ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シリア問題での立ち位置について

 日本では学者、ジャーナリスト、会社員、外交官、協力隊や語学留学生OBも含めて、シリア情勢をフォローしている人はそれほど多くいるわけではありませんが、そのなかで、おそらく私がもっとも反アサド政権の立場にいると思います。
 いくつか理由がありますが、以前も書いたように、最大の理由は「情報源」であると思います。私のような立場に対しては、しばしば「欧米寄り」という批判をいただくのですが、私の最大の情報源は欧米メディアでもアルジャジーラでもなく、シリア国内に今も住んでいる地元の知人たちになります。
 また、海外を拠点とする「シリア国民評議会」、国内のデモを主導している「地域調整委員会」の活動家にも知り合いがいて、情報を随時いただいています。また、「シリア革命2011」を中心とする反体制派フェイスブックも情報源です。なので、こうした人々の情報バイアスがかかっています。
 ただ、それでもこうした情報に頼るのは理由があって、他の情報源より情報バイアスが比較的少ないのと、誇張情報の見分けが比較的容易に思えるからです。
 それに比べると、「シリア国営通信」はじめ、地元メディアはあまり頼りになりません。体制プロパガンダ機関なので、彼らからすると当然です。また、政権の監視下にある地元の人の声も参考になりません。本音で話していないからです。
 この本音と建前というのは、シリアだけでなく、中東全域で非常に難しい問題なのですが、これに関しては、私自身は旧共産圏や中東でのそれなりの生活経験や取材経験から、自分なりに観察眼というか洞察力を培ってきたと考えています。これは先入観に繋がる諸刃の剣で、常に自分で疑ってかかる必要はあるのですが、それでもシリア問題に関しては、それなりに分析した結果、アサド打倒しかないなとの結論に達しています。
(たとえば、北朝鮮の人がみんな「金正恩大将万歳」と叫んでいるから、「彼らは幸せなんだ」と結論づけられないようなものです)

 アルジャジーラやBBCを含む国際メディアはもちろん参考にします。もちろんすべて信用しているわけではありませんが、国際メディアは地元メディアと違い、多数の読者のチェックにさらされるので、圧倒的に誤情報は少なくなります。また、国際メディアの記者のほうが、取材もしっかりしていることが多く、その論評も参考になります。
 もっとも、それもピンキリで、たとえば少し前に某国際ニュース誌で「アサド悪玉説は作られた虚構だ」というような内容の記事があって脱力したのですが、ネットに多くみられる陰謀論の典型的なパターンでした。インテリジェンス的にいうと、多数のノイズ情報から都合のいいノイズだけをチェリーピッキングしてロジックを展開するというパターンですね。
 たとえば、虐殺事件が発生した場合、その真相はすぐにはわかりません。なので、学術研究であれば、論理の緻密さが最重要ですから、「真相はわからない」としか使えません。しかし、インテリジェンスではそれでは落第で、「犯人は確率的にシャビーハの可能性が高い」とまで分析しないと、実際の行動の判断材料にはなりません。
 ジャーナリズムもインテリジェンスに似た作用があり、たとえばユーチューブの弾圧映像については、経験豊富な記者の分析で「本物の可能性が高い」けれども「わが社ではその確認はとれていません」と言い添えて報じます。陰謀論のパターンはたいてい「信憑性が確認できない」ことに飛びつき、「捏造だ」⇒「陰謀だ」と話を飛躍させて、「そんな事実は起きていない」とのオチに結び付けます。私からみると、「アサド悪玉説は作られた虚構だ」というのは、完全にそのパターンにみえます。
 現実はたいてい「信憑性は確認できないが、確率的に信憑性のより高い情報」を総合的に分析して判断すべきものです。
 上記の国際ニュース誌の記事では、90年代のボスニア紛争(コソボ紛争だったかも?)を例に出し、一方的な偏向報道の罪を指摘しています。私自身、ボスニア紛争の取材をし、当時は「一方的なセルビア人悪玉報道はおかしい」との論陣を張った覚えがあります。
 しかし、シリアの場合はボスニアとは事情が違います。この違いを自分で確信するのは、まあ平たく言えば「経験」です。
(以前、個人の経験は思い込みに直結するのであまり参考にならない、というようなことを書いたことがあるのですが、結局それに頼ることが多いのも事実です。要は自分の経験則も疑ってかかる心構えは重要だということではあるのですが)

 また、欧米や他国の「思惑」を過大評価するのも、よく陥りやすいパターンです。もちろんそういうものは実在します。が、それらがすべてを動かしているわけではありません。
 シリア反体制運動でいえば、それはさまざまな人がそれぞれの事情でその危険な道に入ったわけですが、最重要なのは、「秘密警察が牛耳るような恐怖体制は嫌だ」という至極もっともな感情が最初にあり、⇒反体制デモをやってみたら、⇒家族や友人が殺害され、⇒勇気をもって反乱軍に参画した、という人々がたくさんいて、武力に勝る政権軍・治安部隊・民兵に果敢に抵抗しているということです。この大きなうねりのエネルギーに比べたら、他国の思惑などは小さい話でしかありません。

 と、シリア問題でなぜ自分が反アサド政権なのかを簡単に説明してみました。今回の件で自分はシリア国内を取材したわけではなりませんが、自分なりの情報源からの情報と、それなりの「経験」からの分析・評価ということです。
 前述したように、個人の経験に基づく分析などたかが知れているので、私が間違っている可能性はもちろんああります。その場合、私のインテリジェンスは全然ダメということになるわけです。
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  1. 2012/07/05(木) 15:35:38|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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