ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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前原誠司氏の国防戦略(後編)

 繰り返し書きますが、以下は6年も前のインタビューです。技術面の話などは前提が変わっていることもあります。また、当然ながら内外の政治状況は大きく変動しています。
 けれども、前原氏の国防戦略思想については、まとまった文章になっているものがあまり見当たらないので、ここに再録しておこうというわけです。

(タイトル)
統合情報委員会、国家安全保障会議、危機管理庁
「3本柱」で日本を守れ!

安全保障体制の改革を
前原誠司・民主党「次の内閣」防衛庁長官インタビュー②

穴だらけの今の国家安全保障体制では日本を守れない! 切り札は「日本版JIC」「日本版NSC」「日本版FEMA」を政府内に創設することだ。

(リード)
 憲法9条や集団的自衛権の問題から、自衛隊の武器使用基準、さらには専守防衛や非核三原則といった国是の問題まで、日本の防衛政策の“そもそもの基盤”の部分に問題山積の現実を、どう克服していくべきか?
 さらには、まったく穴だらけといわれる日本政府の国家安全保障体制をどう改革していくかということも、永田町の国会議員たちに突きつけられた大きな課題となっている。
 では、具体的にどこが問題で、どこをどう変えていけばいいのか?
 民主党で安全保障政策をリードする前原誠司議員が「秘策」を語った。

(本文)
王道は憲法改正

――防衛に関する法律をテーマに伺います。まずは基本的なところで、憲法9条と集団的自衛権行使からですが、このあたりは早急に変えていきたいということですね?
「そうですね。まあ、何かがあったときにはもう憲法改正しかないと思っています。国民にとってわかりやすいのは、9条変更ですよね。1項は残してもいいと思うんですね。で、2項はなくすと」
――2項というのは、戦力を保持しないという項目ですね。
「そう。1項はいいと思うんですよ。専守防衛の考え方が書いてあるんですね。でも、2項はどう読んだってこれは自衛隊は憲法違反ですよ。これは排除しないといけないでしょうね。
 それに、憲法には国民の権利と義務は書いてあるんですけれど、国家の義務と権利はひとつも書いてないんですね。そこで私は、国家の権利である自衛権はしっかりと憲法に明文化させることが必要だと考えてます」
――そこで2点お聞きします。ひとつは、本当は憲法改正がしたいのだけれども、憲法改正は結構面倒なので、とりあえずは解釈変更で集団的自衛権行使を認めるという道を目指すのか、いきなり本丸の改憲に持ち込もうというのか、そこはどう考えていますか?
「安全保障の問題というのは、いかに国民に理解してもらえるかということですから、『あるとき気がついたら、なぜか憲法解釈が変更されていて、やれることが拡大されていた』というのは、私は健全ではないと思ってます。もし解釈変更をやるのであれば、徹底的に国民的議論を重ねたうえでなければならない。そんなことも考えると、はやり憲法改正が望ましいと思うんですね。
