ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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スパイに向いている人

 以前のエントリーで、戦場カメラマンのなり方とか、インテリジェンスの学び方とか、日本のインテリジェンス機関に就職するには、とかいったことを少し書いたことがありますが、このところ「スパイになるには」「スパイのなり方」といった検索で拙ブログを覗いていただく方がときおりおられるので、本日はそんなことを少々考えてみました。
 スパイになるといっても「ケースオフィサー」なのか「エージェント」なのかで、人生はだいぶ違ってきます。ケースオフィサーというのはCIA用語ですが、スパイ組織の正職員で、調査対象の国や人脈の情報を探るのが職務になります。007のジェームズ・ボンドなんかがそうですね。
 他方、エージェントというのは、もともとスパイ組織が調査対象とする組織や人脈の「中の人」で、ケースオフィサーによってリクルートされる、要は「裏切者」です。現実のスパイ組織では、ケースオフィサー自らが身分を偽って調査対象組織に潜入するなどという危険を冒すことはほとんどなく、危険を冒すのはもっぱらエージェントということになります。
(ちなみに、CIAでは現地派遣要員を「フィールド・オフィサー」と呼ぶこともあります。また、ケースオフィサー以外に、報告書を書くのが専門の「リポート・オフィサー」という職種もあります。そのリポートを受けて分析する分析官は「アナリスト」ですね。リポート・オフィサーはケースオフィサーになる前の新人がやるみたいですが、詳細はよくわかりません)
(ちなみに、混同しやすいのですが、FBIでいうエージェントは、FBI正規職員である捜査官を指します。FBIでは日本の検事のように、捜査官それぞれが独立した司法権限を与えられているからです)

 で、最初から、そんな「裏切者」であるエージェントになりたいという人が本当にいるとは思えませんので、ケースオフィサーについて考えてみます。
 ケースオフィサーのなり方は、要は、インテリジェンス機関に就職し、組織内人事でそういった部署に配属されるしかありません。インテリジェンス機関への就職に関しては、以前のエントリーで少し触れたので、割愛します。
 なので今回は、どういう人がケースオフィサー(スパイ)に向いているか?を考えてみました。
 以下、スパイに向いている人-ー。
①平気でウソがつける人
 スパイはウソをついて他人を騙すのが仕事です。なので、正直な人は向いていません。ただし、上級なスパイは、騙していたことが相手に露呈しても、その相手が騙されたことを恨んだりせず、それでも信頼するぐらい徹底的に対象を洗脳します。まあ、結婚詐欺師みたいなものです。一見、いかにも誠実そうに見えなければなりません。いかにも胡散臭い人ではダメです。
②存在感のない地味な人
 スパイは目立ってはいけません。同窓会でも「あんなヤツいたっけ?」と言われるくらいカゲが薄い人が向いています。とにかくオーラのある人は、すぐに敵に気づかれるので、向いていません。映画のスパイみたいに、イケメンや美女なんてもってのほかです。ドロボウあるいはスリなんかも同じですね。
③積極性に欠ける人
 仕事をするうえでは、やる気のない人では難しい仕事ですが、やる気満々の人はまず就職の段階で弾かれます。というのも、スパイ組織がいちばん困るのは、「辞めた人が暴露本を書くこと」だからです。やる気満々の人は、チャレンジ精神が旺盛ということですが、ウラを返せば自己顕示欲が強いということになります。そういう人は自意識が強く、プライドが高く、自己評価が高いわけで、組織に合わずに退職なんてことになりやすいわけです。ひと昔まえは、そういう人がえてして敵のスパイ組織に狙い撃ちされましたが、今はそれよりも「暴露本を書く」ケースが増えています。
(とくにCIAでは、解雇されたロバート・ベアの『シー・ノー・イーブル』がベストセラーになって以来、暴露本執筆がトレンドになってしまい、ほとんど新人なのに暴露本を出そうとして問題になった人さえ出てきています。イギリスでも『6』と『5』にそれぞれ一人ずつ、そういう人がいます。『6』のリチャード・トムリンソンは、海外の工作員を全部バラしてしまい、組織に大打撃を与えました。GCHQにもちょっと問題を起こした女性職員がいて、『5』のデイビッド・シェイラーが接触しようとしていましたが、彼女は相手にしなかったようです。ちなみに、KGB元幹部でペレストロイカでいち早く暴露本を出したオレグ・カルーギンは、実際には肝心なことは暴露せず、元KGB幹部という肩書きをフルに利用して金儲けに勤しんでいます)
 スパイ組織はそう人がいちばん困るので、あまりに「やる気満々」の人は敬遠されます。自己主張しない人のほうが好まれるので、ネットでもブログやツイッターをやる人は向いていません。
④優柔不断な人
 現在のスパイ組織が職員教育でもっとも力を入れているのは、情報分析から先入観を排除するということです。つまり、常にまっさらな目で状況を判断できることが求められるわけです。
 なので、信念を曲げない人がもっとも向いていません。すぐに意見の変わる人のほうがいいわけです。

 ということで、結論としては、スパイに向いている人は「平気でウソをつき、優柔不断で、やる気がなく、カゲが薄い人」ということになります。うーん、なんかダメ人間じゃないですか。
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  1. 2011/06/13(月) 03:22:07|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

黒井さんは「ケースオフィサー」が書いた本でオススメな本てありますか?

