ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

KGBの対日工作⑥

レフチェンコ・メモの中身

 ところで、実は本誌は「レフチェンコ・メモ」そのものを入手している。レフチェンコ自身の担当エージェントの実名がすべては記載されていないなど、部外秘レベル的には最高度のものではないが、入手経路からみて、公安警察の一部のセクションで作成されたものであることが確実の資料である。
 メディアに流出した「レフチェンコ・メモ」にはいくつかの種類があるのだが、本誌が入手したものの記述は以下のようになっている。実名を含めてここに明らかにするが、その理由は後述する(以下、カッコ内は『リーダーズ・ダイジェスト日本版』に掲載されたレフチェンコ証言情報)。

①石田博英・元労働相
 コードネーム「フーバー」。担当者はフロニコフ中佐。レフチェンコ氏は本国のKGB本部勤務時代にも報告書で名前を知っていたし、実際に東京でも工作支援の際に面識がある。意識的にKGBに協力している。
②コードネーム「フェン・フォーキング」
 実名不記載。自民党員で、党内の一派閥に影響力を及ぼし得る立場にいる。KGBの正式なエージェント。KGB東京支部の中国班が担当している。
(自民党の党員で、党内の一派閥の指導人に影響を及ぼし得る人物)
③勝間田清一・元日本社会党委員長
 コードネームは「ギャバー」。担当者はセバスチャノフ中佐。レフチェンコ氏は工作報告官として報告書に記載したことがある。意識的にKGBに協力している。
④伊藤茂・社会党議員
 コードネームは「グレース」。担当者はセバスチャノフ中佐。レフチェンコ氏は報告官として工作報告書に記載したことがある。意識的にKGBに協力している。
⑤佐藤保・社会主義協会事務局長
 コードネームは「アトス」。担当者はウマンスキー少佐。意識的にKGBに協力している。
⑥上田卓三・社会党議員(その後、党中央執行副委員長、部落解放同盟委員長)
 コードネームは「ウラノフ」。工作支援でレフチェンコ氏も面識がある。ただし、本人がKGBの正式エージェントというわけではなく、KGB正式エージェント「山本」の影響下で無意識にKGBに協力している。
⑦コードネーム「ズム」
 実名不記載。上田卓三の秘書。レフチェンコ氏は工作支援で面識がある。無意識にKGBに協力している。
(ウラノフの優れた秘書)
⑧コードネーム「キング」
 実名不記載。落選した議員。レフチェンコ氏が担当。意識的にKGBに協力している。
(社会党の有能なリーダーで議員。レフチェンコから選挙資金等を受け取った)
⑨コードネーム「ティーバー」
 実名不記載。社会党員。意識的にKGBに協力している。
(党の政策に影響力を持つ)
⑩コードネーム「ディック」
 実名不記載。議員。レフチェンコ氏が担当。数年協力していたが、その後、離脱した。
⑪コードネーム「ラムセス」
 実名不記載。社会党員。意識的にKGBに協力している。
⑫コードネーム「カメネフ」
 実名不記載。議員。レフチェンコ氏が担当。無意識にKGBに協力している。
⑬山根卓二
 コードネームは「カント」。サンケイ新聞編集局次長(後、局長)。担当は当初はスミルノフ少佐で、その後、レフチェンコ氏に引き継がれる。KGBの正式エージェント。
(社長と親しい)
⑭コードネーム「デービー」
 実名不記載。サンケイ新聞記者。KGBの正式エージェント。レフチェンコ氏はKGB東京支部内の情報でその存在を知る。
(サンケイ新聞東京版勤務。カントを補強しうる人物)
⑮T(メモには実名があるが、なぜかこの人物だけカッコ付きで記載されている。意味が不明だが、公安が確認していない可能性もあるので、ここでは実名を伏せる)
 コードネームは「トマス」。読売新聞政治部。担当者はレフチェンコ氏。ただし、実態はKGBのエージェントではなく、無意識の協力にすぎない。(編集部注/T氏と推定される読売新聞記者については前出・渡邊恒雄回顧録で登場するが、T氏自身はその後、日本テレビ取締役、ラジオ日本社長などを歴任した)。
(レフチェンコの執筆依頼に応じていた)
⑯コードネーム「カミュ」
 実名不記載。東京新聞記者。KGB正式エージェント。レフチェンコ氏は東京支部の報告書に記載したことがある。
(韓国問題のスペシャリスト)
⑰コードネーム「アレス」
 実名不記載。共同通信記者。担当は当初はフロニコフ少佐だったが、後にレフチェンコ氏に引き継がれた。KGB正式エージェント。
(公安関係の友人から膨大な秘密情報を入手し、KGBに渡していた。「情報の宝庫」と呼ばれていた)
⑱コードネーム「アギス」
 実名不記載。大手新聞記者で元モスクワ特派員。KGB正式エージェント。
⑲三浦甲子二
 コードネームは「ムーヒン」。テレビ朝日専務。レフチェンコ氏も工作支援で面識ある。ただし、エージェントではなく「友好的人物」。
⑳山川暁夫(ペンネーム)
 コードネームは「バッシン」。ニュースレター『インサイダー』編集者。担当者はレフチェンコ氏。意識的にKGBに協力している。
21 コードネーム「ドクター」
 実名不記載。フリージャーナリストで、KGB正式エージェント。
(経済的にフリーのジャーナリストで、熱狂的マルキスト。以前は共産党員。事務所、家屋、接触予定地点を撮影するなどして、KGBの工作活動に不可欠な、秘密のバックアップ活動を展開した)
22 コードネーム「山本」
 大学教授。KGB正式エージェント。
(インテリのエージェントにより成るグループの指導者で、大学教授。学界で活発に活動中で、ソ連の意思に従った各種著作物を発表している)
23 コードネーム「バロン」
 実名不記載。アメリカに詳しい学者。KGB正式エージェント。
24 コードネーム「ブラット」
 実名不記載。東京の大学教授。意識的にKGBに協力している。
25 コードネーム「クラスノフ」
 実名不記載。著名な財界人。KGB正式エージェント。
26 堤清二
 コードネーム「ツナミ」。西武百貨店会長。担当者はグリヤノフ大佐。ただし、KGBエージェントではなく、「友好的人物」。
(億万長者で財界の実力者。ソ連の影響力が日本の財界や実業界に及ぶのを助けている)
27 コードネーム「シュバイク」
 実名不記載。公安関係。共同通信記者「アレス」のサブ工作員。
(アレスの友人の公安関係者。アレスに渡した情報の中には、公安当局が作成したレフチェンコの身上調書の抄訳のコピーも含まれていた)
28 コードネーム「マスロフ」
 実名不記載。元内閣調査室職員。KGB正式工作員。
(内閣調査室関係者で中国問題のアナリスト)
29 コードネーム「ナザール」
 実名不記載。外務省電信官。KGB正式工作員。KGB本部第1総局第16課(シギント担当)直属。担当者はウマンスキー少佐とベロフ少佐。
(各国の日本大使館から発信された通信文を同省の電信課で入手し、撮影もしくはコピーして、自分のケース・オフィサーに渡していた)
30 コードネーム「レンゴー」
 実名不記載。外務省職員(夫妻)。KGB正式工作員。
31 杉森康二
 コードネーム「サンドミール」。日本対外文化協会事務局長。意識的にKGBに協力している。
  1. 2007/07/13(金) 08:58:35|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2
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コメント

