ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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金正恩の妻?

 10日(火)に、TBS「ひるおび」でVTRコメントを採用していただきました。一部巷で話題になっていたネタですが、金正日の葬儀の映像に若い女性が写っているのですが、それが金正恩の妻ではないかという話でした。
 映像では、金正恩はじめファミリーや最高幹部が歩いて整列するシーンで、比較的背の高い若い女性(画質悪いのではっきりしませんが、20代かせいぜい30歳そこそこぐらいに見えます)が、入れ違いのように、後方からソデにはけていくシーンがあります。その際、歩いている張成沢の前を悠々と横切っているため、「そんなことができるのは金正恩の妻ぐらいしかいない」と一部で話題になっているわけです。
 テレビのコメントでは、「妻の可能性も高い」という部分しか使われませんでしたが、実際のところ、この映像だけからは断定はできません。映像ではその後、最前列に並ぶ最高幹部・ファミリーを写したカットもありますが、そこでは金正恩の実妹の金ヨジョンは写っていますが、この「謎の女」はいません。
 これだけではあくまで可能性の話しかできませんが、考えられるのは3つ。ひとつは金正恩の妻。ただ、仮に新婚の妻だったとしても、いきなり張成沢に威張れるということもないでしょうから、そこは謎です。日本でもそうですが、上下関係・年齢関係に厳しい北朝鮮社会では、相手が張成沢でなくとも一礼くらいはするのが普通です。なので、これについてはどういういうことかよくわかりません。
 あと、いくつかの韓国メディアで指摘されているのが、金正恩の秘書説。故・金正日の秘書だった金玉が後に後妻になったように、場合によっては最側近のような権威があるようですが、秘書が葬儀の席で最高幹部集団の間でうろうろするかというと、どうもあまり説得力のある説とも思えません。
 秘書よりは可能性があるのではないかと私が考えているのは、単なる葬儀セレモニーの案内スタッフ説です。これは韓国メディアでもあまり指摘されていないようですが、参列の幹部たちを案内し、最後の喪主登場時にさらりと消えたという動きから考えると、案外そんな単純な話だった可能性もあります。
 ただ、それだと前述したようにいまや政権ナンバー2と目される張成沢の前を一礼もせずに横切った行為は「大丈夫なのか?」という疑問が残ります。単なる偶然の不注意だったということでしょうか?

 北朝鮮のメディア映像の場合、いずれもその効果を綿密に狙って発信されますから、この「チラ見せ」は「妻のお披露目ではないのか?」との説もありますが、この映像だけからすると、そういうわけでもないように私は思います。
 謎の女性が一瞬写りこんでしまったのは、金正恩が登場するシーンで、これは外せなかったということではないかなと思います。この後の並んだ参列者のシーンには一切登場していませんが、もしもお披露目だったらそういうことはないでしょう。実態は、外せない重要なシーンに写ってしまったが、単に「べつに放送しても構わない」と判断されたということではないかと思います。
 
 今回、この謎の女性について「金正恩の妻」説が出てきたのには理由があります。拙ブログでもちょっと前に紹介したことがありますが、金正恩には「既婚・娘あり」説があるからです。
 この情報は、最初は昨年5月30日に韓国の「統一ニュース」が、訪朝した海外在住韓国人が北朝鮮幹部から聞いた噂として「2010年に正恩が結婚していた」と報じ、さらに昨年10月28日に「デイリーNK」が、その結婚相手についての伝聞情報を伝えました。あくまで未確認情報ですが、それによると、結婚はやはり2010年。金正恩の妻は、金正日が病に倒れて金正恩が内々に後継指名された後、その後見人となった張成沢が人選して紹介したとのこと。金日成総合大学を卒業し、博士課程で学んでいる研究者で、実家は清津。父親は清津市大学の教員、母親は清津市第一人民病院産婦人科科長と、単なる噂にしては妙にディティールまで具体的です。
 また、昨年11月1日には聯合ニュースが、「2010年、ほぼ同じ時期に金正恩に娘、金正哲に息子が生まれた。金正日は孫たちのためにドイツやフランスから最高級の粉ミルクやブランド物の子供服を取り寄せている」「金正恩は2010年9月、正式な後継発表となった朝鮮労働党代表者会に合わせて結婚した」と報じています。

 ただ、噂の出所はそれだけで、信憑性に関しては何とも判断できません。結婚や娘の話が北朝鮮幹部に広く出回っているのだとしたら、もう少し多方面から情報が出てくるような気もしますが、可能性としては大いにあり得る話ではあります。
 金正日の大病を受けて世襲プロセスを急ぐなか、結婚を急いだということは充分にあり得ます。とにかく金正恩の最大の弱点は「若すぎる」ということ。せめて妻子をもって「理想的な家庭の長」というイメージを作ることは、「3代目のお坊ちゃま」の印象を払拭し、「国民の父」を標榜する独裁者の基礎的なイメージ戦略です。独裁者だけでなく、世界中どこの政治リーダーも基本として使っている手ですね。
 例外は故・金正日でしたが、彼の場合、その父・金日成に認めてもらえないようなドロドロの愛の遍歴があり、その複雑な家庭の実態はあまり積極的に公開していませんでした。ちょっと特殊な例といっていいでしょう。
 今月8日、朝鮮中央テレビは金正恩の誕生日ということで、『白頭の先軍革命偉業をお受け継げになりまして』という記録映画を放映しましたが、そこで金正恩が実母・高英姫(故人)について話す場面を紹介しました。これまでほとんど北朝鮮メディアで言及されてこなかった高英姫の神格化作業がおそらくこれから本格化するでしょう。
 仮に金正恩が本当に既婚で、子供までいるのであれば、金正日追悼がひと段落し、金正恩神格化が本格化する流れのなかで、わりと早い段階で「理想的な父親」としての金正恩のアピールが行われるのではないかと考えます。

 なお、以前のエントリーでも冗談で書きましたが、「2010年9月結婚」で「2010年に娘誕生」であれば、計算上はデキ婚になります。ですが、北朝鮮の独裁者ともなれば、子供を作るのも任務みたいなところがあますし、その私生活の情報公開はきわめて戦略的に計算して行われるので、実際のところは、公式結婚と妊娠の順序とかはあまり重要ではないと思います。
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  1. 2012/01/12(木) 14:08:20|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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