ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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金正恩の伝説づくり

 昨日、TBS「ひるおび」にVTRコメント出演させていただきました。金正恩の伝説づくりに関して解説しました。
 金正恩については、2008年8月に脳卒中で倒れた金正日が、なんとか持ち直した直後の、おそらく同年10月頃に、張成沢(その間、実質的に権力代行していました)に正恩世襲の意思を伝えていたと思われます。張成沢はもともとは長男・正男の後見人的立場でしたが、金正日の命令は絶対ですから、正恩の後見人にスイッチしたようです。
 軍のほうは、2009年2月に張成沢と近い李英鎬を総参謀長に抜擢。上層部の人事も、李英鎬を中心とした正恩シフトに変えていきます。
 正恩のレジェンドですが、最初は荒唐無稽な話というよりは、軍を掌握するために「軍事の天才」ということが、非公式に軍・政権上層部に喧伝されました。
 で、金正恩は2010年に初めて公式に登場し、党中央軍事委員会副委員長になるわけですが(前日に急に大将にもなってます))、金正日はこの委員会を正恩世襲シフトの中核とします。同委員会は全19人。委員長は金正日、副委員長に金正恩と李英鎬、以下16人の委員。李英鎬含めてこの17人こそ、いわば「チーム金正恩」として、父・正日によって任命された面々といえます。
 彼らはとにかく金正恩「軍事の天才」レジェンドを作っていかなければならないわけですが、それにはとにかく実績が必要です。なんでもいいから実績を作り、将軍一同が「金正恩同志の卓越した指導力に感嘆」しなければなりません。
 ところが、ちょうどその頃は、同年3月の韓国哨戒艦撃沈から始まった米韓軍の報復演習が続いていて、このまま放置すると、若き「軍事の天才」のメンツが立たない状況に追い込まれていました。そこで綿密な計画のもとに実行されたのが同年11月の延坪島砲撃でした。もともと金正恩は、軍事のなかでも「砲撃の天才」と喧伝していたことも背景にあります。
 父・正日の作った正恩シフトのとおり、今後も党中央軍事委員会はチーム金正恩として、軍を取り仕切り、正恩を支え続けることになるかと思います。
 他方、国内の一般国民に向けて、これから正恩個人の超人的なレジェンドを創作する役目を負うのは、党書記局の宣伝扇動部というセクションです。葬列の上位に参加していた金己男という古株の幹部が担当書記ですが、なにぶん80代の高齢であるうえ、党務はいまや張成沢がかなり実務面を取り仕切っているので、おそらく張成沢が実質的な各企画の最終決定権を持っているのではないかと私は推測しています。
 ということで、今後は党宣伝扇動部が正恩レジェンドを創作していきます。これは彼らの職務であり、より大衆アピール度の高い創作をした幹部が出世しますから、これから部内では創作競争が始まるでしょう。
 ただ、祖父や父親の時代は、抗日戦争や朝鮮戦争がありましたから、いくらでも戦歴を偽造することが可能でした。それに比べると、28歳の正恩では、世代的にそういった背景がありません。せいぜいテロとか拉致とかですが、それらを正恩の実績とはできません。
 なので、おそらく「子供の頃から天才だった」「父・正日も舌を巻いた」というような話がメインになるでしょう。年齢からすれば、あとはおそらく「コンピューターの天才」ということも言い出しますね。すでに携帯電話普及などは金正恩の実績と喧伝されています。経済政策も、中国の援助あたりで行われたことも、すべて成果は金正恩の天才的指導とされます。汚職撲滅に関しても、すでに正恩が特命チーム「暴風軍団」を作って動いたことがありますが、とにかく少しでも成果あれば、正恩の「天才的な指導」によるものと喧伝されます。先人に比べると地味ですが、そうした実績アピール中心の伝説作りということになっていくでしょう。

(追記)
 告別式で霊柩車に並んで歩いた8人が、現時点の権力中枢とみられています。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」のサイトでも「金正恩時代を率いる党・軍主要人物」と説明されたということです。
 この8人は、党幹部が序列順に金正恩、張成沢、金己男、それに崔泰福・最高人民会議議長(国際担当党書記)。軍人が李英鎬、金永春・人民武力部長、金正覚・軍総政治局第1副局長、禹東則・国家安全保衛部第1副部長です。
 このうち、金己男と崔泰福はともに80代の党長老で、もうあまり政治の中枢でバリバリ働く年齢ではありません。いわば長老代表で、会社でいえば「最高顧問」みたいなものですね。張成沢はさしずめ3代目若社長に仕える創業家の入り婿の副社長といったところでしょう。
 また、人民武力部長の金永春は軍部の名目トップではありますが、総参謀長の後ろを歩いていたことからもわかるように、こちらも実力トップではなく、名目上のトップにすぎません。会社でいえば名誉会長みたいなものでしょうか。軍部を仕切るのは李英鎬(会社でいえば専務取締役兼経営戦略本部長みたいな感じ)だということが、この並びではっきり示されています。
 金正覚と禹東則はコワモテ代表ですね。金正覚は軍の思想統制部門のボス、禹東則は拙ブログ常連ですが、秘密警察のボスですね。会社でいえば取締役人事本部長、あるいは実力派の社長室長みたいなものでしょうか。
 これでわかるのは、金正恩体制は大方の予想通りに、張成沢=李英鎬で仕切っていくということです。それで言うことを聞かんヤツは金正覚と禹東則が始末するぞ!ということですね。
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  1. 2011/12/29(木) 11:46:21|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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