ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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「核実験」はブラフかもしれない

 例のテポドン関連ですが、再びTBS様に声をかけていただき、昨日の昼ニュース(電話コメント)、夕方の「Nスタ」(スタジオ出演)、今朝の「みのもんたの朝ズバ」(コメントVTR)で採用していただきました。いよいよ金日成生誕100周年という国家最大の慶事なので、テポドン発射にかぎらず、いろいろニュースが出てきます。今後1週間近く、北朝鮮ネタが連日続くことになるでしょう。
 今回の北朝鮮衛星打ち上げ自体は、成功の可能性あると思います。そのとき、北のアナウンサーが「ついに成功した!」とか、つい言っちゃわないかな・・・と少々期待です。これまで2回「成功した」と頑なに言い張っていたわけですからね。

 打ち上げ実行の日について諸説ありますが、天候に問題がなく、準備が完了したなら、予定期間初日の12日にも実行する可能性が高いと私は見ています。
 どこの国でも、ロケット打ち上げの場合には、いざ発射となって不具合が見つかり、しばし延期ということは珍しくありません。予告期間に幅をもたせているのは、そのための保険であり、そもそも最初から15日とか16日とかを予定しているなら、12日からという設定の意味がありません。
 16日過ぎても打ち上げられなかったらたいへんな大失態になるので、技術陣としてはとにかく準備ができたらGOでしょう。

 他方、本当にやるかどうかわからないのが、3度目の核実験です。実験場に新たな動きがあることが衛星でキャッチされたため、今回もテポドン発射後に核実験をやるはずだとする見方もありますが、それはまだわかりません。
 核実験場でのそのような動きは過去にも何度もありました。もちろん将来の核実験のための準備作業ということでしょうが、それが具体的なスケジュールのもとに進められているとはかぎりません。
 過去2回、ミサイル発射⇒核実験というパターンを繰り返していますが、過去のケースは政治よりも軍事のスケジュールに沿ったものでした。
 06年の場合、テポドン2と初期の核爆弾が出来たので、せーので実験し、テポドン2が完全失敗、核爆弾は部分的成功。09年の場合は、テポドン2も核爆弾も改良できたので実験し、ともに成功(テポドンは3段目切り離し失敗ですが、弾道ミサイルとすれば1段目と2段目のロケットは成功です)したということになります。政治的動機ではなく、軍事的に技術段階が進んだので、必要な実験を粛々と実行したということになります。

 それらの過去のケースと比べて、今回は明らかに政治的な動機の割合が大きくなっています。テポドン発射(衛星打ち上げ)は、金日成生誕100年を祝うメイン・イベントです。使用されるロケットは09年に発射に成功したものとほぼ同じであり(外見だけでなく、ブースター落下予告地点を見ても、性能がほぼ同じであることがわかります)、新たなミサイル・テストという側面はあまりありません。絶対に失敗できないイベントなので、確実な方法を採用したわけです。

 今回、技術的に改良されているとすれば、第3段ロケットの加速がきちんと機能し、ちょっとした金属の箱を衛星軌道に投入できるかどうかが注目されますが、100kg(これも自己申告なので疑わしいですが)の箱を第1宇宙速度に加速できるかは、軍事的にはあまり意味のないことです(ちなみに、空気抵抗がないと想定して、地上0メートル高度で地球を周回する衛星軌道に乗るために必要な第1宇宙速度はおよそ秒速7.9kmですが、北朝鮮が予告している高度500kmだと、若干値が小さくなって秒速7.6km程度になるそうです)。
 弾道ミサイルの弾頭として実用化するには、700kgから1トン程度のものを飛ばせないと意味がなく、その意味ではテポドン2改の射程は、弾頭重量にもよりますが、約4000~6000km程度と推定されます。

 つまり、今回テポドン2改を使用するのは、繰り返しますが、軍事的に技術開発にはあまり意味がないことになります。
 では、北朝鮮は本当に衛星開発に取り組んでいるかというと、まったくゼロということはないでしょうが、ほとんど後回しになっていると見ていいでしょう。体制の生き残りにさほど重要でないからです。
 衛星は、とにかく国内アピールのための道具です。なので、衛星軌道に入れば、箱でもなんでもいいわけです。北朝鮮が衛星を公開したことで、「これは何だ?」という話になっていますが、要は「何でもいい」のですね。
 それでも、今回、北朝鮮が実行することは、間違いなく衛星打ち上げでしょう。細かくみれば、軌道も、弾道ミサイルが射程を延ばすための最適の軌道ではなく、衛星打ち上げ用の軌道をとることになると思います。

 話を整理すると、今回の大まかな流れとしては、国家最大の慶事を祝賀するイベントとして、衛星打ち上げを計画したことがもっとも重要だと思われます。そのための準備を北朝鮮は前々から進めており、国内外にも広報しつつ、「軍事目的ではない」と強調して強行するわけです。
 ミサイルの実験というものがメインであれば、パワー不足でこれ以上の射程伸張があまり望めそうにないテポドン2改ではなく、他のロケットを使用するのが合理的です。どうせ打ち上げるなら、何かの技術向上の検証に利用するでしょうが、今回はそれは「ついでに」といった二次的なものにすぎないのではないかなと思います。
 