自分は、「スパイ・キャッチャー」朝日文庫がおもしろかったです。
(内容的には色々いわれてますが・・・退職まじかに年金の心配をする場面など、特殊な仕事ですが、彼らも公務員だなーと思いました)
  1. URL |
  2. 2011/06/13(月) 11:19:19 |
  3. ヨッシー #-
  4. [ 編集]

私は個人的にはエスピオナージ(頭脳戦)よりも対テロ情報戦(ドンパチ系)が好物なので、英語の本ですが、Gary Schroen著『First In』と、Gary Berntsen著『Jawbreaker』が圧倒的に面白かったです。どちらも9・11テロ後のアフガン戦で活躍したCIA工作員です。前者はボブ・ウッドワードの『Bush at War』のネタ元ですが、これも面白かったですね。ご存知と思いますが、『ブッシュの戦争』というタイトルで邦訳も出てます。
  1. URL |
  2. 2011/06/13(月) 18:07:50 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

黒井先生に質問。内閣情報調査室が北朝鮮と中共支那を対象にした人的諜報活動を始めていますが、日本の情報コミュニティーに関する数種の改革案を読んでいたら、日本には「2つの別個の対外諜報機関」が出来るという理解をしましたが的外れでしょうか。

1つは情報集約機関の現内調に手足として公安調査庁を統合して公安警察の一部を加えた内閣府直属の組織で日本にとって最も緊急な北朝鮮と中共支那のみを対象にしたもの。2つ目は外務省傘下の新生対外諜報機関でロシアや中東などの日本にとりそれ程に急を要さない国々を対象にした組織という棲み分けです。

  1. URL |
  2. 2011/06/14(火) 00:54:42 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

 すみません。最近そちらの方面から遠ざかっているので、よくわかりません。私が聞き及んでいるかぎりでは、警視庁外事3課の機密資料流出とかウィキリークスとかがあったので、防諜というより情報保全に関していろいろ制度改革を検討中みたいですが、積極的な諜報ということでは、具体的な話は知りません。
 ちょっと前に「内閣情報官が、中朝国境だかで諜報網作るとかなんとか発言した」とのウィキリークス情報があったとき、「ホンマかいな?」と話題になりましたが、私の聞き及んだかぎりでは「話の流れで尾ひれがついただけ」だったように聞いています。真相は私にはわかりませんが。
 ただ、日本のインテリジェンス改革論議の過去の経緯からすると、ご指摘のような方向に日本の霞ヶ関が動くとは、ちょっとにわかには信じられません。
  1. URL |
  2. 2011/06/14(火) 21:46:20 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

お忙しい中、お返事ありがとうございます。

さっそくチェックしてきます。

  1. URL |
  2. 2011/06/15(水) 18:08:46 |
  3. ヨッシー #-
  4. [ 編集]

仮に情報機関を再編するにしても対象国別に分けるのではなく、日本国内での防諜や情報収集を重視する組織と、日本国外の対象国の情報分析に軸足を置いた組織に分ける事になるのではないかと思います。
元内調室長の大森先生や自民党の町村先生が座長を務めた諮問会議や自民党の会議で何度も「対外情報庁」創設が提言されて実現せずに(無視されて)終わってますが、仮に本気で情報機関の再編をやるなら対外情報庁を内閣府か外務省に創設する事になるのでしょう。(石破さんは情報を官邸に出さない外務省の閉鎖性を嫌って内閣府に置くべきと主張してました。外務省に創設すれば外交官特権を適用出来るという意見もあるようです。)
ただ、NSCの時もそうですが中央官庁は組織や権限をいじられるのには全力で抵抗しますので、小泉政権くらいの強力な指導力のある政権でなければなかなか実現は難しいでしょう。

情報機関とは違いますが、自民党や霞が関の一部には内務省復活を悲願にしてる方々がいます。(特に自民党の町村先生や警察庁、総務省地方自治の役人さま)
自民党の「国家戦略本部 国家ビジョン策定委員会(20.4.24)」が中央省庁再再編案で内務省創設に意欲を見せていますので、近い将来旧内務官僚が悲願にしていた内務省復活が実現するかもしれません。

毎月軍事研究楽しみにしています。黒井先生が最近出されたビンラディン関連の本も買って読みました。大変興味深かったです。

では。
  1. URL |
  2. 2011/07/08(金) 01:50:21 |
  3. 三条 #-
  4. [ 編集]

 過去の経緯をみると、対外情報庁も内務省も可能性はきわめて低いと思います。結局、日本政府は現状にそれなりに満足していて、インテリジェンスを切実には欲していないということなのだろうと感じています(良し悪しは別にして、ですが)。
 私見をいえば、内閣府にちゃんと機能する対外情報庁ができれば、かたちとしては理想ですが、たぶん能力的に無理だと思います。北朝鮮、中国、ロシアのインテリジェンス&ミリタリーのスタディと、対イスラム・テロで英米インテリジェンスと提携するということ限定の、つまりは外事警察の延長ようなものに終わるのではないかと思います。
 私たちメディアの海外取材も同じですが、海外での情報収集活動には語学力と海外経験地が不可欠なので、人材はどうしても外務省に集中しています(各個人の人間としての能力の問題ではないです。念のため)。私は知りませんけれども、外務省もあれだけ人数がいますので、なかにはドラマの織田裕二みたいなことをやりたい人もいるんじゃないかなと思うのですが・・・
 
  1. URL |
  2. 2011/07/09(土) 15:58:27 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

俺ほとんど全部当てはまってる・・・。
影薄いし、何か選ぶのもすっごいもたつくし、
嘘ついた数も星の数ほど。
ツイッター止めたねぇ
というより、やってるけどみんなの見てるだけ~
あとは視力か・・・
  1. URL |
  2. 2012/04/22(日) 21:43:35 |
  3. 匿名 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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