ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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当事者意識の温度差

 JBPRESSに興味深い記事がありました。英紙『フィナンシャル・タイムズ』の翻訳です。
▽シリア不介入という選択の正当性(JBPRESS)

 シリアの虐殺を止める外国の軍事介入は是か非か、という論考で、非常にクールな大人の対応を説いています。たしかに傾聴すべき指摘がいくつもあります。

「(外国の官僚や政治家は)ただ『殺戮を止められるか』と問うだけでなく、『次に何が起きるか』と問わなければならない。さらに、『ある悪を阻止するために介入することで、将来もっと大きな悪を生み出してしまう可能性はあるか』と問わなければならない」
「どんな外部の介入についても、問わねばならない重大な問題は、単に殺戮を止められるかどうかだけでなく、平和裏かつ持続可能な政治的解決に有利になるよう情勢を決定的に変えられるかどうか、だ。もし形勢を一変できなければ、外国による介入は紛争を激化させてしまうだけになる恐れがある」
「感情的な反応は、必ずしも正しい反応ではないのだ」

 執筆者は、虐殺を止めたいとすること自体は「善」だと前提したうえで、感情的で短絡的な軍事介入に否定的な見解を示しています。
 こうした見方は、一面であたっていると思います。とくに紛争の現場で、感情的に判断し、行動して逆効果ということはしばしばあります。
 ですが、それでもあえて、現時点では「虐殺を止めるために、国際社会は今すぐに武力でアサド政権を粉砕すべし」というのが、私の考えです。この温度差は、おそらく当事者意識の差によるものと思います。
 どんな国の人でも、もしも自分の国で同じようなことが起きていたら、後のことはまた後で考えるとして、とにかく今起こっている殺戮を止めることを希望するでしょう。外国人がそう思わないのは、つまりは他人事だからにほかなりません。
 上記記事中、執筆者はホムスで死んだ米国人女性記者の反体制派寄りのスタンスについて、現場で目撃している人間としての自然な感情だとしていますが、問題は「感情」ではなく「当事者意識」なのだと思います。
 とはいえ、実際のところ世界中の人々にとって、シリアの出来事は他人事なので、それはしかたないと思います。ただ、私は比較的若い頃から海外を旅し、暮らし、それなりに各国の地元の人々と生活レベルでの交流があったので、むろん当事者ではありませんが、それでも皮膚感覚として「外国の人の話だから」というふうに感じません。ましてこれまでの取材活動で中東の人とは今でも交流がありますから、個人的にはむしろ近い存在です。単にそれだけのことですが。

 先日、ラジオに電話出演させていただいたことは当ブログでもご紹介しましたが、その際、パーソナリティの方から「海外に波及する最悪のシナリオ」について質問をいただきました。海外への波及ということでしたので、イスラエルやイランなどの中東情勢への影響についてお話しましたが、「最悪のシナリオ」を「海外への波及」というくくりで質問されたことに、一瞬たいへん戸惑いました。私の中では「最悪のシナリオ」は「このまま人々が虐殺され続けること」であったからです。パーソナリティの方はリスナーの目線に話題をキープするのが仕事であり、伝えるプロとしてこうした質問を選択したわけですが、この温度差も当事者意識の違いであって、それはしかたのないことなのでしょう。

 明日付で、同じJBPRESSにて私の「反アサド政権」全開の記事がアップされる予定です。上記フィナンシャル・タイムズ記事とぜひ併せてお読みいただければ幸いです。
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  1. 2012/03/01(木) 14:30:19|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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