ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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原発の「情報」と「戦略」

 現在発売中の『FRIDAY』の「アイマン・ザワヒリがアルカイダ司令官に就任」の記事にコメントを採用していただきました。まあ、ザワヒリのことはそこそこ詳しいほうだと自負してます。拙著『世界のテロと組織犯罪』がたぶんザワヒリを紹介した最初の日本語文献だと思うのですが。ビンラディンよりタチが悪い人物ですが、いずれにせよもうあまり力はないのではないかというのが私の見方です。
 また、明日発売の『SAPIO』に「世界中のコンピュータに埋め込まれた中国製『破壊ウイルス(ロジック・ボム)』が突如動き出す」という記事を寄稿しました。「世界サイバー戦争&テロに備えよ」という特集の中の1本です。中国だけではないですが、サイバー戦の具体的な攻撃の種類などについて解説しました。

 ところで、7月7日発売の拙著『新装・改訂版 謀略の昭和裏面史』 (宝島SUGOI文庫)の表紙が出来たようなので、いちおうアップしておきます(⇒アマゾン)。まだ現物が手元にないのですが、届きましたら後ほど目次をご紹介します。
謀略の昭和裏面史表紙
 なかなかおどろおどろしくてナイスですね。軍事ジャーナリストを自称する者が何故このような分野を?というと、私はもともと旧軍特務機関マニアで、その人脈の戦後の動向にも興味があり、それに戦後のキャノン機関、CIA、自衛隊情報部門、公安警察などのインテリジェンス系の分野がシンクロしたという経緯です。また、もともと週刊誌編集者出身なので、いわゆる「事件」系もわりと好みだったりもします。

 ところで、以前のエントリーでも書いたように、今回、いくつか新規項目を書いたのですが、版元様からの要望で「原発を作った正力松太郎」という項目も加えました。原発推進に尽力した中曽根康弘氏についても少し触れましたが、私は正力氏も中曽根氏も悪とは見ていませんので、左翼チックな文章にはなっていません(べつに賛美もしていませんが)。
 で、その原稿中、以下のような意味のことを書きました。
「原発をめぐる賛否の議論が、不幸なことに最初から、保守陣営と左翼陣営の政治的対立の構図に陥ってしまった」
「左翼の反政府政治運動と結びついた反原発運動から一般国民は離れていき、原発推進側は組織防衛のために原発安全神話を繰り返すようになった」
「もともとはどちらの側も、それなりに真剣に日本の未来を考えての行動だったのかもしれないが、こうした政治闘争の構図になったことで、肝心の安全性についての議論が封印されてしまったことは、日本の原子力行政にとって、また日本国民全体の利益にとって、大いに問題だったといわざるをえない」
 原発問題が主旨の原稿ではなかったので、軽くしか触れませんでしたが、似たような主張をされる方がいました。
 前エントリーでご紹介させていただいた「誠ブログ」の「原子力論考」(開米瑞浩氏執筆)の最新記事が、そのあたりのことを私なんぞよりもずっと明快に解説されています。(⇒「安全神話」と言われるものの実情について
 たいへん興味深い論考だと思います。原発問題の感情的な議論はなんとなくもうお腹イッパイな感じですが、こちらは非常に論理的ですし、勇気もご立派だと思います(このご時世で、この種の発言は危険行為になっています。私は正論だと思うのですが)。