 ただ、私には、9・11テロの後に政府は憲法解釈変更の絶好のチャンスを逃してしまったなという思いもあるんですね。というのも、日本はそのとき米軍のアフガニスタン戦争に参加することになったわけですが、あれは誰がどう考えたって集団的自衛権の行使なんですよ。つまりアメリカは自衛権行使ということでアフガニスタンを攻撃した。それに日本が軍事協力したわけですから。だからあのときに憲法解釈の変更がなされなかったというのは、ひとつのチャンスを逸したのではないかと思うのですね」
――米軍に給油するということは、軍事作戦の兵站に参加したということですから、あのときをもって事実上、日本は集団的自衛権行使に踏み切ったということになりますね。
「それでもとにかく、内閣法制局は武力行使の一体化はしていないと逃げているのですね。しかしですね、給油なんてことだけではなくてですね、そもそも基地を提供することも広い意味での集団的自衛権行使なんです。ですから、武力行使の一体化はしないという一点で集団的自衛権は行使してませんよというのは、私からみるとまったくのナンセンス。逃げ口上であって、屁理屈でしかありません」
――もう1点お聞きしたかったのは、小沢一郎さんらが主張していることのひとつに、小沢さんの場合は国連重視なんですけれども、いわゆる国際的な集団安全保障活動に参加することは、集団的自衛権の概念とは別の概念で考えられるのではないかということがありますね。それはいかがですか?
「私も、いわゆる集団安全保障活動と自衛権というものは別のものだと思います。集団安全保障というのは、みんなで互いに協力し合って、警察的な部隊を出しましょうということですよね。自衛権というのはまさに、自らの国を守るという権利ですよね。それが同盟関係を結んでいたら、集団的自衛権というものが発生するわけです。私はそこは考え方が違うんだろうと思うんですね」
――アメリカの対テロ戦の場合、自分たちが攻撃されたから、自衛のためにアフガンを攻撃したわけです。イラク戦争の場合は表向きの理論は国連決議違反ということでしたが、アメリカとしてはやはり大量破壊兵器がイスラム・テロリストの手に渡ったらたいへんだということで、自衛権でもってイラクを攻撃した。それがホンネですね。
 実際そうなんですが、ちょっと見方を変えると、『世界のならず者がいたので、世界の警察官たるアメリカが排除したんだ』と考えられなくもない。仮にそういう理屈になれば、それに参加することは集団的自衛権とは関係なく、集団安全保障活動への参加ということになりませんか? 同盟国アメリカの私戦に協力したという理屈ではなくて、世界の平和維持のために参加したんだから、憲法の問題とはまったく別の話なんだということにはなりませんか?
「アメリカが自衛権の行使だと言っている以上は、それは通りませんね。仮にアメリカが国連に付託をし、国連が武力行使を認める決議をして、多国籍軍編成がなされて、というプロセスを踏んでいたならば、おっしゃるように集団安全保障という概念のなかでも参加できたかもしれませんが」