 それで核実験ですが、こちらは単なる対米交渉の道具として核実験を行うということもないと思います。
 まず、北朝鮮は現在、プルトニウムを核爆弾6~10発分程度しか保有していません。外交の道具として消費するほどの備蓄があるわけではありません。
 実験が必要になるとすれば、1回目実験でとりあえず核分裂を起こし、2回目実験で精度を上げた起爆装置が、相当程度小型化された場合に、それが本当に起爆するかどうかの実験ということになります。北朝鮮が起爆装置小型化にどれほど進んでいるのかはまったく情報がないのでわかりません。
 もしもそれなりに信頼性の高い小型起爆装置が完成していたら、3度目の核実験は当然、ありえると思います。しかし、それがまだ実現されていなかったとしたら、3度目の核実験はまだしばらく先のことになるでしょう。
 一部に、ウラン型爆弾の実験かもという見方もありますが、考えづらいですね。北朝鮮はかねてからイランの前例に倣い、軽水炉まで建設して、平和利用目的のウラン濃縮を進めると公言してきました。仮に密かに兵器級高濃縮ウランを製造していたとしても(その可能性は現時点ではまだほとんどないと思いますが)、それで実験すれば、そうしたイラン流の欺瞞工作が出来なくなるわけですから、まだその段階ではないと思います。

 これらのことを考えると、今回、3度目の核実験を実行するかどうかは、北朝鮮政権中枢の考えがわからない以上、これもまったくわからないと考えるしかありません。
 わからないことを当てずっぽうで言ってしまうと、私の直感では、3度目の核実験が行われるとの見方には疑問を持っています。
 北朝鮮は新たな核実験の可能性について、日本の朝鮮総連系の媒体に、それを仄めかすような記述を掲載させています。ずいぶん回りくどいやり方ですが、それだけあまり本気度を感じません。制裁あれば核実験・・・というのはブラフではないかなという気がします。

 結論。
「打ち上げは12日にも行われる可能性が高い」
「3度目の核実験は行われないのではないか」
 この2つが、私の「予想」ですが、はたしてどうなるでしょうか?
  
 ところで、先週、「日本文化チャンネル桜」様に声をかけていただき、「闘論!倒論!討論!2012 日本よ、今...」という討論番組に呼んでいただきました。 テーマは「朝鮮半島情勢とこれからの日本」。
 4月7日にスカパーで放送ということでしたが、先週末からちょっとバタバタしていて、告知を失念していました。放送はすでに終わっていますが、インターネット放送So-TV(http://www.so-tv.jp/)で見られるようです。
 また、ユーチューブでもアップされています。
▽1/3【討論!】朝鮮半島情勢とこれからの日本[桜H24/4/7]
▽2/3【討論!】朝鮮半島情勢とこれからの日本[桜H24/4/7]
▽3/3【討論!】朝鮮半島情勢とこれからの日本[桜H24/4/7]
 司会は日本文化チャンネル桜・代表の水島総氏。パネリストは軍事ジャーナリストの清谷信一氏、拓殖大学国際開発研究所客員研究員の高永氏、「救う会」全国協議会会長・東京基督教大学教授の西岡力氏、元陸将・元ハーバード大学アジアセンター上級客員研究員・日本戦略研究フォーラム政策提言委員の福山隆氏、統一日報論説主幹のホン・ヒョン氏、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表の三浦小太郎氏です。
 上記は計3時間の長丁場ですが、錚々たる論客を前に私自身はほとんど発言できず。反省です。
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  1. 2012/04/10(火) 10:33:41|
  2. 著作・メディア活動など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<テポドン2改の謎 | ホーム | 独裁者の支持者という幻想>>

コメント

得意分野の北朝鮮がテーマなのに黒井先生があまり発言されないので「討論など」と冷笑的に斜に構えていらっしゃるのだろうかと丁度訝しんでいたところでした。人の話に割って話すのが好きではない御性格なのかもしれません。まあ、場慣れの問題もあるのでしょうか。さて、チャンネル桜は軍事オタクではない一般の人に安全保障問題を啓蒙している役割があるので、黒井先生には週一30分位の『内外インテリジェンス情勢』というような解説番組を持って頂きたい(笑)。しかし、西岡力教授ら救う会というのはほとんど諜報機関ですね。
  1. URL |
  2. 2012/04/11(水) 02:38:30 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

お恥ずかしいかぎりです。私自身はどちらかというと饒舌なほうなのですが、討論会のパネリストは初体験で、発言のタイミングがよくつかめませんでした。初動0・2秒くらいの差だと思うのですが・・・。これまで活字メディアで座談会の司会は数多くやったのですが、放送メディアはかなり勝手が違いますね。
 声をかけてくださったチャンネル桜様および視聴していただいた方々には期待はずれで申し訳ありませんでしたが、そういう意味ではたいへん勉強になりました。
  1. URL |
  2. 2012/04/11(水) 09:04:18 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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