ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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『週刊現代』に記事

 本日発売の『週刊現代』に「フセイン処刑でイラク内戦が本格化する」という記事を執筆。
 ところで、先日、当ブログに「フセインなんて功績なんてなにもないタダの殺人狂じゃん!」という意味のことを書いたが、ここ数日の報道をみると、アラブ社会でフセイン英雄論が広がっている模様。ホントかなあ???
 ということで、アラブ数カ国に電話&メールで知人数人の意見を聞いてみた。と、たしかに新聞やテレビでそういう話は結構出てきているようだが、やはり一般の人はどちらかというと冷めた見方をしているようだ。ただ、ことスンニ派の人のあいだでシーア派脅威論(というか「差別」に近い)が高まっているのは事実らしい。数人に話を聞いただけだからなんとも言えないが、「フセインが英雄」なんてちょっと考えづらい議論だ。

 中東・アラブでは人々のホンネが見えづらいということを、私は『軍事研究』本誌コラムなのでもたびたび書いてきた。独りよがりの思い込みかもしれないが、比較的濃密にあちらの社会とは付き合ってきた自負があるので、「なぜフセイン英雄論が起こるのか」と私なりに考えてみた。
 中東・アラブでは、まずはいつも威勢のいい強硬論が台頭する。だいたい反米だとか反イスラエルだとかの言説が多い。ただし、私の知るかぎり、多くの人は「それはそれ」と割り切って、実際には現実の自分の利益を最大限に優先して何事も考える。生きていくためには当然のことで、そうした裏表の使い分けを、たいていの人は当たり前のことと考えている。
 いいとか悪いとかではなく、そういう社会に彼らは生まれ育っている。そういうところは、かつての共産圏と少し似ている。
 ということで、いろいろ崇高なことを語っていても、そうした政治的な言説を基本的にはみな、互いに信用していない。自分もホンネとタテマエを使い分けているのだから、他人も同様だと考えるのは自然なことだ。反米とか反イスラエルだとかいうのは、あちらの社会では誰も正面からは否定しづらい教条だが、そんなわけで、彼らの関心のメインは内部での抗争(競争)だったりする。
 現在、イラクではスンニ派とシーア派がもう内戦状態に入っているといって過言ではないが、これは宗派対立というよりは、もっと単純に「タダの抗争」だという解説をどこかで読んだ。私も同意見だ。
 たまたま抗争の両陣営が宗派で分かれただけのこと。スンニ派同士でも有力者間抗争があるし、シーア派の主要派閥は現実に内ゲバ状態にある。
 たとえば、日本の心ある人々は、パレスチナでハマスとファタハが内ゲバしていることに心を痛めているかもしれない。が、彼らはもともとそういう人々なのだ。
 ああいう国で取材をすると、外国人取材者はどこに行っても威勢のいいスローガンを聞かされる。インタビューして現地の声を伝えるのが報道なので、そういう声が日本の新聞読者やテレビ視聴者に届けられることになる。それに意味がないとは言わない。
 けれど、そうしたコメントをホントにその発言者自身が信じているのかどうかはまた別の問題だ。実際には信じているのは外国人記者だけかもしれない。
 前の湾岸戦争のときにヨルダンを取材したことがある。パレスチナ人の若者たちが「フセイン頑張れ!」と盛り上がっていた。50がらみのパレスチナ人のオッサンは「あいつらバカだから」と私にこっそり言った。
 イラクとのあいだでタンクローリーを運転してたヨルダン人男性は、「サダムみたいのが大統領でイラク人はホントにかわいそうだなあ」と言っていた。
 しつこいようだが、「フセインが英雄」? それはないだろうと思う。
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  1. 2007/01/15(月) 11:16:01|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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