ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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正常性バイアス・愛他行動・同調バイアス

 昨日の深夜、NHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」再放送を見ました。オリジナルの放送時に御覧になった方も多いと思いますが、NHK取材班は地震当時の被災地の人々の動きを詳細に検証し、分析を行っています。たいへんな労作といえます。
 そこで浮き彫りになったのは、人々の多くが迫り来る危機を認識せず、危機回避行動に出なかったという事実でした。番組では、その行動の要因に、3つの心理作用を提示しています。
「正常性バイアス」
「愛他行動」
「同調バイアス」
です。
 正常性バイアスは、突発的事態に際して、正常性を保とうとする心理状態です。これはいわゆる「冷静」というのとはちょっと違い、ストレス回避のための心理作用です。
 愛他行動は、危機に際して自身の危機回避を最優先せず、他者を救済しようという行動に出ることを指します。立派な行動ではありますが、これも突発的事態においては、ある種のストレス回避の心理作用になります。
 同調バイアスは言葉どおりです。周囲と同調することで安心を得ようとするストレス回避作用ですね。
 被災地では地震発生後、多くの方が上記の心理作用を受け、津波に対する適切な避難に失敗し、犠牲になっています。ただ、これらは突発的事態にはどんな人間も捉われ得る心理作用であり、「意識」していないと誰もが回避できないものだと思います。
 拙ブログで何度か関連のエントリーを書いてきましたが、心理学でいうところの「認知バイアス」というのは、インテリジェンス分析の最大の難物です。それを完全に回避するのは、まず現実的に不可能だといえますが、軽減するためには、少なくともそうしたバイアスの存在を「意識」することが重要です。
 上記の各バイアスについてネットでググると、詳しい情報がいろいろありました。なかでも、防災・危機管理アドバイザーの山本武彦氏のサイトが、わかりやすく解説されています。是非ご一読をお薦めします。(→こちら)

 内外の紛争・災害・事件などをそこそこ取材してきた実感から言うと、日本人は他国の人に比べると、パニックになることが非常に少ないことは事実だろうと思います。また、少なくとも私の周囲の在日外国人の多くが、同様の指摘をしています。「落ち着いている」というと美点ですが、それは同時に「危機意識の欠如」であり、「非常時の反射神経が鈍い」ということにも繋がります。
 原発の水素爆発の際も、報道関係者も含めて在日外国人の多くが、ちょっと日本人には理解できないパニックを起こしていました。彼らも人間ですから、「正常性バイアス」「愛他行動」「同調バイアス」の心理作用を受けるはずですが、それは日本人よりずっと小さなものだったと考えられます。
 というか、むしろ日本人のほうこそ珍しいわけですが、それはおそらく日本社会の同調性、集団行動経験値、社会・他者に対する信頼度とその裏返しのお任せ受身主義などなど、さまざまな日本社会の特徴が関わっているのだと思います。
 緊急時の行動・思考停止もパニック化も、どちらも問題だと考えるべきでしょう。「冷静さ」は情報分析と行動には非常に重要ですが、上記のバイアスの存在を自覚することで、より適切な判断・行動ができる可能性が高まるということですね。言うは易し、ですが。
 おそらくいちばん対処が難しいのは「愛他行動」でしょうね。自分に出来る範囲を見極めるということに尽きますが、その見極めこそが難しいわけです。自分と周囲の人間の生存の成否を分ける判断になりますが、そんな境界線はまず非常時には認識できません。
 とにかく自分だけ助かろうと全力を尽くせられれば問題ないのですが、なかなかそれも難しいでしょう。各人がどこまで適切な判断・行動ができるか・・・・非常時にならないとわかりません。

(追記)
 ただ、考えてみれば、上記のバイアスに陥るのも、非常時に対応できない心理ということでは、パニックと同じともいえます。
 そこで重要なことは、上記にリンクした山本武彦氏の解説にあるように、突発的な危機に際し、「平常」から「非常」へ、「通常」から「異常」へと瞬時に意識を切り替えることだろうと思います。それで危機を現実のものとして認識し、なおかつパニックに陥らずに冷静さを保つという離れワザが求められるわけですね。
 しかし、どんな人でも、予想外の突発的事態で多少のパニックに陥る(上記の各種バイアスに捉われることも含みます)ことは避けられないと思います。それに備える最善の方法は、常日頃から「非常」「異常」に慣れることでしょうが、通常の生活ではなかなかそう頻繁に非常事態に陥る機会はないですね。
 ですから、やはりさまざまな危機を想定し、対処訓練を積むということが必要でしょう。訓練はあくまで訓練にすぎませんが、それでも「さまざまな危機を想定」する経験自体が、いざというときに役立つものと期待されます。結局、ありきたりの結論になってしまいましたが。
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  1. 2011/10/13(木) 11:21:24|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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