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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ハッカニ・ネットワークとISI

 9月13日にアフガニスタンの首都カブールにあるアメリカ大使館が武装グループの攻撃を受けましたが、「犯行グループはパキスタン情報機関の支援を受けていた」とアメリカ側が断定したため、アメリカとパキスタンが険悪な状況になっています。
 この事件の犯行グループについて、9月17日、マンター駐パキスタン大使は「パキスタン国内に拠点を置く武装勢力『ハッカニ・ネットワーク』の犯行だ」「パキスタン政府との結びつきを示す証拠がある」と断言しました。
 また、22日にはマレン米統合参謀本部議長が上院軍事委員会で「ハッカニ・ネットワークはパキスタン軍統合情報局(ISI)の支援を受けてカブール米大使館を襲撃した」「ハッカニ・ネットワークはISIの事実上の戦闘部隊である」とも断言しました。
 要するに、アメリカはISIが対米テロに関与していると言っているわけですが、これに対し、パキスタン政府は完全否定し、アメリカ側の態度に猛反発しています。

 ハッカニ・ネットワークだけではなく、タリバン本隊もアルカイダも、もともとISIとは非常に密接な関係があり、ISIの一部が今でも支援しているのではないかという疑惑は根強く囁かれていました。
 ISIとイスラム過激派ネットワークとの水面下の関係というのは、テロ問題研究者にとって最大の謎であり、私もずっとそのことに関しては海外の報道や研究機関報告などをウォッチしているのですが、その実際のところはわかりません。
 決定的な証拠といえるほどのものがないので、かなり推測に頼ざらるを得ないのが現状ですが、私の見方では、ISIが組織としてイスラム過激派ネットワークを支援しているというよりは、ISIの一部が独自に人脈を維持しているといったところなのではないかなと考えています。
 ISIというのは、非常に特殊な組織です。パキスタン軍はもともと、かのムハマド・ジアウルハク政権時にイスラム原理主義勢力「イスラム協会」の人脈が浸透し、軍内に一大勢力を築いていました。その中核勢力がISI内に残っていて、独自の怪しげなネットワークを作っている形跡があります。
 アフガニスタンやインド、中央アジアで暴れまわるイスラム・テロ組織のほとんどは、ISIともともと密接な関係にあった人脈を基盤にしています。ただ、その部分はパキスタン軍内でも闇の部分で、実際のところはほとんど判明していません。

 ところで、今回、カブール米国大使館攻撃を行ったとされる「ハッカニ・ネットワーク」という組織について解説してみます。
 ハッカニ・ネットワークはタリバン系のアフガン武装勢力で、創設者はジャララディン・ハッカニという人物です。
 ハッカニはもともと80年代の対ソ戦時代の有力ムジャヒディン・ゲリラ組織「イスラム党ハリス派」の幹部で、ソ連軍撤退後、91年にいちはやく東部の町ホーストを支配下に置き、ムジャヒディン政権で一大勢力を築いた軍閥のひとりでした。ムジャヒディン時代は、CIAともっとも親密だったゲリラ司令官のひとりで、パキスタンISIやサウジアラビア系財団、アルカイダなどの外国人義勇兵人脈とも非常に密接な関係にあったといわれています。
 その後、ISIの支援によってアフガンでタリバンが台頭すると、ISIと連携するハッカニもタリバンに参加します。タリバンの初期メンバーの多くはイスラム党ハリス派出身でしたが、ハッカニ自身はタリバンが首都攻略した頃に合流し、タリバン政権のカブール北方軍事司令官に就任。主にアハマド・シャー・マスード率いるタジク人部隊などと戦っています。
 また、タリバン政権下でパクティア県知事、国境部族問題担当相なども歴任しています。2001年の9・11テロ後のアフガン戦争では、タリバンの軍事司令官となり、米軍と戦っています。
 その後、ハッカニ・ネットワークは、息子のシラジュディン・ハッカニが事実上の軍事司令官となっています。ムジャヒディン時代からパキスタン部族地域の北ワジリスタンを後方拠点としていて、現在も北ワジリスタンを拠点としています。
 ハッカニ・ネットワークはタリバン系のゲリラ組織としては最大勢力のひとつで、少なくとも数千人の兵力があるとみられています。現在もアルカイダと緊密な関係にありますが、主に捕虜の証言により、CIAは、ハッカニ・ネットワークとISIの一部がその後もずっと関係を続けていると判断しています。
 幹部はその他に、以下がいます。
▽バララディン・ハッカニ(シラジュディン・ハッカニの弟)
▽マ二ク・ハッカニ
▽ナシルディン・ハッカニ
▽サンジーン・ザドラン(シラジュディン・ハッカニの副官でパクティア県司令官)
▽マリ・カーン(アフガン内担当幹部軍事指揮官)

 ハッカニ・ネットワークの過去の主な作戦(容疑含む)は以下のとおり。
▽2008年1月14日、カブールのセレナ・ホテル攻撃
▽同年3月、イギリス人ジャーナリストのシーン・ランガン誘拐
▽同年4月27日、カルザイ大統領暗殺未遂
▽同年7月7日、カブールのインド大使館で車両自爆テロ
▽同年11月10日、ニューヨークタイムズのデビッド・ロード記者拉致
▽2010年5月18日、カブール爆弾テロ
▽2011年2月19日、カブール銀行ジャララバード支店で自爆テロ
▽同年6月28日、カブールのインターコンチネンタル・ホテル襲撃のサポート(主犯はタリバン)
▽同年9月10日、ワルダック県のサイエド・アバド基地の前でのトラック爆弾テロ。

 ポスト・アルカイダとして私が最有力視しているパキスタン・イスラム運動に次ぐ、要注意グループといえますが、今のところその活動範囲はパキスタン部族地域とアフガニスタン東部に留まっていて、世界各地でテロ工作という感じではないようです。
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  1. 2011/09/25(日) 17:31:50|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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