ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

またまた反原発について

 当然といえば当然ですが、3月以降の出版業界はことごとく原発ネタ一筋に集中しています。とくに反原発派の本が売れセンとして定着し、扇動的であればあるほど出せば当たる傾向になっているようです。
 ということで、原発ネタと無関係のライターには逆風が吹いている状況ですが、それはともかく、普通に仕事をするうえでも、私のような「『反原発』に懐疑的な立場」はなかなかやりづらくなっています。というのも(私の知る限りですが)、クライアント様である編集者の方々の圧倒的多数が反原発派で、しかも政府や東電に心底から敵意を抱いている人が多いのですが、それだけでなく「反原発でない人や、放射線の脅威を軽く見る人」に対しても、なにか「この人、敵なのね」というような雰囲気になったりするからです。
 夜の酒場でも似たようなもので、今はどこに行ってもすぐ原発の話題になるのですが、反原発の人は、私のような立場に対し、非常に攻撃的に責めてくることが多いです。で、私はたまたま出身地がいわき市なので、その話をすると許してもらえるという感じになっています(単に出身地というだけで、私自身は実害はまったく受けていないのですが)。スポーツ・チームをめぐって討論ふうになるのは楽しいですが、原発絡みはなぜかいつも殺伐とした雰囲気になりますね。
 つまり、それだけ今の日本人がマジになっているということですが、この「対立」の空気はなんとかならんものでしょうか。反原発も容認派も、べつに日本の将来をよくしたいということは同じなんでしょうが、互いを敵視し、とにかく敵の言動を封じることに血道をあげています。自分たちの意に沿わない専門家を訴えている狂気の人々すらいます。
 それで、あまりメディアは報じていませんが、私の周囲をみるかぎり、逆に「反原発派を敵視する空気」も確実に増えている気がします。クレイマーとかモンスターペアレントとかと同じカテゴリーに見られつつあるわけです。
 感情的に対立しても、あんまりいいことはないと思います。
 日本の将来のために、原発容認か反原発かはどんどん議論すべきでしょう。子供たちの将来のために、放射線の脅威の実態をどんどん調査・分析すべきでしょう。しかし、たとえば「原子力ムラ」だの「御用学者」だのといった侮蔑表現を使って感情的に取り組んでいると、まあ、だいたい情報分析は誤るのではないかなと思います。たしかに「やらせメール」みたいなつまらないことをする電力会社経営者も問題ですが、だからといって「なんでも電力会社陰謀論」というのも、だいたい情報分析を誤るもとになると思います。

 私は原子力や放射線医学の分野は素人ですが、素人なりの私見を再び書いておきます。
 素人が情報を判断する際のひとつの方法として、「信用度の高い専門家の言説を探す」という方法があります。これはある人物に100%の信頼を置いてはダメです。が、確率的には悪くない対処法です。
 では、どうやって信用度の高い専門家を見極めるか。「肩書き」「経歴」「他人の評価」も重要な判断材料になります。あるいは、その専門家の他の分野における言動なども参考になります。たとえば、私の比較的得意分野である国際関係の分野で、「ユダヤ系財閥が世界を牛耳っている」などというトンデモ論を書いていた人は「バイアスに弱い」傾向があるとわかります。
 ここで、気をつけなければならないのは、自分自身のこうした判断も、それ自体がバイアスがかかっていることを自覚することです。なので、そうした印象ですぐに結論を出すのは厳禁です。しかし、バイアスというのは、情報を見誤る最大の元凶でありながら、情報を絞り込むツールとしてはそれなりに有効であることも事実です。
 後は、これはもう正攻法ですが、言説の根拠を検証することです。難解な科学的分野を検証するのは至難のワザですので、こういうときは「消去法」が有効です。この部分の論拠は、じつは明確に示されていないなと思えば、それをどんどん消去していきます。
 ここで注意すべきは、根拠とされた情報の、そのまた根拠です。これを2つ3つ辿ると、じつは根拠はなかったということが、どんな分野でも実際にはものすごく多くあります。人間個人の能力には限界があるので、これはどんな人が書いたものにもあります。かく言う私だって、そうしたことはこれまで無数にあったはずです。
 それと、情報は無数にあるということも念頭に置く必要があります。実際、どんな分野でも、扇動的な言説には、都合の良いことだけを繋ぎ合せて極端な結論を導き出しているケースがかなりあります。陰謀論はたいていこれです。私見をいえば、現在、放射線の脅威を叫んでいる人の言説の多くに、このパターンが見られます。
(逆の立場でも、このパターンは見られます。たとえば、アンチ反原発派にときおり「放射線は身体に良い」ということを強調する人がいますが、これも典型的な例です)
 そうやって消去法でみていくと、つまらない感情論がまず排除しやすくなります。そうやって見ていくと、現在の論点は3つに大雑把にわけられることがわかります。
①政府・東電は国民を騙す悪か?
②原発容認か反原発か?
③放射線被曝は深刻か否か?

 この3点はいずれも別個の問題なのですが、一緒くたにされている現状があります。①は、②③に比べると瑣末な問題ですが、もうバイアス論調のオンパレードな感じです。情報として参考になるものは、実際あまりないです。
 ②は比較的、対立軸のはっきりした論点です。リスクの評価に若干バラつきがありますが、要はリスクをどこまで負うかという「考え方」の違いなので、議論の前提がそれほど乖離した話ではありません。実際には「原発は環境を破壊するのだから、悪いに決まっている」と最初から信じている人も多いですが、そのあたりは議論も可能かと思います。
 問題は③です。現在、日本国民が感情剥き出しで互いに「敵対」しているのは、③が主要因になっています。
 この問題は、国民の「食いつき」がいいので、報道現場でも非常に力を入れて行っています。ですが、私見では扇動情報がものすごく多いです。「危ない、逃げろ」「危ない、食うな」という話は、根拠を消去法で消していくと、ほとんどすべて消えると思います。
 もちろん「自分は危ないと思うので、逃げたほうがいい」「危ないと思うので、食べないほうがいい」と考え、「それが現在の自分の考えです」と世に公表することは構わないと思うのですが、「間違いない」と言うのは間違いです。
 私個人の考えを言うと、①はそんなに関心はありません。②は、当面は火力発電への段階的シフトがいいのではないかなと思いますが、原発を全廃するのは無理でないかなと思います。リスクとコストの問題です。
(私は情報分析の観点から、現在の感情的反原発論調に批判的ですが、原発にリスクがあるのは承知しているので、コスト容認の範囲内で脱原発の方向自体はいいのではないかと考えています。もちろん火力発電にも別個のリスクがありますが、最近の発電施設はコスト・パフォーマンスもかなり良いようです)
 ③は私は明確に「扇動派批判」です。福一の現場作業員の方、避難生活を送られている方、風評被害で苦しんでおられる方、のケアが急務ですが、県外の生活者が大騒ぎする必要はないとの考えです。放射線がまったく影響ないとは思っていませんが、現状のレベル程度であれば、大騒ぎする弊害のほうが大きいと思っています。よく「健康のためなら死んでもいい」と健康オタクを揶揄する表現がありますが、それを笑えない感じになってきている気がします。
スポンサーサイト
  1. 2011/07/31(日) 13:13:44|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<シリアで虐殺が始まりました | ホーム | 自由シリア軍の声明>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/460-8d09c733
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。