武器使用基準をクリアにする「マイナー自衛権」

――有事法制についてですが、これを実際に機能するものに整備していくにはどうすればいいと考えますか?
「有事法制はやはり、憲法改正を経なければ魂の入ったものにはならないですね。たとえば、有事法制策定でいちばん苦労したのは、国民の主権制限をどのように求めていくかということだったのですね。そこで、公共の福祉という有事にはあまり関係のないような概念を引っ張り出してきて、それを膨らましてようやく主権制限にもっていくという非常にまだるっこしいことをやったんです。それはなぜかというと、憲法に有事とか非常事態だとかに対する緊急の概念がまったくないからなんです。
 ですから、私は憲法を改正し、平時と有事の規定を設けて、そのスイッチによって国家と個人の権利・義務関係が変わる制度をしっかり作らなければならないと考えています。そのことが憲法になければ、どんな有事法制でも有事に対応できないと思っています」
――その他の法整備についてはどうですか?
「やっぱりおかしいのは武器使用基準ですよね。これは見直していかなければならない。
 緊急避難、正当防衛あるいは自衛隊法95条の武器等防護、これがベースではやはり国際貢献活動はできないですよ。われわれが自衛隊のイラク派遣に反対した大きな理由のひとつも、危険地域に武器使用の制限を自衛隊員に強いて行かせるというのはいかがなものかということだったんですね。国際標準での武器使用基準というものを、日本にもあてはめることが不可欠です。それにはマイナー自衛権という概念を導入するのがいいと私は思っています」
――マイナー自衛権とは何ですか?
「自衛権というと、日本ではすぐに国家の自衛権の話にワープしちゃうんですよ。これは内閣法制局の悪い習慣だと思うんですが。つまりは部隊が任務を遂行するうえでの自衛権というものを認めていないわけですね。
 国家の自衛権は認めている。個人の自衛権も正当防衛とか緊急避難とかで認めている。でも、部隊が任務を遂行するうえでの自衛権というものを認めていないために、世界標準というか、国際慣習に基いた武器使用ができないというおかしな仕組みになっちゃっているわけです。
 同じようなことが、自衛隊法84条の対領空侵犯措置にもあります。法的に、領空外では自衛隊機は相手に一切手出しができないように規定されているんですね。だから領空外で仮に自衛隊機が相手を撃ち落としたら、その操縦士はおそらく刑事責任を問われることになるわけです。つまりそれは、任務遂行のための武器使用を認めてないからなんです」
――ロックオンされても逃げるしかないですものね。
「普通の国の空軍なら、ロックオンされたら反撃していいというのが常識ですが、空自の場合はロックオンされても撃ってはいけないというのが内規です。だから、他の国の戦闘機はよく自衛隊機にロックオンして遊んでいるようですよ」
――武器使用基準を新たな任務追加ごとに細かく設定していくものだから、今ではあまりにも複雑すぎてワケわかんなくなっちゃってますよね。防衛白書の資料編には武器使用基準の一覧表があるんですけれども、もうあまりにも細かすぎて読んでて頭痛がするほどです。どうして政治がこれをすっきりさせることができないのでしょう?
「内閣法制局段階で突き当たるからです。ですから自衛権の解釈を変えなければならないわけです」
――それを変えないと、結局はどこまでも細かな規定を重ねていくことになるわけですね。
「はい。ですから、集団的自衛権行使と同じなんです。最後は内閣法制局の憲法解釈あるいは自衛権解釈という壁にぶち当たっているわけです」
――法制局が自ら解釈を変えるわけもないですから、それを変えようと思えば、実際には国会で政治家がコンセンサスを作って政府に迫るなり法律を作るなりしてやらなければなりませんね。
「そういうことです。さらにそれに付随して、軍事裁判所のようなものも造らないといけないですね。おそらく一般の裁判所では対応しきれない。ある事例について、任務遂行のための武器使用であったかどうかというところで見解が分かれてくるような場合には、専門的な裁判施設でそういった判断を行なう必要性があると思うんですね。だからそういったことも整備をしていかなければならないですね」
――そういった話をすると、戦争準備だなどと言い出す人もまだいますね。
「海上警備行動や対領空侵犯措置など、日本の警戒監視にあたっていて、それで危害射撃を行なって、相手が死んじゃう可能性もあるわけですね。
 たとえば海上保安庁が奄美大島沖で北朝鮮の工作船と撃ち合いになって、最後は向こうが自沈しましたけれども、仮に海保の弾が当たって沈んだとなった場合には、あの場合は正当防衛で処理されるんだろうけれども、私はちゃんとその行為が法的に妥当であったかどうかを検証するものをむしろ設けることのほうが、実力組織にしっかりとしたコントロールを常にかけておくということで必要なことだと思います」

