ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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北朝鮮のサイバー部隊

 北朝鮮が宣言した韓国への「特別行動」ですが、文言を読めば読むほど、心理戦・情報戦としてのサイバー攻撃を示唆しているように読めてきます。
 つまり、政府機関や報道機関を標的にたとえばサイトをダウンさせたり、書き換えたりといったことが考えられます。実際にインフラをダウンさせることも、もしかしたらある程度は出来るのかもしれませんが、そこは全部手の内を明かしたりはしないので、ひとつかふたつのインフラに悪影響を与え、「自分たちはいつても韓国中枢を攻撃できるのだ!」と宣伝したいところかもしれません。
 さて、その北朝鮮でサイバー戦を担当するセクションですが、実際のところ正確なところはわかっていません。
が、韓国紙などが脱北者情報などをもとに、いくつか報じています。それらを総合すると、ほぼ以下のようなかたちになっているようです。ただし、以下はすべて推測情報ですので、そこは留意していただきたいと思います。

 まず、サイバー戦を担当するセクションは、軍の偵察総局。いまやイケイケ状態の金英徹が局長ですから、なにかはやりたい局面でしょう。
 偵察総局は金正日が脳卒中から生還し、正恩後継を決定した直後の2009年2月に、複数の秘密工作部門を統合して設置された組織です。内部部局は全6局と推定されます。第4局がどうやら欠番のようです、第1~7局まであるとみられています。
 ただし、その内部編成がはっきりしません。韓国の主要メディアでも情報が統一されていません。おそらく部内改編に絡んで、情報が錯綜しているものと思われます。
 参考までに偵察総局の編成に関する主な情報は以下。
▽ 第1局(作戦局 ※旧・党作戦部)はスパイ浸透・養成担当。海州、南浦、元山、清津の4カ所に出撃のための連絡所を運営。第2局(偵察局 ※旧・軍偵察局)は軍事作戦を担当。2010年の韓国哨戒艦撃沈事件にも関与したとみられる。第3局(対外情報局 ※旧・党35号室)は外国で対南情報を収集し、第三国を通した韓国浸透を支援する。第5局(交渉局 ※国防委員会政策室の実働セクション)は南北対話関与、交渉技術研究などを担当。第6局(技術局)はサイバーテロとスパイ装備開発、第7局(支援局)はこれらの工作を支援。(『中央日報』『朝鮮日報』などを元に筆者推測)
▽第1局(工作員養成)、第2局(秘密工作)、第3局(特殊装備開発)、第5局(情報収集)、第6局(不明)、第7局(不明)(※『デイリーNK』などの最新情報)

上記の2説は微妙に食い違っていますが、これについて私は確認する方途がありません。
サイバー攻撃については、上記のように偵察総局の第6局が統括していたとの情報もありますが、さまざまなOSINTを検討すると、偵察総局の「第121所」が昨年春までに「121局」に格上げされ、現在はそこが実働セクションとなっているものと思われます。偵察総局は中国各地、たとえば黒龍江省、山東省、福建省、北京隣接地域にハッキング基地を設置しているといいます。とくに遼寧省丹東市が中心とのことです。
第121局の要員数は、当初は500人程度とみられてきましたが、昨年5月頃の韓国報道では約1000人説が多く、その後、「3000人に増員された」(『朝鮮日報』2011年06月01日)との報道が出ています。
ただし、サイバー戦の戦力の優劣は、人数よりも個々の能力によるところが大きいです。
第121局は、金日成総合大学、金一軍事大学、金策工業総合大学、平壌コンピューター技術大学などの卒業生から選抜されるとのことですが、もともとは全国の小学校で算数の天才を選抜し、平壌の金星第一・第二高等中学校で徹底した専門教育を施している模様です。部隊に入隊した後も、優秀な人材は中国軍のサイバー戦教育機関などに積極的に留学させていると思われます。
したがって、北朝鮮のサイバー部隊の実力に関して、実際のところは不明ですが、かなりハイレベルの水準に達していると考えるべきではないかと思います。
 2011年05月08日付『中央日報』日本版が、北朝鮮ハッカーの興味深いインタビューを掲載しています。一部抜粋引用します。
「上部からの命令により中国に行き南朝鮮のサイトをハッキングする。また、指示されたプログラムを受け取り南朝鮮の動画ファイルに悪性コードを埋め込む作業もする」
「正直なところどの南朝鮮サイトもハッキングはとても簡単だ。指示さえ下されれば数百人ずつがあるサイトを攻撃する。それであっという間にダウンする。IPアドレスのためできるだけわれわれがやったことを知られないようプロキシサーバーを利用し第三国を迂回して入る方法を使う」
「南朝鮮の選挙の際には数十人ずつチームを作って中国に滞在し南朝鮮のサイトで世論を作りデマを広める。サイトに加入するために盗用した住民登録番号を使う。われわれは住民番号100万個を持っている。南朝鮮の人の名義で開通した携帯電話もある」
「私の友人らが中国で仕事をする際にはひとりが数百人分の住民番号を管理した」
「中国に行く期間は短くて10日、長くて3~6カ月だ。デマかく乱チームは2~3カ月ずつ滞在する」
「コンピューターウイルス製作のために働く人だけでも数百人になる」
 サイバー戦はハイテク勝負と一般には思われていますが、実際のところは多額の装備費も部隊運営費も不要で、教育勝負のところがあり、むしろ小国・貧国でも大国に伍することができる分野といえます。
 また、サイバー戦は攻撃力と防御力の総合力での戦いになりますが、インターネットが整備されていない北朝鮮は、その点でも非常に有利な立場にいます。そんな北朝鮮がサイバー戦に邁進するのは当然な話です。
 サイバー戦のもうひとつの特徴は、直接的な武力攻撃に比べて圧倒的に発動の敷居が低く、いわゆる「やり得」なことです。経路を偽装することで、犯行を特定されづらくできますし、うまくやれば相手に気づかれることなく犯行を実行することもある程度は可能です。
 北朝鮮と韓国はいまや日常的にサイバー戦の状況にありますが、そこで鍛えられた北朝鮮サイバー部隊が、日本を標的にしないわけがありません。DDoS攻撃のような表面化する攻撃はともかく、昨年問題になった中国のサイバー・スパイのような対日不正アクセスは、すでに広範囲に試みられていると考え、警戒を強化するべきでしょう。
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  1. 2012/04/30(月) 08:14:13|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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