ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ある原子力専門家の意見

 自分が取材した話ではなく、単に読んだだけの話なのですが、今朝の読売新聞に掲載されていた田中俊一・元日本原子力学会会長のインタビュー記事が、賛同できる部分がたいへん多かったので、読売読者以外の方向けに内容を引用して紹介します。

▽除染なしには何も始まらない(中略)。住民が戻れない状況が続く限り、復興の議論もできない。
▽(国の動きは)スピード感も切迫感もない。何としても帰ってもらうという意識が希薄だと思う。
▽(質問・田中さんは国の不合理な基準が除染や復興の妨げになっていると訴えている)⇒役所ごとに基準がバラバラなうえ、科学的合理性を欠く変更を繰り返してきた。
▽新しい食品摂取基準もそうだ。そもそも従来の基準は欧州より厳しい。いま流通している食品からの内部被曝線量も目標の年間1ミリ・シーベルトより十分に低い。切り下げる合理的な理由はなかった。
▽(質問・むしろ悪影響のほうが大きいのか?)⇒そうだ。基準を厳しくする度に福島では住民の不安が増している。心配ない量の被曝におびえ、ストレスもたまる。農家は作付けが難しくなり、井戸水や山水が使えなくなる恐れもある。これでは住民は暮らしていけない。政府は東京の消費者の安心しか考えていないのかとも思う(後略)。
▽除染現場の基準も実態にそぐわない。政府は福島の住民に対し、年間の被曝線量が20ミリ・シーベルト以下ならそこで暮らせるとしている。一方、他の地域から来た除染ボランティアの被曝線量はずっと厳しい1ミリ・シーベルト以下に抑えろという。住民から見れば差別的な扱いだし、ボランティアには来るなと言っているに等しい。
▽(廃棄物問題について)このままでは廃棄物の行き場がなくなる。
▽私は福島の市町村ごとに最終処分場を作るしかないと思う(後略)。
▽(安全性について)きちんと管理すれば問題はない。原発の高レベル廃棄物とは違う。雨水などに混じって汚染物質が流出するのを防ぐことも難しくない。
▽(質問・地元は納得するのか?)⇒迷惑施設だし、嫌だという気持ちはよくわかる。しかし、この問題は国をあてにしているだけでは解決しない。住民は『最終処分場は自分たちで確保した。だから除染を早くやれ』と主張すべきだ。
▽この話を住民にすると、『田中さんがまた言ってる』と苦笑する人が多い。『国は県外と約束している』と怒り出す人もいる。だが、本音では、やはり受け入れざるを得ない、という気持ちもあると思う。真摯に、覚悟をもって住民と向き合うしかない。
▽(放射線のリスクについて)一部の科学者は根拠もなく微量の放射線の危険を唱え、不安を煽っている。研究者は他の研究者と違うことを言って生活している人種だが、いま必要なのは個人的見解の表明ではない。『分からないから危険だ』と言うのは科学者として無責任だと思う。
▽(質問・田中さん自身も原子力ムラの住人だった。はなから信用していない人もいるのでは?)⇒いますね。
▽(質問・どう説得するのか?)⇒事実に基づいて丁寧に説明し、最後は自分で判断してほしい、と話している。よりどころは国連科学委員会などが収集・評価したデータだ。
▽(原発再稼働について)節電などで乗り切れるという人もいる。その通りならいい。だが、そうでなかったときの社会的損失は計り知れない。大停電になれば、相当の犠牲者が出るかもしれない。
▽(質問・中長期的にはどうか?)⇒最近の炉は改良されている。しかし、今回の事故で古い原発には構造的な弱点があることが明らかになった。既存の原発をすべて動かすのは難しいかもしれない。
▽電力業界などでは『(現在の原発が使う)軽水炉の技術は実証済み。安全研究など余計なことはしなくていい』という風潮があった。だが、傲慢になったら終わりだ。すべての関係者は徹底した反省が求められていると思う。
(以上、抜粋)

 インタビュアーは同紙の大塚隆一・編集委員。本音の発言を引き出し、なおかつ発言者が無用な批判にさらされないように配慮された構成の見事な記事です。同編集委員の短い後記も秀逸。「逃げない覚悟 必要」との見出しで、以下のような文章です。
(以下、引用)
 田中さんは取材後、「四方八方からたたかれるでしょうね」と話した。
 厳しい決断を先送りする政府を批判し、住民には反発を承知で処分場の確保を求める。不安をあおる研究者は無責任と断じ、原子力関係者にも傲慢さを戒める-ー確かに「よく言った」という人は少ないかもしれない。(以下省略)

 いえいえ、「よく言った」と思う人も少なくないと思いますね。
(・・・と読者に思われることも、おそらく織り込み済みの記述だとは思いますが)
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  1. 2012/04/07(土) 12:48:51|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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