ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

日本版「NSC」の民主党最終提言

 民主党のワーキングチームが検討していた日本版NSC創設に向けた最終提言案の内容が判明しました。産経新聞によると、以下のとおりです。
■メンバー・権限
 メンバーは首相、官房長官、外相、防衛相、国家戦略担当相、安全保障・危機管理担当官房副長官。月に2回、非公開の会議を開催 ▽安全保障と外交戦略について関係省庁間で調整する権限を持つ
■事務局
 新設の「安全保障・危機管理担当官房副長官」は官房長官を補佐し、内閣官房の安全保障、危機管理、情報の3部門を監督する ▽「安全保障担当官房副長官補」も新設。事務局は100人程度
■下部組織
 関係省庁の審議官・局長級の「合同安全保障会議」を置き、政策を総合化する。島嶼(とうしょ)防衛や北朝鮮対策など中・長期的に取り組む課題に関する分科会も設ける
■インテリジェンス
 情報活動について内閣情報調査室に防諜を主体とした研修を積極的に導入し人材育成に努める▽内閣情報分析官を20人程度に増員し、他国から得られた情報を評価するシステムを構築する
■サイバー・セキュリティー
 サイバー攻撃に省庁横断で防衛するための単一の指揮命令系統を確立させ、侵入経路などをリアルタイムで特定できるようにする

 順番に見ていきましょう。
 まず、
▽メンバーは首相、官房長官、外相、防衛相、国家戦略担当相、安全保障・危機管理担当官房副長官
⇒まあ、このあたりは形式的なものです。新設の安全保障・危機管理担当官房副長官が実質的なところをとりまとめるのでしょう。安全保障・危機管理担当官房副長官は、おそらく現在の安全保障・危機管理担当官房副長官補のラインの昇格という位置付けになりますので、外務省系ではなく、警察・防衛の縄張りになるでしょう。霞ヶ関の力関係からすると、おそらく警察系ということになるのではないかと思います。

▽安全保障と外交戦略について関係省庁間で調整する権限を持つ
⇒これができればいいですが、霞ヶ関の長年の慣習がありますから、難しいでしょうね。結局、日本の安保政策は外務省の誘導に従って官邸が決裁し、防衛省その他に通達するという基本パターンは踏襲されるものと思われますが、そうなると防衛・警察系のポストとなると思われる安全保障・危機管理担当官房副長官が音頭をとる日本版NSCは形式だけになってしまう可能性がありますね。

▽新設の「安全保障・危機管理担当官房副長官」は官房長官を補佐し、内閣官房の安全保障、危機管理、情報の3部門を監督する
⇒安全保障・危機管理担当官房副長官補より1階級昇格ですが、官僚トップの事務担当官房副長官と同格になるかといえば、おそらくそうはならないので、実質的にはあまり変化はないかもしれません。
 実権はともかく、これまで内閣危機管理監は官房副長官補よりタテマエ上は格上でしたが、今度は格下になります。
 さらに内閣官房の「情報」も監督するということは、内閣情報官の上司ということになります。情報コミュニティの情報は内閣情報官がとりまとめ、それが安全保障・危機管理担当官房副長官から日本版NSCに上げられるということでしょう。
 なお、格付け順位とすれば、首相⇒官房長官⇒関連諸大臣⇒政務担当官房副長官⇒事務担当官房副長官⇒安全保障・危機管理担当官房副長官(関連諸省庁の事務次官はタテマエ上はこの辺と同格な感じでしょうか。実際には事務次官のほうがエラいとは思いますが)⇒内閣危機管理監⇒内閣情報官ということになりますね。
 
▽「安全保障担当官房副長官補」も新設。事務局は100人程度
⇒安全保障を安全保障担当官房副長官補、危機管理を危機管理監、情報を内閣情報官が担当という棲み分けでしょうか。まあ実際には危機発生時は首相、官房長官、官房副長官が前面で仕切りますから、危機管理監の役割はそれほどはないでしょうが。たぶん安全保障・危機管理担当官房副長官は警察庁キャリア、安全保障担当官房副長官補が防衛省キャリア、危機管理監と内閣情報官が警察庁キャリアという布陣でしょうね。ここで私自身の考えを言うと、内調を国際部門に特化して、内閣情報官を外務省キャリアにしたほうがいいと思うのですが。
 事務局100人。これが実現できれば大進歩ですが、実際にはなかなか難しいかも。とりあえず40人くらいでいいいので、第一歩を進めていただけれないいなと希望します。ただし、単に肩書き配分で選ぶのではなく、ちゃんとした実力者を配置してもらえれば、ですが。

