ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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元ビンラディン側近の証言

 TBSで今日放送された「CBSドキュメント」で興味深いレポートがあった。アブ・ジャンダルと名乗る元ビンラディン側近のインタビューである。
 番組の途中から見たので、調べてみないとこの人物の経歴はわからないが、ビンラディンのボディガードをしていた人物ということで、その後、2000年にビンラディンにイエメンに派遣されたという。
 その任務はビンラディンの4番目の嫁探し。これは、タリバンに追放された場合に備え、イエメンに新たな拠点を確保するための政略結婚だったとのこと。アブ・ジャンダルはその任務を遂行し、ビンラディンは17歳のイエメン人の娘を嫁に迎えたという。
 ここからちょっと面白いのだが、ちょうどその頃、イエメンでは米駆逐艦コールのテロ事件が発生する。アブ・ジャンダルがそれにどう関わったか不明だが、イエメン当局の捜査により逮捕された。2年間(だったと思うが)拘束された後、「イエメン国内でテロ活動をしない」「国外に出ない」との条件で釈放される。ちなみに、拘束中に9・11テロが発生し、その数日後に彼は米FBI捜査官の尋問を受けている。
 その後、彼は現在もイエメン国内で自由の身として生活している。寝返ったわけではなく、今でもビンラディンへの忠誠心は、少なくともこのインタビューではバリバリに示している。
 アブ・ジャンダルの証言で注目されるのは、98年の在アフリカ米国大使館連続爆弾テロの後にアメリカが行なったアフガン&スーダンへのトマホーク爆撃時のエピソードである。
 米大使館テロの後、ビンラディンは米軍の報復を予想し、拠点としていたアルカイダ軍事キャンプから極秘裏に移動した。その際、カブールとホーストという町への街道の分岐点で、ビンラディンは側近たちに「どっちに向かうのがいいか?」と訊ね、皆が「カブールがいい」と言うとそれに従った。ところが、「ビンラディンがホーストに向かったらしい」という情報がCIAに入っていて、それでトマホークはホーストのアルカイダ拠点を爆撃。結果、ビンラディンは生き延びたという顛末だったとのことだ。
 なお、アブ・ジャンダルによると、このとき[ビンラディンがホーストに向かった」との情報をCIAに売ったのは、アフガニスタン人のコックだったということだが、ビンラディンはこのコックを殺すどころか、カネを与えて家に戻したという。これで「やっぱりビンラディン師はすごい人物だ」ということになったらしい。
 また、アブ・ジャンダルは、かねてより言われてきた「ビンラディンは人工透析を必要とするほど腎臓病を病んでいる」との説も完全否定した。彼が言うには、ビンラディンはかつての対ソ連軍戦の際に化学兵器で喉をやられ、その後遺症が若干ある程度だということである。
 また、アブ・ジャンダルは現在のビンラディンの所在地について、「パキスタン領内ではなく、アフガン内だ」と断言した。なぜなら、「パキスタンの部族は情報をカネで売るからだ」ということである。
 もっとも、これらの証言をどう評価するかというのは、なかなか難しい。これだけビンラディンに近かった人物がマスコミに登場するというのは珍しいことなので、注目に値することは間違いないが、コメントにはCBSの演出も施されているし、アブ・ジャンダル自身の現在置かれている状況の影響もあるだろう。ある程度〝引いて〟捉えることは必要だろうと思う。
 さて、この番組では、アブ・ジャンダルとともにもう1人、重要な人物が登場していた。元CIAテロ対策センターのビンラディン班長だったマイケル・ショワーである。現役時代に匿名で『帝国の傲慢』という本を書き、後にCIAを退職してか実名でブッシュ政権のテロ対策を批判している
人物だ。
 番組のなかでのショワーの登場のシーンを見逃したので、どういう立場なのかはっきりとはわからないが(調べてないので)、その後の番組内のナレーションに「今では私たちの同僚となったショワー氏は~」というものがあったので、彼はCBSのブレーンになったということなのだろうと思う。彼はアブ・ジャンダルの情報源としての価値に太鼓判を押す役割を番組内で果たしていたが、(番組冒頭を見逃したのでわからないが)もしかしたら彼がアブ・ジャンダルのネタをCBSに持ち込んだのかも知れない。
追記。
 マイケル・ショワーが太鼓判を押す以上、アブ・ジャンダルが実際にビンラディン側近だった可能性はかなり高いように思う。では、彼はどうしてCBSのインタビューに応じたのか?
 番組内で、彼は現在無職で、3人の息子を私学で育てている様が紹介されている。取材謝礼は、インタビューに応じた大きな理由のひとつだったのではないかと思う。
 だが、アルカイダのシンパも多いイエメンに住む彼が、アルカイダをボロクソに言うようなコメントを米TV局のインタビューで語れるはずはない。アブ・ジャンダルの語るビンディンのエピソードはともかく、現在も揺ぎないビンラディンへの忠誠心は、どこまで本心かはわからない。
 番組の最後に、彼は「自分の息子には、自分にできなかったことをやりとげてほしい」と語った。記者が「聖戦で死ぬことか」と問い返すと、「神のために死ぬことを望む」と断言した。
 このコメントに、TBS番組の司会者の方は「ちょっとショックですね」「こんなに考えがわれわれと違う人もいるんですね」などとコメントしていたが、筆者は、とくにこの部分はアブ・ジャンダルの本心ではないと確信する。こうした質問をされたとき、彼のような立場に置かれた人間が、「息子には聖戦なんてもので死んでほしくない」などと言えるはずもないからだ。
 もしもアブ・ジャンダルが今でも聖戦がなにより優先すると考えるなら、どんな手を使ってでもアフガン=パキスタンに渡るだろう。イエメンからの密航ルートなどその気になればいくらでもある。
 それをしていないということは、彼は事実上、足抜けをしたことを意味する。自分と家族を守り、生活を続けることが、このような人間にとっては厳しい戦いとなることは容易に想像がつく。
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  1. 2006/07/13(木) 03:41:53|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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