ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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イラン衛星と北朝鮮ミサイル

 北朝鮮のミサイル発射実験(衛星打ち上げ)が、私の予想よりは大きく注目されています。
 けしからん、というのが当然ながら大方の見方ですが、じつは日本の安全保障を考えた場合、北朝鮮がどんどん長射程のミサイルを開発してくれたほうがベターだという逆説は、わかるでしょうか?
 というのも、北朝鮮の核・ミサイル開発のうち、日本が警戒すべきは、核の小型化による弾道ミサイル搭載だけです。ミサイルはすでに「ノドン」「ムスダン」の射程に入っていますので、いまさらテポドン2改の長射程化を気にする必要はありません。あれは、アメリカの問題です。
 ところが、アメリカは北朝鮮のミサイルの射程が短く、アメリカ本土にはまだまだ届かないため、北朝鮮の核問題に対してこれまで余裕がありました。中東や中央アジアの問題のほうが喫緊の問題なので、北朝鮮は後回しでいいというスタンスですね。たとえ日本が核ミサイルの射程に入っても「まあいいや」ということです。
 しかし、北朝鮮がどんどんミサイルを開発し、アメリカ本土が危ないとなれば、アメリカも本気で北朝鮮対策を考えることになります。(日本にとって)うまくいけば、アメリカが北朝鮮の核施設を軍事攻撃で破壊してくれるかもしれません。日本の安全保障を考えた場合、北朝鮮が核ノドンを開発する前に、アメリカが北朝鮮を軍事攻撃してくれるのが最良のシナリオです。本来なら、日本がやっちゃっていい局面ですが、自衛隊にその能力はありませんし、日本国民にもその覚悟はありませんから、他人任せが最良の選択なのです。
 とはいえ、そう簡単に日本に都合がいい戦争は起きませんが、少なくとも、アメリカがもっと本気になれば、北朝鮮の核ミサイル開発に何らかの大きな圧力をかけることができるかもしれません。具体的なイメージでいえば、アメリカが本気の軍事的措置をちらつかせて北朝鮮に迫れば、北朝鮮は震え上がって核ミサイル開発で妥協する可能性がきわめて高いと思います。1994年の金日成=カーター会談のときと同じです。
 要は、アメリカが本気かどうかということです。アメリカを本気にさせるために、北朝鮮にはどんどん長距離弾道ミサイルを開発していただきたいものです。

 ところで、北朝鮮は今度のミサイル発射実験(ロケット打ち上げ)を、外国のプレスや専門家に公開したいとの意向を示しています。で、いちおう衛星らしきものを搭載するでしょう。
 北朝鮮は2009年の発射実験では3段式のテポドン2改で飛距離3000km超を達成。衛星の軌道突入には失敗(いちおうやろうと試みたものと推定される)したものと思われます。
 今度の打ち上げで衛星が軌道に乗るかどうかはまったくわかりません。前回から3年でいっきにロケットの飛距離がアップとは考えにくいですが、重量がわずか数十kgで、大気圏への再突入体も不要な衛星であれば、パワーに劣る中距離弾道ミサイルでも最後の衛星体を秒速8kmレベルで衛星軌道に乗せることができるかもしれません。
 それを実際にやってのけたのが、北朝鮮と密接な協力関係にあるイランですね。イランは準中距離弾道ミサイルのジャハブ3を元に開発した宇宙ロケット「サフィール」で、すでに衛星打ち上げに成功しています。シャハブ3はもともと北朝鮮の協力を得て開発されたもので、ノドンをもとに作られたといわれています。サフィールは2段式なので、要するにテポドンに相当するものと考えていいかと思います。射程は推定2000kmで、イスラエルが射程に入ります。
 サフィールによる衛星「オミド」の打ち上げは、2008年に失敗し、2009年2月にサフィール2によって成功しました。オミドは推定30kgの小さなものですね。
 その後、サフィール1Bが2011年6月、試験衛星「ラサッド1」の打ち上げに成功。今年2月3日には、新型の「サフィール2/BLOCKⅡ」が、地球観測衛星「ナヴィード・エルモサナト」の打ち上げに成功しています。ちなみにラサード1の重量は約15kg、ナヴィード・エルモサナトの重量は推定50kg。サフィール2/BLOCKⅡは3段式で、おそらく性能的にはテポドン2改に相当するものと思われます。
 つまり、重量数十kgのものであれば、テポドン2改クラスの中距離弾道ミサイルでも衛星軌道に乗せることが可能だということです。
 ですが、そこからICBMへは大きな技術的な壁があります。弾道ミサイルとして運用するなら、やはり少なくとも700~800kg程度の弾頭は飛ばさなければなりませんから、桁違いの推進力が必要です。もちろん再突入体の開発も不可欠ですね。
(ちなみに、パキスタンのシャヒーン2の再突入体は約1トンあります。テポドン2改もほぼ同じくらいと推定されます。米露などの軍事先進国の核弾頭には数十kg級の小型のものがありますが、もちろん北朝鮮にはまだまだ無理な話です)
 なので、今回、友好国イランと同程度の技術を獲得していたとしても、せいぜい数十kg(最大50kgぐらいか?)の衛星モドキを軌道に飛ばすのがせいぜいだと思われます。軍事的には何より、第3段目ロケットの飛距離をどれだけ延ばしてくるかが注目です。
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  1. 2012/03/19(月) 15:04:12|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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