本来の意味の国是に立ち返れ

――専守防衛、あるいは非核3原則、武器輸出3原則といった、いわゆる国是と言われているものについてはどう考えていますか?
「専守防衛と非核3原則はこれからも堅持すべきだとは私は思っているんです。しかし、専守防衛というのは、時代とともに中身が変わるんですね」
――そこがわかりづらいところなんです。前原さんはもちろん御自身の考えに基く専守防衛の考えがあるわけです。でも、専守防衛という言葉をもっと硬直的に、どんなことがあっても一切他国に手は出さないことだと考えている人もいる。政府は過去の国会答弁で専守防衛の定義をしたことはありますが、それでもそれが法的に明確になってるわけではないと思うんですね。結局、それぞれ主張の違う人たちが、それぞれ自分に都合のいいように解釈して使ってるのですね。
「私は、憲法9条の1項の考え方が専守防衛だと思っています。つまり、国権の発動たる武力の威嚇または行使は行なわないと。でもやられたらやり返すんだということは専守防衛の範囲内です」
――でもそうすると、世界の国はみんな専守防衛だということになりますよね。
「それはそうです。国連憲章にも同じようなことが書いてあります」
――どこの国でも軍隊は国防軍だと。自衛のためにやってるんだということですよね。そうすると、専守防衛という言葉にいったいいかほどの意味があるのかなと思うんです。逆に専守防衛を盾にして、いくらこちらに多大な犠牲が見込まれても、向こうから攻撃されるまでは絶対に手を出さないという閉じこもり戦術の根拠に利用されるとすれば、こんな曖昧な言葉やめちゃったほうがすっきりしませんか?
「専守防衛の考えそのものはいいんだと思いますよ。ただ、先ほど言ったように、時代の変化とともにその中身が変わってくる。軍事技術の革新によって、戦い方も変わっているわけですから。
 以前は海を渡って押し寄せる侵略軍を想定していたから、こちらはそれを迎え撃っていればよかった。でも今は、瞬時に飛来するミサイルがあるわけですからね。専守防衛の戦術的な内容が変わるのは当たり前のことだと思います。われわれの側から戦争を仕掛けるということはしないということに捉えればいいのではないでしょうか」
――では、非核3原則はどうですか? というか、まあ、すでに『持ち込ませず』については事実上反故になってるので、非核2原則はどうですか?ということなんですが。
「私は逆に、非核3原則の堅持を目指すべきと考えています。つまり、『持ち込ませず』の部分で、アメリカに事前協議制を厳格に求めるべきだということなんですが」
――アメリカは認めないんじゃないでしょうか?
「日本はそれは強く求めていくべきでしょう」
――武器輸出3原則はいかがですか?
「そもそも武器輸出3原則を言葉通り読めばですね、対共産圏、国連の制裁下にある国、それと実際に戦争している国に輸出しないということですから、その原則に戻せばいいんですよ。これは三木内閣のときに、なぜかすべての武器輸出がダメということに飛躍してしまった話ですからね」
――今のミサイル防衛の以前までは事実上、研究・開発への参加すら認めないことになってしまってましたし。
「ですから、本来の3原則に戻せということですよ」
――なるほど。そうすると専守防衛、非核3原則、武器輸出3原則ともに、廃棄するということではなくて、むしろ本来のものに戻せというのが前原さんの考えというわけですね。
「その通りです」

国会議員に守秘義務を!

――政府の防衛政策立案・決定の仕組み・制度について、改善すべき点はありますか? たとえば、アメリカを例に挙げると、ホワイトハウスに非常に大きな権限を持った国家安全保障会議(NSC)というものが設置されていて、発言力の大きな国家安全保障担当大統領補佐官がいます。インテリジェンスに関しても、つい最近ですが、国家情報長官という閣僚級の統括ポジションが創設されています。日本でも同じように、内閣にこうした機関を設置せよというアイデアがあります。
 また、一方では、これもアメリカの例でいえば、上下両院に軍事委員会、外交委員会、あるいは情報特別委員会というものがあって、それが非常に大きな力を持っているわけですね。日本の国会の中にも委員会もありますが、実際のところそれほど大きな力を持っているわけではありません。現実にはむしろ与党・自民党の部会のほうがカギを握っているのが実情ですね。
 しかし、与党の部会などというのはいわば私的な機関ですから、それが実権を持っているなどというのは本来おかしいわけです。やはり議会制民主主義ならば、国会の委員会が、アメリカのケースのように、政府に対する監視機関・重しの役割を果たすのがスジというものです。
 ということで、内閣の制度の改善点、国会の制度の改善点と2つあると思うのですが、それはどのように考えますか?
「これから日本政府で必ず作らなければならいのは、まず先ほど話した統合情報委員会、それと日本版NSC、すなわち国家安全保障会議ですね。これらをまず作って、ここでやはり長期的な防衛戦略、安全保障政策というものを立案すべきだと考えています。
 今度の防衛大綱のタタキ台になった荒木ペ-パー(小泉総理の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会<座長:荒木浩・東京電力顧問>」の報告書)にもそういうことが書いてありますが、これは絶対やっていかなければならないことです。今の安保会議というのは、有事法制が出来ていくつかの下部組織ができましたけれども、まだまだダメですね」
――問題は、それらをどう実現化していくかですが。
「いや、それはもう政治のリーダーシップの問題だけです。それだけです」
――仮に今、小泉総理がハラを括って『やるぞ』と決めればできちゃう話ですね。
「その通りです。一言でできます」
――なぜできないんでしょうか?
「そういう発想がないからですよ。小泉さんに」
――民主党政権になればホントにできますか?
「それは必ずやります」

