです。クルド勢力やモスレム同砲団、海外組、地元若者活動家、自由シリア軍指導部など、これまで血を流して踏みとどまってきた彼らが、どこまでそれを理解できるかが問われるでしょう。彼らは基本的には「オレが、オレが」の人たちですが、米英仏+カタール、サウジあたりがなんとか調停できるといいのですが。
(たとえば、海外組や地元若者活動家が多い反体制派フェイスブックの世界では、タラス准将はあまり人気がありません。アサド政権中枢のインナーサークルという超特権階級内でぬくぬくとやってきた人物だからです。ですが、さらなる離脱を誘引するためには、彼のような人物を押し立てることも重要です。そこができるかどうかは、今後の流れに非常に重要になると思います)
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  1. 2012/07/12(木) 13:34:59|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
<<3大シリア反体制組織 | ホーム | 北朝鮮軍偵察総局の対日スパイ?>>

コメント

あのう、シリアの旧宗主国フランスのインテリジェンスの動きはどうなっているのでしょう?リビアではフランスが前面に出ていたようでしたが気になります。ワールドインテリジェンス誌では(名前は失念しましたが)フランス情報機関の歴史を専門とする方がいたようでしたが同氏はアラブの春でそういう観点から情報発信されているのでしょうか?

あと、同氏の他に日本でフランスやドイツ、オランダなどの情報機関の中東での動きをウォッチされている研究者がいたら御紹介ください。
  1. URL |
  2. 2012/07/12(木) 22:19:15 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

 弊誌で連載されていたのは柏原竜一さんという京大情報史研究会OBの方ですが、現在どのような活動をされているかは存じ上げません。欧州の情報機関の最新動向を研究されている方というのも知りません。弊誌ではオランダ留学経験のある安全保障アナリストの菅原出さんにイラク戦争前後のオランダ情報機関の動きを、アベリストウィス大学の橋本力さん、イギリス人研究者のジェームス・シンプソンさん、ジャーナリストの村上和巳さんにも欧州各国の情報機関について書いていただいたことがありますが、彼らもそちらが専門ということではないと思います。
  1. URL |
  2. 2012/07/13(金) 10:15:27 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

御返答有難う御座います。

>弊誌ではオランダ留学経験のある安全保障アナリストの菅原出さんにイラク戦争前後のオランダ情報機関の動きを書いていただいた

菅原出氏はチャンネル桜に出演されていますね。橋本力氏は賢い人で確か英国委任統治時代パレスチナの論文を書かれていた。


ところでジャーナリストの青山繁張氏によるとイランの諜報機関は既に日本に工作員を送り込み、いざという時に破壊活動が出来る体制にあるという事。

それで、青山氏の情報源の「日本のインテリジェンス(恐らくは内調や外事情報部からの情報)」ですが、これは青山氏がインテリジェンス・コミュニティーに喰いこんでいるのか、それともこれらは一種のリークで逆に彼らに(広報とかいう意味合いで)使われているのでしょうか?
  1. URL |
  2. 2012/07/13(金) 20:39:46 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

あ、両方ですね。馬鹿な事を聞いてしまいました。
  1. URL |
  2. 2012/07/13(金) 20:42:18 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

私の理解では、イランなどの強権的な体制の国の場合、駐日情報機関員の仕事は①外交利権への介入 ②同僚外交官の監視 ③民間在日同胞の監視、が最大の任務と思います。イランの場合は他に、軍事転用技術の入手も過去にありました。あと、なんらかの外貨獲得工作もたぶんやっています。破壊工作は革命防衛隊クドス部隊の担当ですが、日本国内で破壊工作準備というのは考えにくいと思います。防諜機関からそんな情報が流れたのかもしれませんが、日本の防諜機関も実際はよくわかってないと思います。以上も私の推測にすぎませんが。
  1. URL |
  2. 2012/07/14(土) 23:42:17 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

噂と言えば影で京大情報史研究会OB柏原竜一氏がチャンネル桜のインテリジェンス討論に出演していますね。
http://www.youtube.com/user/SakuraSoTV?gl=JP&hl=ja

あと、青山繁張は青山繁晴氏の間違い。青山氏にしても佐藤優にしても日本のインテリジェンス能力を比較的高く評価していますが黒井先生の評価は厳しいな(笑)。

確か黒井先生の御著書に警察庁は五十嵐筑波大教授殺害事件の犯人はイラン諜報機関のエージェントのパキスタン人と見做しているとありましたが、イラン人やパキスタン人労働者に偽装したり、彼らをスカウトする事は可能なのじゃないでしょうか?いや、あくまで私見ですが。
  1. URL |
  2. 2012/07/15(日) 22:44:39 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

過去のイラン(もしくはその委託を受けたヒズボラ)が外国でテロをする場合、イラン大使館員が武器の準備や情報支援などでバックアップしている例がしばしばあります。日本でもやろうと思えば可能と思いますが、他の国より日本でテロをやるメリットとリスクのバランスを考えると、現在はあちらにあまり動機がないと思います。
 例の流出した外事3課の文書をみると、イラン大使館も監視対象ですが、それほど深く調べているということでもなさそうです。敵を探るにはやはり盗聴をしたり、あちらの本国で諜報活動をしたりしないとなかなか難しいと思います。
 私はつい海外主要国の情報機関と比べてしまうので厳しい評価になりがちですが、日本のインテリジェンス・オフィサーが無能だというのではなく、活動に大きな制約があるということだと思っています。あと、とくに警察の場合、継続して専門分野に専念できないことも不利な点だと思います。
  1. URL |
  2. 2012/07/16(月) 05:44:24 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

詳しい御説明を有難う御座います。いやぁ、当代一流の専門家に即答して貰うとはこのブログの醍醐味だなぁ(笑)。

青山氏の設定はあくまでも米国ないしイスラエルによるイラン核施設攻撃という非情事の設定で攻撃対象は米軍基地及び西側外交施設や文化施設や欧米航空機などという事になるのでしょうが、一旦そういう事が起きれば次にはどこで起こってもおかしくなくなるというのが厄介ですね。

>警察の場合、継続して専門分野に専念できないことも不利な点だと思います。

という点ですが、これは別の観点から見ると

1.専門諜報機関で働くより公安警察は身分偽装が容易。
2.警察官として生活身分保障があり仕事に専念出来る。
3.諜報に向いていない要員を他の交通や刑事など他の部門に回しても警察内部の問題で済む。
4.全国の交番レベルからの情報が入ってくる。
5.末端の警察官は人材の宝庫である。

という風に考える事が出来ます。これらは戦後に左翼の跳梁跋扈する状況の中での苦肉の策だったのでしょうが、それにしても外国情報を扱う専門機関が今まで創られなかったのは討論中菅沼氏などがいくら言い訳しても国家的怠慢と言うしか無いと思います。
  1. URL |
  2. 2012/07/17(火) 02:01:04 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

 ご存知かもしれませんが、権力の乱用を防ぐため、警察には同じ部署に5年以上在籍できないという内規があり、本格的に専門家を育てる仕組みになっていません。キャリアの場合はさらに細かく数年毎に別種のポストを駆け上がるので、さらに専門性から離れ、組織管理者になっていきます。
  1. URL |
  2. 2012/07/18(水) 10:51:10 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

勉強になりました。
  1. URL |
  2. 2012/07/18(水) 22:54:45 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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