シリア中部の検事総長が辞任か、「デモ弾圧に抗議」と動画で ロイター 9月1日
ハマの検事長が、「アサド政権による反政府デモ弾圧に抗議するために辞任した」との声明を、ユーチューブで発表しました。
ビデオ声明では、「7月30日、拘束中のデモ参加者や人権活動家ら72人を治安部隊が処刑」「翌31日、軍が戦車を投入し、少なくとも420人を殺害」「アサド政権が、犠牲者は武装集団によって殺害されたとする偽の報告書を作成するよう検事局に命令」したことなども指摘しています。
アサド政権側は、「彼は武装集団に誘拐され、脅されて話している」としていますが、検事総長は「そんなことはない」と明言。「出国後に正式に声明を発表する」としているで、そのときに明らかになるのでしょうが、自発的反逆であれば、過去最高レベルの高官ということになります。
民衆側はもはやアサド退陣まで反体制デモを止めませんし、アサド政権は自ら辞任することもないでしょう。流血の弾圧がさらに激化していくことは避けられない状況ですが、リビアと違って政権側が暴力装置を独占しているので、最終的には政権側の幹部層や中間層の離反を待つしか道はなさそうです。こうした政権幹部高官の離反が相次げばいいのですが、政権側は当然、幹部たちの家族を事実上の人質にとるなどのカウンター措置をとっていますから、なかなか難しいのが現状です。
側面からふたつの工作が必要になってきています。ひとつは、国連安保理やアラブ連盟などを動かし、国際社会でアサド政権を孤立化させることです。孤立したからといってアサドが辞任するわけではありませんが、政権幹部・中間層の謀反を促す「空気」づくりになると思います。
それと、欧米インテリジェンスによる幹部離脱の誘導工作も、この局面では非常に重要です。インテリジェンスの秘密工作が実際にどう行なわれているのかを知る術はありませんが、リビアでの反カダフィ工作ではそれなりの動きがあったものとみられます。シリアでも当然、何らかの工作は試みられていると思われますが、寝返り工作の成否は決定的に重要になるでしょう。
ところで、ようやく最近になって雑誌やテレビでシリア情勢について紹介させていただく機会を何度かいただいたわけですが、うまく伝えることの難しさを感じています。とにかくシリアなどという国自体が、日本からあまりにも遠く、馴染みがまったくないのですね。
中東といっても、なんとなくイメージが湧くのは、エジプト、イスラエル、パレスチナ、イラン、イラク、サウジアラビア、ドバイくらいまででしょうか。シリア、リビア、レバノン、バーレーン、イエメン、ヨルダン、オマーン、カタール、スーダンなどとなれば、それらの国の個々の違いなど、普通の人ならほとんど興味もないことではないかと思います。
シリアに関しては、かなり乱暴な比喩ではありますけれども、「北朝鮮みたいな国」と解説すると、いちばんわかっていただけます。で、「北朝鮮で金正日に反対するデモが起きたようなもの」と言えば、いかに革命的な事態が進行しているのかイメージしていただきやすいようです。
私は、中東で起きている「アラブの春」は、20年前の冷戦終結に次ぐ現代史上の重要事案だと考えています。冷戦期は当然、東西両陣営の角逐が世界最大の懸案事項でしたが、冷戦終結後の世界の火種は、いわゆる「不安定の弧」に集中しています。その本丸が中東です。90年代以降の国際政治は、中東を軸に動いてきたわけで、中東が民主化されるということは、世界が変わることを意味するのではないかと私は考えています。
かつてのソ連・東欧では、人々に事実を伝えるメディアが登場し、人々が自由に発言できる環境が誕生したことで、社会主義イデオロギーを建前とした強権独裁体制が崩壊しました。中東でも同じようなことが起きています。シリアがひっくり返れば、中東情勢はもちろん、アラブの人々の「空気」も激変すると思います。
旧ユーゴスラビアやチェチェンなどのように、戦争を含む混乱が過渡期で発生する可能性は当然ありますが、大きな流れは止まらないのではないかと思いますし、私はそれは人類社会の大きな進歩なんだろうと考えています。
なので、私自身の個人的考えは、非常に評判の悪い「ネオコン」に比較的近かったするのですが、そうした私見も含めて、うまく説明するのはなかなか難しいですね。
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- 2011/09/02(金) 12:57:27|
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