――国会の中の委員会改革はどうですか?
「それもわれわれ提言しているんです。それを安保委員会にするか外務委員会にするか、あるいは情報委員会というものを作るかということは思案していますがね」
――しかし、国会議員がメンバーになるとすると、情報漏れが懸念されますね。
「そうなんですよ、いちばんの問題は。実際にそうした委員会が創設されれば、それはかなりの機密情報をベースに国家戦略を討議するということになるわけです。そこでいちばん危惧されることが情報漏れですよね。国会議員はしゃべるんですよ、機密情報をペラペラね。
 現に今までも国会議員の秘密会議は情報漏れが多かったんです。たとえば議院運営委員会秘密会というのがあって、山崎拓さんの泉井問題だとか、あるは自殺されました新井将敬さんの株の問題だとかがありましたよね。あれらは秘密会だったんですが、その内容もあっという間に漏れてましたね。
 なぜそんなことなるのかというと、実は国会議員に守秘義務違反のペナルティがないからなんですね。なんと憲法51条で守られちゃっているんですよ。国会議員は守秘義務違反を問われない、とですね」
――公務員は守秘義務がありますよね。
「公務員はあります。けれども罰則が弱すぎるんです。たとえばですよ、1億円ぐらいの価値のある情報を売ったとしても、おそらく罰金が数十万円ですよ」
――じゃあ、やり得ですね。
「そうです。だからもっと厳しくしなければいけないと思いますね」
――アメリカのケースですと、議会に強力な権限があるんで、政府が説明しなければならないということももちろんあるんですが、ホントの秘密事項に関しては、大統領は上下両院の2大政党の院内総務とか軍事委員長、情報特別委員長だけを呼んで、そのごく限られた議会リーダーだけに話を通しておくということをやってますね。
「日本でもそういうことはあるんですよ。けれども、日本の場合は役職に関係なく、政治家によっては絶対漏れるということで、政府も役所も絶対にしゃべらないということがあるわけですね。名前は伏せますが、今でも与党の大物議員に、『あの人に話すと絶対に漏れるぞ』というので有名な方とかいますものね。つまりは政治家の資質の問題なんですけれども。
 ですから、この国会議員を守っている憲法の部分も改正し、少なくとも国会の秘密会で討議されたことを外部に漏らした場合には厳しい罰則を盛り込むべきでしょうね」
――おっしゃることはよくわかるんですが、これは民主党の中だけでもかなり抵抗ありそうですね。
「あるかも知れません。でも、インテリジェンスに接してですね、秘密を守るなんてあたりまえのことだと思いますよ」
――制度の話に戻りますが、国会の委員会よりも自民党の部会のほうが決定権を持っているなどというイビツな状況を変えるいい方法はありますか?
「国家安全保障会議ですよ。それを作り、政府主導のもとで戦略分析・政策立案を行なうということですね。それと、先ほども言った統合情報委員会。そのセットで、まったく政策決定過程は変わります」
――日本版の国家安全保障会議というと、メンバーはどうなるのですか? 今の安保会議と変わらないわけですか?
「基本はそれでいいんですが、もう少し絞ったほうがいいですね。ただ、それより決定的に重要なのは、現在の安保会議のような形式上の有名無実のものではなくて、実際にスタッフ機能を格段に充実させることです。もちろん政治任用ですよ」
――今の内閣官房のスタッフでは足らないということですね?
「まったく不十分です」

