ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ノルウェー・テロ 犯人の正体は?

 ノルウェーのテロに関して、いくつかメディアの方から問い合わせをいただきましたが、現時点ではまだ犯人の背景などがよくわかりません。
 現地からの報道によると、この32歳の犯人は、ネットでキリスト教原理主義的な書き込みをしたことがあるらしく、04~06年に右翼政党「進歩党」の党員だったということです。欧州によくいるネオナチ系の印象がありますが、狙った標的が移民とかでないので、どちらかというと既成のネオナチ系グループというよりは、もっと直接的に「異常者」な感じがします。

 過去、今回の事件にもっとも似た印象があるのは、アメリカのオクラホマ連邦政府ビル爆破テロではないかと思います。
 オクラホマ事件は、95年4月19日、オクラホマシティ中心のムラー連邦政府ビル(9階建)前に停めたレンタル・トラックが爆発し、ビルの半分ほどを吹き飛ばして、168人が殺害されたとう壮絶な事件でした。
 事件後、現場で発見された金属片に刻まれていた車両認識番号から車両が特定され、その運転者が宿泊していたモーテルの記録から犯人が割り出されています。主犯ティモシー・マクベイは当時27歳。湾岸戦争に戦車兵として従軍した元陸軍兵士でした。共犯はマクベイの戦友だったテリー・ニコルズです。
 彼らはニコルズが所有するミシガン州デッカーの農場を本拠として爆弾製造を行っていました。極右組織「ミシガン・ミリシア」のメンバーだったこともあったと報じられていますが、本人たちおよびミシガン・ミリシアは関係を否定しており、少なくとも同事件にはこうした政治的な背景はありませんでした。マクベイ自身は裁判の過程で、動機なブランチ・ダビディアン事件だったとしています。
 彼らは、極右組織「アーリアン・ネーションズ」支持者でもありましたが、結局のところは、「妄想癖のある軍事マニア」でした。なお、この事件に関しては、2001年にマクベイの死刑執行が遺族にテレビ中継されたことでも話題を呼びました。共犯の二コルズは、仮釈放なしの終身刑となっています。

 今回のノルウェー・テロの犯人も、銃器マニアだったということで、そこもマクベイと共通しています。極右指向も共通していますが、おそらく今回の犯人も、マクベイのように既存の右翼組織の外で、常人には理解できない異常な思い込みをモチベーションにしていたのではないかと推測します。
 オバマ大統領が米大統領戦を戦っていた頃、アメリカの極右が黒人大統領誕生を阻止するためにテロをやるのではないかと盛んにメディアで採り上げられていましたが、その折に私は『軍事研究』誌で、過去の米大統領暗殺・暗殺未遂事案を調べたことがあります。
 それで改めてわかったのですが、それらの犯人にはいちおう極右的な言動の者が多いですが、既存右翼組織の正規活動家は非常に少なく、圧倒的多数が「異常者」でした。
 異常者に関しては、いろいろ微妙な問題があるのでアメリカのメディアでもなかなかホンネで語りづらいようですが、こういう人物は常にある割合で存在し、こうしたテロが一定の割合で発生することは避けられません。
 安全な成熟社会と思われているノルウェーですら起きました。日本でだって、いつでも起こり得ます。もっと多数の人間が加わってはいますが、あのオウム真理教などは、異常者テロの発展型といえます。秋葉原その他の数々の「通り魔」事件も、犯人がもしも爆弾マニアだったら、もっと大規模なテロになっていた可能性もあります。こういう危険は、これからもあります。

 ところで、極右というのも、常にある割合で存在します。日本にもいますし、欧米にもいます。古い情報ですが、拙著『世界のテロリスト』から、アメリカの例を以下に紹介します。


