ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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「粉ミルクからセシウム」報道について

 ちょっと前に「印象操作」に関して拙ブログで言及しました。今回、印象操作というほどの話ではないですが、ちょっとしたことでも印象が変わるという例を見てみたいと思います。
 今日の主要紙の見出しです。以下はネット記事なので、本紙では表現が違っているかもしれませんが、少なくともネット記事上での報道姿勢ということで見てみます。
「粉ミルクにセシウム 明治40万缶交換」(東京)
「セシウム:明治の粉ミルクから検出 最大30ベクレル、埼玉で製造 40万缶交換」(毎日)
「明治の粉ミルクからセシウム 規制値は下回る 無償交換」(朝日)
「明治の粉ミルクからセシウム 規制値は下回る」(日経)
「明治の粉ミルクから微量セシウム…無償交換へ」(読売)
「粉ミルクからセシウム 専門家は『健康問題ない』『冷静な対応を』」(産経)

 同じニュースなのですが、上から扇動指数の高い順です。
「微量」ときっちりと書いたのが読売。日経と朝日も「規制値は下回る」ときちんと見出しで表示しています。規制値を大幅に下回っていますから、本来なら「規制値を大幅に下回る」と書いてほしかったですが、見出しは字数制限もありますから、それはしかたないでしょう。
 産経は、このニュースが扇動的に広まることを予想し、その予防線をきっちりと見出しに打ち出しています。このニュースは、消費者が過剰反応するのが誰にでもわかる事例ですから、報道姿勢としては、以上の4紙は合格としていいと思います。
 それに比べると、東京と毎日は、もう少しそうした点の配慮が必要だったのではないかなと言わざるをえません。毎日は数字をきっちりと表記していて、そこは間違いではないのですが、「最大30ベクレル」という表記は、知識のない一般読者に「それは大変だ!」との印象を与えます。同じことを報じていても、見出しでの「最大30ベクレル」(毎日)と「微量」(読売)の印象は全然違うわけです。 
 東京新聞は今や反原発では『赤旗』に迫る勢いですが、今回の見出しが意図的なものかどうかはわかりません。ただ、原発関連ではおそらく「たいしたことはない」という方向では書かないのではないかなという印象はあります。
 いずれにせよ、こういう場合は、たまたまどの新聞を購読するかで、ニュースの受け取り方に温度差が出ます。新聞はどこも左右の色がついていますから、そのあたりを勘案して読むのがベターです。今回の場合、前述したように私個人は4紙が合格と思いますが、読売、産経あたりが扇動派批判傾向なのはだいたい想像できるので、そうでない「朝日」がひとこと「規制値を下回る」と表記したのは評価すべきと考えます。それほど意図的なものでもなかったかもしれませんし、小さいことですが、重要なことだと思います。

(ところで、白血病患者急増ネタやら、東電福一所長の入院に関する陰謀論など、ネット上ではデマ情報があいかわらず凄まじいですね。SNSでまわってきたある情報では、被災地出身者が海外で講演し「プルトニウムが降った!」とか言っちゃってます。現場からの告発!とかで信憑性が増し、こうやってノイズ情報が拡散されていくのでしょうね)

 ところで、この粉ミルクは全部廃棄してしまうのでしょうね。もったいない話ですが、消費者は別に他社のでも構わないわけですから、それはこのメーカーの該当品はわざわざ選ばないでしょう。明治としては、製品全体に影響が出ないように、他に選択肢はなかったということでしょう。
 しかし、どんなに微量でも問題ということになると、他のメーカーも他人事ではないはずです。今後、こうした事例は続出することが予想されます。
 明治の粉ミルクは、廃棄するぐらいならソマリアあたりの飢餓地帯に送ってあげたほうがずっと有益だと思うのですが、そうすると今度は「汚染品をなんてことに!」と海外の新聞あたりで叩かれるのでしょうね。なんとか援助団体側からの要請とかいうかたちででも出来ないものでしょうか。

(蛇足ですが、前エントリーでニカラグア・ゲリラ取材時の写真をアップしましたが、別の機会に今度は政府軍に従軍取材したことがあります。超貧乏な左翼政権だったのですが、部隊の携帯食にやたらブルガリア産の肉の缶詰が大量に配られていました。援助物資ということでしたが、兵隊の間では「チェルノブイリの影響で売れなくなったものらしい」と囁かれていました。普通の住民はめったに肉など食べられないので、みんな大喜びでしたが) 

 ところで、今日のニュースでは、福島県民への東電の賠償額が大きく報じられていました。賠償に関しては、やたら過大な期待を煽る報道が続いていましたから、今後、あらゆる方向からの不満続出と、さらにはそれらに起因するバッシングが予想されます。

(追記)
 翌8日の朝刊で東京新聞が「粉ミルクのセシウム 被ばく線量ごくわずか」という記事を掲載しました。適切な措置だと思います。先入観から「原発関連ではおそらく『たいしたことはない』という方向では書かないのではないかなという印象はあります」と書いたことをお詫びします。


(追記2)
 福一原発の吉田前所長が食道がんであることを公表しました。被曝の影響であることは考えられません。
 そもそも所長が被曝起因の急性疾患に陥るような事態であれば、現場作業員は少なくとも数十人単位で重篤になっているはず。非公表というのであれば、それ以外の要因によるかなり深刻な疾患であることは明らかで、ご本人やご家族の気持ちを慮ってそっとしておくのが普通の神経だと思うのですが、この間の「病状」をめぐる部外者の騒ぎぶりは少し異常なのではないかと感じています。
 一日も早いご回復をお祈りします。
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  1. 2011/12/07(水) 08:20:58|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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