 で、私もその勇気を見習って、たぶんあまり賛同者はいないでしょうが、原発問題について1点ここで私見を述べてみます。現在、原発問題で関係者の責任追及が凄まじい状況になっていますが、今回はその「責任」に関して、インテリジェンス的な視点から考えてみます。
 まず、震災以後の原発の惨状は明らかです。なので、こうした事態を招いた責任が誰かにあれば、それを問うのは当然であり、そこを免責せよと言う気は私にもないことをお断りしておきます。
 では、原発の現在の惨状について、東電や行政には責任があったのか? ここで、問題を2つに分けて考えてみます。
 ひとつは震災によって原発が破壊されたことに対する責任であり、もうひとつは原発被災後に適切な処置をしなかった責任です。後者については、私は正直、よくわかりません。関係者の方々はみなさんご自分なりに最善を尽くしたものと信じたいですが、いろいろ不手際があったとの報道が多いのも事実です。情報公開に不適切な点があったことはたぶん否めませんが、その他の実際の対処に関しては、報道には結果論的な後付け批判も少なからず見受けられます。なので、普通に新聞や雑誌を読んでいるだけの私には、まだ判断がつかないというのが正直なところです。
 では、ひとつめの「震災によって原発が破壊されたこと」の責任はどうでしょうか?
 原発反対派の方々は、むしろこちらをメインにこれまで電力会社や国を批判してきました。「原発は危険」「そんなの当たり前」「原発を作るなどけしからん」⇒(震災発生)⇒「それ見たことか」という流れで、その主張・批判は現実として当たっていました。なので、反原発派は正しかったことが証明されました。
 しかし、それがほんとうに必然的な正解だったのか、あるいは「想定外の規模の震災でたまたま正解になったのか」はわかりません。
 ここで問題になるのは「想定外」を考慮しなかったことを、どう評価(断罪)するかということです。
 どんなことでも「想定外」はあり得ます。なので、「想定が足らなかった」といえばそのとおりですが、現実問題として、どこまでも想定を拡大することはできません。その想定の範囲を割り出すのが、情報、つまりインテリジェンスということになります。
 インテリジェンスに関して、「正確な情報分析・評価を提示すること」と思っている方が多いですが、実際のインテリジェンスはほとんどが「蓋然性の高い情報分析・評価を提示すること」です。つまり、「これが正しい」と断定できることは稀で、「この可能性が比較的高い」ということしかわからないわけです。
 ちょっと細かい話をすると複雑になるので、ざっくりといえば、インテリジェンスは「想定する」のが役目ですが、その想定外はどんな問題でも、いつでもあり得る宿命にあります。
 原発問題でいえば、同地域でどれほどの地震・津波が起こりえるかと分析・判断し、「想定する」のがインテリジェンスです。その責任は、原発建設関係者ではなく、地震予知の関係者ということになります。
 今回、地震予知関係者は、想定を間違えました。しかし、それは責任を追及すべき過ちだったとは断定できません。私は地震予知の関連書を制作したこともあるので多少知っていますが、地震予知(予測)は一般に思われているほど進んでいるわけではありません。地震予知関係者はそれでも可能がかぎりにおいて、情報を分析し、インテリジェンスを制作します。なので、想定が結果的に誤っていたとしても、それが必ずしも責任と追及される誤謬であるとは断定できません。現に、原発でも三陸の津波被害でも、地震予知関係者の責任を追及する声はほとんど皆無です。
 他方、原発関係者は、地震予知関係者からの「情報」に基づいて、耐震・安全を確保します。これは、情報を元にした「戦略」(あるいは「政策」)ということになります。福島の場合、思ったよりも地震の時点での炉心の破壊も大きかったようですが、これだけの惨状に陥ったのは、やはり想定外の津波によるセーフティ機能の崩壊が決定的でした。なので、想定外を想定しなかったことの責任が追及できるかどうかという話になります。
 いわゆる結果責任は当然ありますが、まるで犯人のつるし上げのごとく誤謬を追及するほとの責任が存在するのかどうかは、これは一概に判断できません。運営側がもしも想定(インテリジェンス)に基づいた危機管理措置をきちんととっていたならば、どうなのでしょう?
 適切な危機管理措置とは、インテリジェンスに基づき「蓋然性の高い危機への備え」と「最悪の事態を想定した備え」を同時に進めることです。国家の安全保障と同様です。
 戦略サイドは、インテリジェンスに基づいて危機管理措置をとります。そのインテリジェンスで想定外のことは、普通は戦略サイドも度外視します。今回不幸にして起きたことは、おそらくそういうことです。
 甘かった部分はたぶんあったでしょう。インテリジェンス(情報)がそれほどアテになるものではないということまで考慮しなかったのがそれで、そこには前述したような「安全神話」への固執が作用した可能性があります。
 しかし、想定外を想定しなかったのが罪かというと、それは安易には断定できないのではないかと思います。
 なので、反対派の意見を無視して原発を作ったからいけない、という論法で感情的に断罪するのではなく、原発推進側の戦略上の判断はどうだったのか、まずはきちんと具体的に検証すべきかと考えます。
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  1. 2011/06/28(火) 10:25:05|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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