▽関係省庁の審議官・局長級の「合同安全保障会議」を置き、政策を総合化する。島嶼(とうしょ)防衛や北朝鮮対策など中・長期的に取り組む課題に関する分科会も設ける
⇒これは是非実現していただきたい話です。最初は形式だけでも、まずはこれも第一歩が重要です。とにかく日本政府にいちばん欠けていたのは、これですね。

▽情報活動について内閣情報調査室に防諜を主体とした研修を積極的に導入し、人材育成に努める
⇒ずいぶんスモールな提言ですが、実際にもっとも急ぐべきは防諜、というか情報保全の問題ですね。
 日本の場合はとくに公務員と政治家からの情報漏れを防止する法律導入が急務です。秘密保全法案をめぐっては、わがメディア陣営から大きな反対論が出ていますが、要は内容次第なわけで、私はむろんメディア側の人間ではありますし、なかでも国家機密方面のネタをメシの種にしている立場ですが、何らかの秘密保全法は必要だと考えています。捕まったら、まあしょうがないです。

▽内閣情報分析官を20人程度に増員し、他国から得られた情報を評価するシステムを構築する
⇒現状からは大幅アップではありますが、分析官ひとりひとりには限界があるので、本来ならここはどーんと100人くらいい欲しいところですね。要らない国会議員をどーんと減らして、予算をこちらに振り向けてほしいものです。

▽サイバー攻撃に省庁横断で防衛するための単一の指揮命令系統を確立させ、侵入経路などをリアルタイムで特定できるようにする
⇒これも急務ですね。警察庁と防衛省を中心に、経済産業省、外務省、法務省、財務省、総務省などの担当部局が一丸となって対処する態勢が不可欠です。今の日本は警察中心ですが、防衛省でサイバー部隊を育成し、そこが主体となるくらいのことが必要と思います。

 いずれにせよ、本来はこのくらいのことは最低限必要なのですが、政局をみると残念ながら実現化の可能性はあまりない気がします。日本の場合、まず応急処置が急ぎで必要なところから手をつけざるを得ないでしょう。
 ということで、今回の提言からは、まずはサイバー対策の部分をぜひともやっていただきたい。それと、日本版NSCの話とは違いますが、前述した秘密保全法。このあたりが先でしょうね。
スポンサーサイト
  1. 2012/03/05(月) 14:33:51|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<シリア空軍情報部を攻撃 | ホーム | 尖閣支配の既成事実を>>

コメント

>内調を国際部門に特化して、内閣情報官を外務省キャリアにしたほうがいいと思うのですが。

どうでしょうね。そうすると、内調の情報や分析が外務省の政策に引きずられるでしょうね。
外交と情報とでチェックアンドバランスを働かせるためには、外交とは縁の薄い組織の方が内閣情報官にはふさわしいのでは。
主要各国でも外交当局が情報トップを出している例はあまり見当たらないのではないかと。
  1. URL |
  2. 2012/03/07(水) 13:36:31 |
  3. intel-fan #-
  4. [ 編集]

 コメントありがとうございます。
 システムの理想としては仰るとおりと思いますが、まだ日本では難しいのではないかと思います。日本には対外情報庁がありませんので、どこかから人を引っ張ってくるしかありません。内調トップは警察官僚の指定席でしたが、現実問題として、公安マター以外の対外情報分析は、公安捜査ひと筋の警察官には難しいと思います。公調キャリア、防衛省キャリア、自衛隊制服でも難しいと思います。トップは部下の報告を検討するだけだから、そこそこ判断力があればいいとの考えもありますが、私は対外インテリジェンスの統括者には国際マインドが不可欠と思います。なので、人材は外務省しかないのではないかという気がします。外交畑出身者が情報トップに就いている例としては、たしかアメリカの初代国家情報長官、MI6の現長官も本籍は外交畑だったのではなかったかと思います。たしかに軍人とかのほうが多いですが。
  1. URL |
  2. 2012/03/07(水) 14:43:59 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/672-27877724
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。