安全保障を確立するための「3本柱」

――これからの日本の危機について、どのような事態を想定しているのかお聞かせください。
「まあ、正直な話、これからの戦争は従来型の戦争とまったく違う状況だと思うんですよね。圧倒的な火力で短期で敵を殲滅する。都市機能というのは瞬時に壊滅的状況に陥るということですね。
 ですから私は、これからの戦争で徹底交戦なんていうのはちょっとあり得ないと思っているんですね。軍備というのは、もちろんイザというときには使えるようにしておかなければいけないんですけれども、もっと大事なことは、いかに戦争を起こさないような仕組みをトータルとして作っておくかということなんですね」
――となれば、核を持っちゃえというのがいちばん早いのではないですか?
「いや、そうではないですよ。それは抑止力としては過剰すぎるのですよ。過剰な抑止力は相手の過剰な軍拡を呼びます。日本がこれから力を入れるべきは、まずテロに強い体制作り、情報ネットワーク整備、それと海上保安庁も含めて警察機能をいかに高めていくかということだと思っています。
 とくに私が言いたいのは、テロ対策というものが、今日お話させていただいたような国家防衛の話に劣らずにですね、改革していかなければならないことが広範にあるテーマなんですね。実は今、それをちょうど議論しはじめているんですけれども、そのポイントは何かというと、省庁縦割りの弊害をなくすことなんですね」
――警察庁、防衛庁、海上保安庁はそれぞれ仲悪いですからね。
「厚生労働省、公安調査庁なんかもありますし、それと民間もありますよ。でもとにかく縦割りの弊害が大きいんですね。で、私が提案してるのは、3本柱と言ってるんですけれども、すでにお話した日本版NSC(国家安全保障会議)、日本版JIC(統合情報委員会)に加え、日本版FEMA(危機管理庁)を立ち上げるということなんですね。
 危機管理庁の何がいいかというと、たとえば大災害が発生したとしますね。そうすると政府は対策本部を立ち上げますが、たいていは総理が本部長ということです。対策本部の効用は何かというと、省庁間の相互調整がそこからスタートすることです。逆にいえば、対策本部が立ち上がるまでは、平時は省庁間の相互調整はできないということになるわけですね。
 で、危機管理庁の役割は何かというと、平時のときから危機管理のために省庁間の調整を行なうことにあるわけです。こういうものを作って初めて、日本の安全保障のレベルがぐっと上がると私は考えているんですね」
――日本版FEMAには、内閣危機管理監のスタッフを拡充して充てるということになりますか?
「スタッフの拡充ももちろん必要でしょうけど、それより重要なのは、地方の拠点を作るということなんだと思いますね」
――今、内閣危機管理監というものがちょっと中途半端なポジションになっていますね。常設のスタッフが脆弱で、いざというときに何ができるわけでもない。対策本部長は総理か官房長官だから、意思決定が任されているわけでもない。各省庁を束ねる役目も、従来通り事務方の内閣官房副長官あたりが仕切ってやっている。で、官邸の危機管理センターというハコの管理人みたいになっちゃっているわけですね。
「それはある程度、実働部隊というのは必要だと思いますよ。今の役所の中で、たとえば内閣官房と内閣府、それと総務省入れて危機管理部門のスタッフを数えると、数百人単位になるんですね。これらはまとめたほうがいいと思いますね。これが統合できたら、べつに人員を増やさないでも、それなりに強力な危機管理の機能が可能になると思うんですが」
――今おっしゃったような改革の案というのは、それこそ政治の決断ですね。
「危機緊急事態基本法というものを作ろうということはすでに3党で合意していましてね、日本版NSC、日本版JIC、日本版FEMAの3本柱構想というのは、民主党案として今、与党に投げているわけです。けど、自民党はダメですよ」
――なぜダメなんですか?
「役所をいじるのは自民党は絶対ダメなんですね。官僚の抵抗がありますから。たとえば、総務省の危機管理部門はどこかというと消防庁なんですが、彼らは独自性を保ちたいということでたいへんな抵抗を示してます。だいいち消防という言葉がなくなることにものすごい危機感を持っているらしいのですね。こういう抵抗を自民党がどうにかするなんて不可能です。
 ただ、自民党が不可能だということでこちらも引き下がるというわけにはいきません。いずれにせよ、この部分は非常に大事なことなので、これからわれわれも本気になって取り組んでいかなければならないと考えています」
(了)
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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