ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シリア政権のウソ

 恩赦と称して「五百数十人と釈放した」と一昨日発表したシリア政府ですが、その一昨日と昨日だけで、数千人を新たに一斉逮捕した模様です。あの政権のやることは、すべてこんな感じですね。
 アラブ連盟の調停案を受け入れ、武力弾圧中止を約束したシリアのアサド政権ですが、守るわけありません。アサド大統領はこれまでも、やるやる詐欺の常習犯で、「アラブの春」以前から民主化改革の約束を連発してきましたが、一度たりとも実行しようとしたことがありません。
 案の定、その後もますます弾圧を強化していて、全国で人々を殺害しています。アサド独裁政権とすれば、弾圧をやめれば反政府運動にたちまち攻守逆転され、あっという間に権力の座から放逐され、間違いなく逮捕・死刑の道が待っているので、ここで手を引くということは考えられません。
 問題は今後ですが、合意を反故にされたアラブ連盟は、それなりの厳しい外交措置をとるでしょう。しかし、アラブ連盟にはシリア情勢を動かす力はないので、おそらく再び国連安保理に舞台は移されることになると思います。
 アサド政権がアラブ連盟との合意を破っていることを、中東メディアも欧米メディアも大きく報じています。こうした国際報道の動向というのは非常に重要で、安保理を動かす可能性があります。前回はロシアと中国につぶされましたが、アラブ連盟との合意を破ったということで、今度はロシアも中国も露骨なアサド擁護はやりづらくなります。
 アサド大統領は、コワモテだった父親の前大統領に比べ、ソフトな物腰で、イギリス暮らし経験もあり、腐敗した長老将軍たちを引退に追い込み、経済的な開放政策も進めたことから、一時は「改革派」としてアラブ世界でそこそこ人気者でしたが、いまでは往年の故サダム・フセインなみの悪役になっています。が、おそらく本人だけがそれに気付いていないのでしょう。
 シリアへの国際社会の介入がリビアのときより鈍いことで、「シリアには石油がないからアメリカはどうでもいい」「イスラエル問題があるので、アメリカはホンネではアサド政権安定を望んでいる」というような見方もあるようですが、それが主ということではないと思います。シリアでも仮に軍が師団レベルで反乱し、本格的な内戦になっていたら、アラブ連盟の支持を条件に、リビアのような早期のNATO介入もあり得たと私は見ています。

 介入には大義名分が必要で、反体制派が一時は全土を席捲する勢いだったリビアと、国内に反体制派の拠点すらないシリアでは、そこに大きな違いがあります。政権が全土を強権で掌握しているシリアでは、そこに介入することは内政干渉の構図になってしまい、それがロシアや中国にアサド擁護の口実を与える隙になりました。情報も統制され、反政府デモを武装集団とする偽情報でも、ロシアは当然わかっていたと思いますが、国際メディアが現地で検証できないのをいいことに、ロシアの口実に使われました。
 リビアのときは、人道上の著しい非道をカダフィが行ったこと、それなりに国内に基盤を確立した反体制政治組織から干渉の要請があったこと、そしてアラブ連盟が飛行禁止措置に賛成したことなど、ロシアや中国には反対の口実がありませんでした。
 
 今後、シリアでも国際的なアサド政権包囲網がますます強化されますが、それでも反体制派の一部が期待するようなNATOの軍事介入は、現状ではそれほど期待できないのではないかと思います。アサド政権軍はまだまだ磐石であり、NATO側もそもそも地上軍部隊の進攻といった本格的な軍事行動をとれる状況にありません。リビアのときも、空爆には参加しましたが、地上部隊の戦闘は反体制軍が担いました。
 シリアの場合は、反体制派の地上軍事力がほとんど泡沫レベルの非力さなので、内戦化すらも難しいと思われます。なお、武装闘争の是非についてはシリア反体制派の中でも意見が割れています。
 国際社会の圧力→弾圧停止→国際社会監視の公正な選挙→体制変革、という軟着陸がベストの流れですが、弾圧停止がこのまま反故にされることになる公算が大きいので、その後の展開はまだ読めません。
 非暴力闘争を掲げてきた国民評議会のガリユーン代表は、国際圧力に期待を寄せていて、さらに犠牲者を生む一方のデモ活動を控えるように初めて国民に訴えました。が、反体制派内も闘争路線をめぐっては意見が割れています。
 反体制派の主流も、アサド政権によって大量虐殺が行われる可能性が高い内戦化までは望んでいない人が多いので、当面、アラブ連盟との約束不履行を突破口に、国際的な外堀を埋めていくことになろうかと思います。現在、アサド打倒の大義名分を国際的に積み上げるための手続きが行われているような状況ですが、問題はその間も多くの国民が間違いなく殺害され続けることです。
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  1. 2011/11/07(月) 09:19:01|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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