ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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追い詰められるシリア政権

 今週末、中東各地でいろいろ動きがありました。
 まず注目されたのはエジプトです。モスレム同砲団が主催したタハリール広場の5万人規模の反政府(現在の軍部主導の暫定政権に対する反対)デモに警察が介入し、死傷者が出ました。軍部は当然ながら軍部主導の新体制を画策していて、それに世俗派政治勢力もムバラク打倒で主導的役割を果たした民主派の若者たちも反発していますが、ここに来てもっとも組織力のあるモスレム同砲団がいっきにオモテ舞台に出てきた印象です。
 今後、いずれにせよ軍部の影響力は低下しますが、世俗派とイスラム勢力の軋轢が高まっていくことが予想されます。
 次にイエメンですが、昨日、デモ隊鎮圧にあたっていた軍の将兵多数が反政府に転じました。といっても、イエメンの場合はピープルズパワーのうねりというよりは、部族閥、軍閥の離反の要素が強く、結局はサーレハ派を含む武装勢力同士の内戦のような状態に進む可能性がきわめて高いといえます。サーレハ派は大統領の息子が最精鋭部隊の主流派を指揮していますので、かなり本格的な戦闘になると思われます。
 バハレーンでも反政府デモが再び活発化しています。バハレーンは革命まで進む状況には今のところはなっていませんが、「アラブの春」全体が再び活性化しつつあり、今後の動向が注目されます。
 リビアでは、カダフィの後継者だった次男のセイフイスラム・カダフィがリビア南部で逮捕されました。が、地元司令官が身柄のトリポリ移送を拒否しています。新政権での主導権争いを睨んだ駆け引きと思われます。リビアでは、大方の予想どおり、今後、主導権争いがますます激化していくことになりそうです。
 シリアでは、アラブ連盟の仲裁をめぐり、政府側・反政府側ともに政治的な駆け引きが活発化しています。アラブ連盟の提案をシリア政府が拒否して逆提案したものを、またアラブ連盟が却下したというなんだか無駄なやりとりが続いていますが、シリア政府はそうしてあくまで時間つぶし作戦の構え。他に手がないというのが実情でしょう。
 アサド政権はかなり追い詰められているようで、本日、アサド大統領のインタビューと、外相の記者会見が中継されました。大統領のインタビューはなぜか英紙『サンデー・タイムズ』でしたが、あくまで従来どおりの「私はシリアの安定のために働く。過激派から国民を守るのは責務」との強弁を繰り返していました。英紙の記者ならもっと突っ込んで欲しかったですが、独占取材ですから、まあしかたないでしょう。
(ところで、新聞も今は影像を撮影して、自分たちの紙面よりも先にテレビ局に配信するのですね。メディア状況の変化ということでも面白い現象です)
 外相の記者会見も同様で、厳しい質問は皆無。もっとも、独裁国で外相など何の意思決定権もないので、あまり重要な会見ではないですが。
 ちなみに、外相は「アラブ連盟の調査団をいつでも受け入れる」と断言していました。アラブ連盟側はたしか500人の調査団派遣を申し入れていましたが、シリア政府側は「40人まで」「過激派がいて危険なので、安全を確保できたところなら案内する」とか返答していましたね。いつまでこうした茶番が通用すると思っているのでしょうか。
 ただ、故サダム・フセインや故カダフィのように、開き直って「オレに逆らう奴は殺す!」と凄まないだけ、いちおう建前は大事にしているようです。
 反乱部隊の活動も活発化しているようで、先週はダマスカス近郊の空軍情報部の施設が攻撃されました。空軍情報部は、拙ブログでも以前に解説したことがありますが、アサド政権直結の有力な秘密警察のひとつです。そこが攻撃を受けたことは、アサド政権にかなり大きな衝撃を与えたものと思われます。
 また、ダマスカス郊外を中心に、離脱兵が急増していると、かなり多くの情報が出ています。こうした情報には当然、誇張がつきものですが、実際にそうした傾向にあることは事実だろうと私は推測しています。これは真偽不明の情報ですが、本日、前述した空軍情報部と、これもアサド政権の中枢の秘密警察である「政治治安局」からも離反グループが出たとの情報もあります。
 また、ダマスカス中心部のバース党本部にRPGが撃ち込まれたとのニュースも流れましたが、自由シリア軍および反体制派は、少なくとも自分たちではないと関与を否定しています。この事件自体が真偽不明で、単なるガセの可能性もありますし、あるいは「テロリストが暴れている」と盛んにアピールしているアサド政権側の自作自演の可能性もあります。
 ただ、前述したアサド大統領のインタビューでもそうでしたが、「過激派武装集団から国民を守るために軍・治安部隊が動かざるを得ない」とのタテマエを強弁するため、やたらと反政府側の活動を実態以上に誇張していますが、それが逆に「アサド側が追い詰められている」との雰囲気作りに繋がっています。
 それでも実際に殺したほうが勝ち・・・と考えているのかもしれませんが、弾圧を強化しても反体制派の活動を抑えることはもはや無理ですから、逆効果ではないかなと思いますね。あるいは、アサド大統領には本当にそんな報告が上がっていて、大統領自身がそれを信じている可能性もあります。周囲に担がれている単なる二代目なので、あながちあり得ない話ではないです。

(追記)
 上記したバース党ロケット砲攻撃事件に関し、いろいろ報道で情報が錯綜しているので、私が知るかぎりの情報を補足します。
▽シリア反体制派、与党本部にロケット弾攻撃 (日経新聞)
▽シリア政権党支部にロケット弾…離反兵組織声明(読売新聞)

 同事件に関しては、当初、事件の目撃情報がロイターやBBCで速報され、その後、自由シリア軍のダマスカス地区の部隊名での犯行声明が、自由シリア軍のフェイスブックに掲載されました。
 ところがその後、自由シリア軍の有力幹部のひとりが否定。さまざまな情報が政府側・反政府側双方で流れましたが、反政府側はいずれも関与を否定。さらに自由シリア軍のウォールからも同声明が削除され、そのうえ「真偽不明の情報に注意するように」との注意書が書き込まれました(ちなみに、自由シリア軍のウォールは一般フォロワーの書き込みはブロックされています)。
 その後、バース党本部自体、まったく無傷で平穏だとの目撃情報が相次ぎ、事件そのものが「ホントかな?」という状況になりました。
 最終的には、自由シリア軍の指揮官のアスアド大佐が自らユーチューブで声明を発表し、自由シリア軍の関与を否定しています。
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  1. 2011/11/21(月) 01:17:09|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

アラブ連盟に抵抗するアサド政権を支援する為にロシアの戦艦が数隻シリア領海に入った様です。国際社会に対する牽制の手段を見つける事にかけては目敏いと言うか...
http://www.haaretz.com/news/middle-east/report-russia-warships-to-enter-syria-waters-in-bid-to-stem-foreign-intervention-1.396359
  1. URL |
  2. 2011/11/21(月) 02:59:14 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

たしかにロシア海軍はシリアを失うとけっこう痛手ですね。
  1. URL |
  2. 2011/12/01(木) 08:35:45 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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