ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

報道の加害性

 現代ビジネスで下記の『フライデー』記事がアップされていました。良記事です。
▽原発事故直後、「患者を捨てて逃げた」と報じられた院長たち。誤報道はなぜ起きたのか 双葉病院(福島・大熊町)の奮闘を「逃亡犯」に変えた新聞・テレビ(現代ビジネス)
 ノンフィクション作家・森功氏の新著『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか』(講談社)を元にした記事ですが、非常に重要な内容だと思います。
 こうした事例は、双葉病院だけのことではありません。メディア報道の難しいところのひとつに、こうした問題が常にあることが挙げられると思います。正確でない報道が他人を不当に傷つけてしまうことは、日常的に発生しています。
 上記は週刊誌記事なので「新聞・テレビ」だけを批判していますが、雑誌でもウェブメディアでも同じです。私自身、週刊誌編集部に在籍したことがありますが、新人のときの訓練として、抗議電話の対応を命じられたことがあります。私自身、まったく関与していない事件記事でも、事件関係者が「事実と違う」と抗議してくると、それに対応しなければならないわけです。
 いろいろなケースがあって、どんな事件でも見る角度で見方が変わるのはよくあることですが、ときには相手の言い分が正しいということもあります。とくに殺人事件の場合などでは、わずか1~2日の取材でその深い背景などわかりませんが、それで安易に善悪のストーリーを報じると、真相から離れてしまうことが多々あります。
 なので、誰かをバッシングするような論調の報道では、どれほど深い取材がされているかが重要です。そこが甘いと、新聞・テレビほど影響力のない雑誌記事でも、当事者を大きく傷つけることがあるのだな、ということを、私自身はこの業界に入ってすぐに思い知らされたわけです。
 今の時代、報道は無敵の暴力装置でもあると思います。

 ところで、上記とは違う話になりますが、例の放射線報道で思うのは、危険派メディアの加害性が自覚されていないのではないかな、ということです。
 危険派は「(放射線)安全派は殺人者と同じ」と糾弾しますが、危険派もその報道によって、放射線被害妄想を伝播し、本来なら家や仕事を捨てる必要のなかった人に故郷や職場を捨てさせ、離れる必要のなかった家族を離散させ、本来行われるはずの復興事業を妨害し、もしかしたら高齢者を不当に早死にさせてしまっている可能性もあるわけです。
 放射能汚染を心から信じきってしまっている記者さんならしかたないですが、危険派メディアあるいは任意団体の中に、もしも自分たちの組織が主張していることに疑問を持っている記者さんがいたなら、この加害性をぜひとも考えていただきたいと思います。

 さらに上記とは違う話ですが、最初からダメダメな報道もあります。
 私の故郷は被災地なので、メディアがよく取材に訪れるそうです。取材を受けた経験のある知人も何人かいます。
 そんな中で聞いた話ですが、ある人がテレビの取材を受けたら、全く真意でない方向にコメントが使われ、それが原因で不当なバッシングを受けるはめになった人もいるということです。どうやら取材者が最初からある方向で報じたい意思を持っていて、なにがなんでもそういう構図でコメントを繋いだようです。完全に騙し討ちですね。
「取材の依頼が来たらどうすりゃいい?」と、故郷の友人に聞かれました。ちょっと考えて、私はこう言いました。
「なるべく受けないほうがいいと思う」
 私自身、取材側にいる立場として、どの口が言ってんだかと自問しつつ・・・
(上記は、「自分たちの声を聞いて欲しい」「忘れないで報じ続けて欲しい」という被災者の声があることを否定するものではありません。そうした報道は重要なことであることも承知しています。ただ、メディアはときにひどいことをすることもある、ということは指摘しておきたいと思います)

(追記)
 今朝(24日)の読売朝刊の震災検証記事内に、原発近くの某病院(双葉病院ではありません)の話が載っていました。スタッフ60数人のうち、40人以上が自身の被曝を恐れて、入院患者を置いて逃亡したとのことです。双葉病院のデマ報道とは違い、これだけ時間が経過し、関係者の取材をきっちり行なっている記事ですから、事実なのでしょう。
 当時の原発隣接地は、誰もが「自分も死ぬかもしれない」と思うような状況ですから、患者を捨てて逃げた人を安易に責めることはできないでしょう。しかし、患者を捨てずに残った人は、紛れもなく素晴らしい方々だと思います。ここで難しいのは、結局、残った人を賞賛するということは、逃げた人に対する軽蔑が含まれてしまうわけですね。逃げた人も被災者ではあるのですが・・・。
 情報がまったくない震災直後に、パニックになるのはしかたがありません。いわき市の友人も、3月14日の2回目の水素爆発(3号機)のときは「もう終わりだと思った」そうです。
 しかし、その後、放射能汚染の状況も徐々に判明してきて、今では県内のほとんど地域が生活(健康)に問題ないことがわかっています。それでも、まだまだ医療従事者が不足していて、つい先日も、福島県が就職説明会を東京で開催したところ、300人を見込んでいた来場者が、たった5人しか来なかったそうです。
 自分の命を縮めるほどの被曝の危険があるなら、それもしかたないと思いますが、そうではないわけですね。医療スタッフが足りなければ、助かる命が助からないということも起こるかもしれません。
 そういうことを考えると、やっぱり報道の加害性ということを考えてしまいます。問題なのは、被曝を恐れる看護師さんたちではなく、メディアのほうだと思います。
スポンサーサイト
  1. 2012/03/23(金) 11:14:39|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<中国首脳の権力闘争スパイ戦 | ホーム | JBPRESS「衛星を打ち上げる北朝鮮の理屈」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/697-586bdec2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。