ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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原発災害に参考にしたい医療専門家の意見

 以前も書きましたが、出身地である福島県いわき市の友人たちとときおり話をします。あちらの現在の関心事はとにかく放射線問題ということです。
 原発災害は一向に収束しませんが、それに関しては「インテリジェンスからいかにバイアスを排除するか」という観点から、反原発活動家よりも原子力工学専門家の意見を参考にするというが、私の基本的な考えです。
 それとは別に、放射線に関しては医療専門家の意見を参考にすべきというのが、私の考えでもあります。本来、医療分野であるはずのことに、活動家や原子力工学専門家の意見が入ってくることで、問題を複雑にしてしまっているのではないか・・・そんな印象を強く持っています。
 避難区域の住人の方々に関しては、同心円の避難区域を設定し、そこに帰れない避難者の方、とくに年配の方は、本当に帰ってはいけないのかな、という疑問があります。避難所生活のためにかえって健康を害したり、人生のトータルの幸福値を強制的に下げるようなことがあってはいけないのではないかな、と思うわけです。
 なかでも疑問なのは、平時の厳しい基準値を杓子定規に有事に適用するのが、本当にベターなのかなということです。こういうことを漠然と感じている方は多いと思うのですが、それは放射線など浴びないほうがいいに決まっていますし、放射線による将来の健康被害は不確かなことが多いので、迂闊に発言できない雰囲気になっています。無責任な発言はもちろん慎むべきですが、では本当に今のままでいいのでしょうか?

 ということで、前エントリーで紹介した『週刊新潮』今週号に、非常に参考になる記事がありました。ジャーナリストの櫻井よしこさんによる「日本ルネッサンス」というコラム連載で、今号のタイトルは「健康被害解決への専門家の声」というものです。
 まだ店頭発売中なので、ぜひご購読をお薦めしますが、大事なことだと思うので、そのエッセンスを紹介したいと思います。

 櫻井さんは同コラムで、放射線による癌治療に携わる医療専門家の意見を紹介しています。あくまで数多くの医療専門家のひとりの意見ですが、非常に大事なことを指摘されていると思います。
▽健康被害が生じる可能性が高いのは、年間100ミリ・シーベルト以上。
▽現在の基準値は年間1ミリ。
▽医療関係者や原発関係者の基準値は、年間50ミリで、5年間で100ミリ。この値でも健康被害は起こらない。
▽1ミリ基準は妊婦、乳幼児、学童には必要。しかし、40代以上であれば、ひとりひとりの被曝線量を管理すれば、医療関係者用基準値(年間20~50ミリ)で問題ない。
▽現在の避難区域のレベルは20ミリ。成人であれば、医学的には発癌しないレベル。
 こうしたことを踏まえたうえで、同記事に登場する医師はこう提言します。
「福島で年間1ミリまでを許容値とする厳しい基準を守った結果、お年寄りが避難所で亡くなったり、働き盛りの人が働けない現状を、40~50歳以上の住民に、医療従事者に近い年間20~50ミリの基準を適用することで変えたらよいのではないか。本人が望めば自宅で暮らせるようにする方が望ましい」
 その条件として挙げれているのは、以下の3点。
▽各人の放射線量を管理
▽子供や若い人の家庭は対象外
▽物資供給・警備の充実

 子供がいる家庭は難しいかもしれません。しかし、避難エリアの多くの世帯は中高年で、そうした世帯こそ避難所生活はつらいことでしょう。
 せめて強制避難ではなく、どちらか自由に選択しできるようにはできないものでしょうか。こうした放射線量と健康被害の関連数値を提示すれば、多くの世帯は自宅周辺の線量を考慮した場合、ライフラインや物資供給さえ担保されれば、帰宅したいのではないかと思うのですが。

追記⇒今週は他にもいろいろ雑誌をいただいたので、いろいろ拝読してみました。著名筆者のコラムも含めて、反原発派の方は概して言葉が激烈ですね。まあ、あまり論評はしません。
 以前、当ブログで「論調が柔軟なほうがインテリジェンス度は高いのではないか」といった意味のことを書きましたが、その意味では今週の『週刊文春』は面白いですね。原発関連の記事がテンコ盛りですが、是々非々という感じで、著名人コラムも含めて、同じ一冊のなかにさまざまな意見が混在しています。
 同誌は基本的に東電批判・原発業界批判路線で、どちらかというと明確に主張を押し出している誌面づくり。文春らしからぬ左翼系の情報源も駆使してメイン記事を作っていますが、その一方で、藤原正彦さんの提言記事で反原発ヒステリーを批判したりしています。編集部内にもさまざまな意見が当然あるわけで、そういうところがうまく反映されているのかもしれません。
「放射能恐怖報道 どこまでエスカレートするのか」という記事も参考になります。問題になるのは、いわゆる内部被曝の危険性の評価ですが、同記事によると、その分野ではまだまだ詳しいことはわかっていないそうです。(なお、当エントリーでも、仮に避難区域を解除するとしても、外出時にマスクをするぐらいは当然のことと考えています。念のため)
 同記事にはちょっとインテリジェンスに関連する記述もありました。いわく「人間には認知曲線があり、中途半端な知識の時ほど『危険だ』と大騒ぎする傾向がある」・・・。
 私の認識では、人のリスク認知は「中途半端な知識の人」「正しい知識の人」「まったく無知識の人」で⇒「顕著に異なる傾向を示す」だったように思います。傾向は条件によって変わりますが。
 ところで、文春のコラムでは、中村うさぎさんの意見に同意。「みんなひとつ」スローガンへの違和感ですね。互助意識が重要なのは当然ですが、人の心の問題ですからね。なんだか同調圧力みたいにちょっと感じてしまうのは、考えすぎ・・・かな。
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  1. 2011/05/14(土) 16:14:56|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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