 コメントありがとうございます。瀬島龍三=クラスノフ説がネット上に流れていることは知っていましたが、真偽は私自身はわかりません。
 私が書いたのは、誰かわからないけれども、クラスノフはKGBの正式エージェントだということで、このソースは、元はレフチェンコ情報の公安情報です。
 生前のコワレンコ氏にはモスクワで直接会う機会があり、瀬島氏の件も聞いてみたのですが、もちろん否定しました。なお、コワレンコ氏は瀬島氏をひどく嫌っていました。かなり露骨な悪口を言ってましたから、両者の間で何かトラブルがあったのかもしれません。
 ただ、瀬島氏がコワレンコのエージェントだったという説には、私自身は疑問を感じています。コワレンコ氏側には大きなメリットがありますが、瀬島氏側には、それほどの危険な橋をわたる動機がありません。思想的な動機もないと思います。
 瀬島氏、あるいはその伊藤忠の部下で、対ソ関係を取り仕切った岡島和生氏などは、KGBサイドにコードネームをファイルされていた可能性はありますが、KGBの正式エージェントとはちょっと考えにくいと思います。
  1. URL |
  2. 2012/04/20(金) 23:03:31 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

チャンネル桜が、瀬島龍三をソ連のスパイであったと断定

【アーカイブ】上念・倉山・浅野、政府の日銀総裁人事案を語る[桜H25-2-26] - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=0LRNIospJ0c

50分から56分の間で、瀬島龍三が、ソ連のスパイであったと断定されている。
  1. URL |
  2. 2013/02/27(水) 20:39:32 |
  3. 匿名 #n4jaW67w
  4. [ 編集]

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Intelligentsiya)とは、知識階級を指す言葉。なおそのような立場にある個人を知識人ともいう。対比語は大抵の場合において大衆(または民衆
  1. 2007/07/26(木) 05:55:41 |
  2. 教育問題.com

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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