ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シリア爆弾テロの犯人について

 少し前のエントリーで、シリアの爆弾テロに関して言及しました。政府側は「テロリストの犯行」、反体制側は「政権の自作自演」を主張していましたが、いずれもそれらを断定する根拠はないことを紹介しました。
 その後、「レバント防御アル・ヌスラ戦線」(Al-Nusra Front to Protect the Levant)という組織が犯行声明を発表しました。レバントというのは、現在のレバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダンを合わせた地域の呼称です。同組織はいわゆるスンニ派原理主義の組織ということで、犯行は「スンニ派の復讐だ」ということになっています。
 このレバント防御アル・ヌスラ戦線に関して、反体制派のフェイスブックではさまざまな議論が発生しています。多くは「そんな組織名は聞いたことがない。アサドの自作自演テロのためのダミーだろう」という、いわゆる陰謀論です。
 同組織名でのステートメントはたしかに、今年1月23日が最初ですから、きわめて最近に出てきた名前です。ですが、私自身は、可能性としては、実在してもおかしくないと考えています。
 たとえば、イラク戦争の頃に、シリアからも多くの若者が義勇兵としてイラクに行き、スンニ派系の武装ゲリラに参加していましたが、その残党を中心とした仲間内グループが、おそらくすでにシリア国内いくつかあると思います。イラクのスンニ派系ゲリラにはアルカイダ系の人脈もあったので、そちらのつながりもあるかもしれません。
 アフガニスタンでビンラディンらと行動をともにしたシリア人も何人もいますが、その残党が参加しているかどうかはわかりません。なので「アルカイダ系」という括りでは考えられないかもしれませんが、少なくともイラクの反米スンニ派ゲリラの流れを汲む、すなわち爆弾(自爆)テロを常套手段とする勢力そのものは実在すると考えていいと思っています。

 それと、自作自演説にはいくつか無理があります。
 まず、シリアの現在の状況は、アサド政権側がまだまだ圧倒的優勢状態にあって、自作自演するほど追い詰められていません。陰謀は露呈したときのダメージが大きいですから、以前も書きましたが、それほど危険な橋をわたる意味が、アサド側にはないと思います。
 そもそも、アサド政権は反対派を殺戮することになんの躊躇も示していませんし、海外の圧力も無視するだけですから、わざわざ大掛かりな自作自演をする必要性がありません。そんなことより、国内はすでに反乱軍とのバトルになっていますから、純粋に「どちらが、より相手を攻撃できるか」を競う状況になっています。ダマスカス中心部の治安機関が狙われたとなれば、圧倒的に反乱軍側の得点になります。
 それに、仮に自作自演をしようとしたとしても、郊外の検問所あたりを吹き飛ばせばいいことですから、なにもわざわざ政権中枢の近傍を爆破する必要はありません。
 というようなことを考えると、これは私の推測にすぎませんが、やはり反体制派の中のスンニ派過激派の犯行ではないかなという気がします。

 ところで、いずれにせよ、ここまで国民の虐殺が続けられる異常事態のなか、反体制派にもさすがに武闘派が増えてきています。そんななか、国際人権団体「ヒューマンライト・ウォッチ」が先日、シリア反体制派による暴力を非難する声明を発表しました。
 昨日、CNNインターナショナルがその件をかなり大きく報じていて、自由シリア軍が捕虜にしたシャビーハに暴行した件や、処刑した件を詳しく伝えました。シャビーハを吊るし首にした場面の映像までそのまま放送していましたが、アメリカのテレビ局各社(新聞各社も)は原則的には残虐映像を流さないものなで、その点はちょっと驚きました。
 もっとも「戦場」とはそういうもので、シャビーハへの暴行・処刑くらいでは私自身はあまり驚きません。法的に問題がないわけではありませんが、自ら武器を持って住民殺戮に加担した以上、殺されても文句は言えないと思っています(そもそも、私はビンラディンやサダム・フセインやカダフィなどの最期に同情的な声が人権方面であることに、逆に違和感があります。戦場経験者だからでしょうか)。
 ただ、警戒すべきは「アラウィ派」コミュニティに対する報復暴力です。これは反乱軍といえども自制すべきで、そこは国際メディア、国際社会がきちんと注意を払うべきところかと思います。
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  1. 2012/03/25(日) 11:58:40|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

 内戦は過度の暴力を生みやすいですしね.

 「戦乱下の開発政策」(シュプリンガー・フェアクラーク東京,2004/8/3),p.13-16によれば,
1) 内戦による破壊によって時間的な視野が狭くなり,混乱によって家族やコミュニティの結びつきが断絶する.
2) これは共に,日和見主義的および,犯罪的な行動に対する制約が弱まることに繋がる.
と言われておりますし.
  1. URL |
  2. 2012/03/25(日) 23:12:43 |
  3. 消印所沢 #-
  4. [ 編集]

 ある程度、しかたない面はあると思いますが、いちばん怖いのは群集心理の暴走ですね。
 シリアの反体制派はその点、今のところは驚異的に自制されています。ファナティックな言説には必ずブレーキが入るためだと思います。
 社会の情報化は、極論を含めてさまざまな言説の伝播を後押しする反面、全体としては教条を抑制するというベターな作用が多いようにみえます。ただし、ネット言論はごく一部を過激化するので、多数派による虐殺は抑制できても、少数派によるテロは増える可能性があると思います。アサド政権に対するテロは現時点では必要悪と思いますが、この流れだとアラウィ派住民への無差別テロに簡単に転化しそうで警戒が必要と思います。
  1. URL |
  2. 2012/03/26(月) 09:33:15 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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