▽白人至上主義組織

◎ミリシア(民兵)
 全米で224団体。30州に存在。会員10万人。ハートランドと呼ばれる農村地帯に集中し、とくにミシガン、アイダホ、モンタナに多い。
 基本的には軍事マニア集団の性格が強いが、独自の軍事訓練を本格的に行っているところもある。思想的にはいわゆる極右であり、白人至上主義、反ユダヤ主義、妊娠中絶反対などを信条としている。
◎「ミシガン・ミリシア」
 94年結成。司令官は銃砲店主ノーマン・オルソン(元空軍兵士)。メンバーは1万2000人。
◎「モンタナ・ミリシア」
 司令官はジョン・トロックマン。白人至上主義者ランディ・ウィーバーがFBIに逮捕されたのに抗議して、92年結成された。やはり独自の軍事訓練を行う。
◎「アーリアン・ネーションズ」(アーリア人国家:ARYAN NATIONS)
 74年に結成。本部はアイダホ州ヘイデンレイクで、そこには20エーカーもの“拠点”がある。18州で活動し、極右組織としては最も過激な行動をとる地下組織として知られる。政府関係者襲撃、銀行強盗、殺人、リンチなどを常套手段とする。
 メンバーは数百人。創設者はリチャード・バトラー。「モンタナ・ミリシア」のトロッコマン司令官と連携している。
◎「オーダー」(秩序:THE ORDER)
「アーリア人国家」から83年に分派。西部一帯を本拠とする。創設者ジェイ・マシューズはFBIとの銃撃戦で戦死。84年にユダヤ人トークショーDJをデンバーで殺害したことで知られる。
◎「クリスチャン・アイデンティティー」
 白人至上主義・反ユダヤ主義組織。
◎「創造者教会」(CHURCH OF THE CREATOR)
 白人至上主義組織。本部はフロリダ州ナイスビル。
 73年、フロリダ州ライトハウスポイントで結成。別名「ホワイト・ベレー」「ホワイト・レンジャー」など。
 メンバーは数百人とみられ、独自の武装訓練を継続している。創設者はベン・クラッセン(93年8月自殺)。現指導者はチャールズ・アルトベーター。
 93年7月、LA警察がユダヤ人および黒人襲撃計画を摘発した。
◎「クー・クラックス・クラン」(KKK:KU KLUX KLAN)
 1864年、テネシー州で創設された白人至上主義組織の老舗。現在のメンバーは5000人前後とみられる。「白い騎士団」(WHITE KNIGHTS)など100前後の下部組織がある。支部長は「グランド・ドラゴン」と呼ばれる。
 ミリシアや他の極右組織と人脈的に多くが重なっている。

▽妊娠中絶反対テロ組織

 アメリカでは、妊娠中絶を認めないキリスト教保守派の過激派が、中絶を行っている病院を放火・爆破したり、中絶容認派を殺害したりというテロを繰り返している。
 82年以降、150件以上の放火・爆弾・銃撃で1300万ドル以上の物的被害が出たといわれる。96~97年には5人が射殺され、8人が銃撃で負傷したほか、数十件の爆弾テロで負傷者多数が出ている。主な活動は、中部・南部地方。これらの組織には、KKK、ミリシア、全米納税者党などが関与してるといわれる。

◎「オペレーション・レスキュー」(救命作戦:OPERATION RESCUE)
 90年、地下活動開始。本部ダラス。創設者はランドール・テリー(全米納税者党リーダー)で、現指導者はフリップ・ベーカー。放火・爆破も辞さない。
◎「ミッショナリーズ・オブ・プレボーン・ナショナル』(MISSONARIES OF THE PREBORN NATIONAL)
「オペレーション・レスキュー」の最過激派。独自の軍事訓練を行っている。カリフォルニア州で活動。指導者はジョセフ・フォアマンとマット・トレウェラ。
◎「アメリカ生命活動家連合」(AMERICAN COALITION OF LIFE ACTIVISTS)
「オペレーション・レスキュー」の最過激派。
◎「命の主唱者たち」(ADVOCATES FOR LIFE)
 本部オレゴン州。中絶者の殺害を主張。94年5月、侵入・業務妨害行為で病院に800万ドルの支払いを命じられる。指導者はアンドリュー・バーネット。
◎「防衛行動」(DEFENSIVE ACTION)
 指導者ポール・ジェニングス・ヒル(殺人罪で終身刑)。
◎ 「神の軍団」(ARMY OF GOD)
 90年代後半、病院襲撃など最も活動的にテロを行った組織。インターネットを駆使することでも知られる。

 ところで話は変わりますが、ノルウェーでは死刑はないですが、今回はもしかすると死刑復活論が出てくるかもしれませんね。日本なら、精神異常でなければこれは死刑でしょうね。
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  1. 2011/07/24(日) 02:42:23|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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