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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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イラン革命防衛隊「アル・クドス(アル・クッズ)部隊」とは

イラン特殊部隊員、駐米サウジ大使暗殺を計画か10月12日 読売新聞
駐米サウジ大使暗殺企てた疑い 米、イラン系米国人逮捕朝日新聞
米政府、イランによる駐米サウジ大使暗殺計画を阻止CNN日本語サイト
 まるで『24』みたいなテロ阻止事件です。
 アメリカのホルダー司法長官が11日、「イランによる駐米サウジアラビア大使の暗殺計画を阻止」し、「容疑者2人をニューヨーク連邦地裁に起訴した」と発表しました。黒幕は、イラン革命防衛隊の特殊工作部隊として有名な「クドス部隊」ということです。

(報道では「クッズ部隊」とも表記されていますが、同じものです。[Quds]とは聖地エルサレムのことで、正式には「クドス」、口語では慣習的に「クッズ」と発音されます。欧米の研究者の間では主に「Quds Force]=クドス部隊と表記されますが、英語報道ではしばしば「Quds Brigade」とも表記されるため、日本の報道ではときに「クッズ旅団」「クドス旅団」と表記されます。が、軍隊組織であるイラン革命防衛隊のなかでは、部隊構成上のいわゆる「旅団」単位とは別種の特殊工作部隊なので、私は「クドス部隊」と表記しています)

 上記の各報道によると、そもそもの事件の発端は、米国に帰化したイラン人のマンソル・アルバブシアル容疑者(56)が、メキシコで麻薬カルテルの構成員を名乗る人物と接触し、サウジのアデル・ジュベイル駐米大使殺害を依頼したことだったとのこと。というのも、この麻薬組織メンバーというのが、じつはアメリカ麻薬取締局(DEA)の協力者だったからです。
 そこでFBIが捜査に着手。この麻薬組織メンバーに接触を継続させて情報を収集し、アルバブシアルがクドス部隊の正規工作員であるゴラム・シャクリ容疑者の指示で、今年春から米国内でのテロを計画していたことが判明したとのことです。
 DEAの協力者はこの間、何度もアルバブシアルと話し合い、大使が頻繁に訪れるレストランの爆破などが検討されていました。また、その他にも、、ワシントンやアルゼンチン・ブエノスアイレスでもイスラエル、サウジ両大使館を攻撃する計画が検討されていたともいいます。
 駐米サウジ大使暗殺に関しては、DEA協力者は報酬として150万ドルを要求。実際に手付金として10万ドルが8月にFBIの偽装口座に入金されています。
 アルバブシアルは9月にFBIに逮捕されましたが、クドス部隊のシャクリは所在不明のままの起訴になります。

 クドス部隊の関与というのは、実際にDEA協力者に接触したアルバブシアルの情報だけのようですが、10万ドルを支払っている事実からみても、信憑性は非常に高いといえます。米司法省もこの起訴には、かなり自信を持っている様子です。イラン革命防衛隊がなぜ今の時点で、そんなテロを企図したのかはよくわかりませんが。
 
 クドス部隊は、イラン最高指導者アリ・ハメネイに直結する秘密工作部隊で、実質的な国際テロ実行部隊です。イランには他にも大統領府情報部や情報省隷下機関などいくつかの工作機関があると思われますが、クドス部隊は高度に訓練されたテロ実行能力が突出しています。
 もともとは80年代初期のイラン=イラク戦争の最中に編成された特殊部隊でしたが、イラン指導部の直属の精鋭という立場から徐々に秘密工作担当にシフトし、対レバノン工作(ヒズボラを支援)、対イラク工作(クルド民兵を支援)、対アフガニスタン工作(アフマド・シャー・マスードのタジク人部隊を支援)、対ボスニア工作(イスラム教徒軍を支援)などに従事。その他にも、国内の秘密訓練施設で外国のイスラム系テロ組織メンバーの軍事訓練も担当しました。現在も、とくにレバノンのヒズボラの国際テロ部門を事実上指揮しているほか、各国にテロ人脈ネットワークを広げていると目されます。
 テロ対象は主に、外国で活動する反体制派イラン人および、イスラエル、アメリカ、イギリスなどの関連施設や権益などとなっています。ヒズボラの故イマド・ムグニヤの一派を傭兵として使ったテロを、広く世界中で実行してきた過去があります。
 現在の指揮官はカッセム・スレイマニ准将。要員数は数千人規模ともいわれていますが、実態は最高度の機密で、よくわかっていません。各種情報を総合すると、私はおそらく中心的な活動要員は1000人以下ではないかと推定しています。
 いずれにせよ、イラン最高指導部直属の工作機関で、世界のイスラム過激派とも繋がるクドス部隊は、アメリカCIAにとっては、アルカイダに匹敵する「最大の標的」でもあります。イスラエルのモサドにとっても「最大の敵」となっています。
 今回、狙われたのはサウジの大使ですが、中東の主導権をめぐってサウジ総合情報局とも水面下の激しいバトルも、かなり以前から続いています。
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  1. 2011/10/12(水) 12:41:00|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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