この夏、レバノンに行ったことは拙ブログでご紹介しましたが、レバノンの都市部(ベイルートだけではありません)では、すでに人々の生活も都市化が進んでいて、いわゆる中産階級が非常に増えているように感じました。
他方、中国でも、とんでもない富裕層とそうでない人々との格差は広がっていますが、総じて中産階級化が急速に進んでいます。韓国もかつて四半世紀前くらいに私がちょくちょく旅していた頃は、まだまだ慎ましい生活をしている人が多かったものですが、いまや日本とそんなに変わらない中産階級層の国になっています。東欧、東南アジア、中南米などなど、かつては貧しかった国々でも、着実に中産階級が成長しています。
先月だったか先々月だったか、テレ東の夜の経済ニュースでコロンビアの首都ボゴタが急速に都市化している様子をレポートしていました。町の中心には高級ブランド・ショップすら軒を並べています。あのボゴタが・・・と感慨深いものがあります。
なぜこんなことに言及するのかというと、リビアのニュースを見ていて、なんだかずいぶんイメージと違う印象を持ったからです。私が中東によく出没していた80~90年代のイメージでは、リビアといえば遊牧民の文化が色濃く残っていて、部族割拠の国という印象がありました。
ですが、報道で見るかぎり、今でも部族社会は残っているようですが、少なくとも都市部ではかなり今風な雰囲気になってきているように見受けます。数日前も、某CS放送の解説番組に在日リビア人留学生団体の人が出ていたのを拝見したのですが、少なくともトリポリ出身で日本に留学できるようなポジションのこの青年からすると、部族などまったく関係ないとのこと。リビア全土がそうだということはないと思いますが、都市部ではそれなりに都市化・中産階級化が進んでいるのではないかなと推測しました。
都市化・中産階級化というのは、全部ではありませんが、概して「欧米化」とほとんど同じです。それは人類社会の必然の流れであり、大筋では「進歩」といえるものではないかなと私は考えています。
いずれにせよ、人間の社会は、時間の経過とともに変質していきます。10年前、5年前の感覚で見立てると、現実を見誤る可能性が大いにあるとみるべきでしょう。私などは15~25年前くらいに世界各地を比較的広範囲に旅行したことがあるので、先入観に要警戒です。
こうしたことを、シリア情勢の情報をウォッチしているときにも感じます。
シリアはアサド家およびその取り巻きによる超独裁体制です。アサド家は国民の約12%といわれる少数宗派=イスラム教アラウィ派の出身で、同国ではアラウィ派が多数派のスンニ派住民たちを支配している構図がもともとあったわけですが、どうも私の見るところ、今ではかつてほど宗派対立構造にはなっていないのではないかなと思うのです。
たとえば、ひとつにはバース党、軍、秘密警察の上層部に、今ではスンニ派もかなりいるということがあります。スンニ派でも、アサド家やその親戚、側近などに個人的に近ければ、そうした権力構造の上層部に食い込み、利権の甘い汁を吸えるようです。たしかに権力機構の上層部は今でもアラウィ派が多いのは事実だと思いますが、必ずしもアラウィ派独占ということではなくなってきています。
(たとえば、ハフェズ・アサド前大統領の盟友だったトラス元国防相はスンニ派でしたが、その息子は貿易利権でかなりの利益を手にしています。スンニ派でも、中国で言うところの「太子党」はいるわけです)
また、ラタキアをはじめ、西部の海岸地方の町では、アラウィ派住民からも激しい反体制デモが発生しているということがあります。少数宗派といっても、国民の12%もいれば、そのなかにはアサド系もいれば、そのインナー・サークルに入れないアラウィ派もたくさんいるわけです。
シリアでも都市化・中産階級化が進んでいますが、とくに若い世代はあまり「何派」とか気にしていないと思います。あえて分けるとすれば、「アサド独裁体制でうまくやっている派」と「そうでもない派」という感じでしょうか。
反体制派の中でも、モスレム同砲団などの宗教グループの存在感は予想外に低いように見えます。それはスンニ派自体は多いわけですから、デルゾールのモスクが砲撃されたり、ダマスカスのシェイフが襲撃されたりすれば信者たちの猛反発を呼ぶわけですが、かといって宗教系のグループの発言力が強まっているというようには見えません。
誰かが(CIAなど?)意図的にそう誘導している可能性もありますが、シリアでも都市化・中産階級化された若者層が、反体制運動の中心になっているように見えます。
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- 2011/09/04(日) 14:45:17|
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