ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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オサマ・ビンラディンを殺害したCIAタスクフォース&シール・チーム6の連携プレイ

 5月1日(訂正/正しくは現地時間で2日未明)、米軍の急襲であのオサマ・ビンラディンがついに殺害されました。2001年の9・11テロから10年弱。長かったですね。
 ビンラディンが潜伏していたのは、大方の専門家が予想していた「パキスタンのアフガン国境近くの山岳地帯」ではなく、パキスタンの首都イスラマバード近郊の町アボッタバードの隠れ家でした。
 アメリカの軍・情報機関では、ビンラディン追跡は主に2つのシステムで動いてきました。1つは米中央軍のアフガン国内の拠点に設置された統合タスクフォースで、ここは米軍の特殊部隊が中心になり、そこに空軍部隊やCIAなどが参加するかたちになっています。主にアフガン=パキスタン国境エリアの「戦場」を捜索する武闘派の特任ユニットですね。
 他方、CIAも重要標的追跡任務に特化した独自のタスクフォースを、テロ対策センターの指揮下に作っていました。今回はどうやら、こちらが主導したようです。
 アメリカ東部時間1日深夜に行われたオバマ大統領の演説と、米メディア報道によると、ビンラディンの所在情報が最初にもたらされたのは、昨年8月のこと。その後、CIAタスクフォースによる隠密調査の末、この4月29日に正確な隠れ家情報を入手。同日午前8時20分(アメリカ東部時間)にオバマ大統領が最終的に攻撃命令を出したようです。
 その後、翌30日午後3時50分(アメリカ東部時間)に、ビンラディンが確実にそこに滞在しているとの報告が大統領に報告されたとのこと。実際に急襲部隊が攻撃を開始したのは、現地時間で5月2日の午前1時半すぎ頃。銃撃戦は約40分間。ビンラディン本人も銃撃に参加したようですが、最終的に頭部を撃たれて射殺されたということです。
 今回、攻撃を行ったのは、2機のヘリコプター(追記/4機説もありますが、情報が錯綜していて現時点で未確認⇒追記その2/ヘリは4機だったとのこと)に分乗した海軍特殊部隊「シールズ」の25人の隊員たちだそうです。統合特殊作戦コマンドの指揮下にある部隊とのことなので、対テロ制圧作戦能力の非常に高いエリート部隊「シール・チーム6」ですね。なお、アメリカ側に犠牲者は出ていませんが、ヘリのうち1機が故障したため、破壊されたとのことです。
 オバマ大統領は、情報入手にパキスタンの支援が役立ったと語っていますが、今回の急襲作戦は、情報漏れを警戒してパキスタン側には一切知らされず、完全にアメリカの単独作戦だったようです。
 作戦の一部始終は、米本土のCIA本部でリアルタイムでモニタリングされていたらしいです(追記⇒ホワイトハウスで中継)。殺害作戦は統合特殊作戦コマンドの指揮でしょうが、なんといっても情報入手はCIAの大手柄ということですね。

(追記)
 シールズは海軍の特殊部隊なので、ボートや潜水艦などからの海路潜入に長けた部隊ですが、陸上での活動でも、数ある米軍の特殊部隊のなかでも、少人数の軽歩兵チームによる強襲作戦の能力が非常に強力な部隊です。
 たとえば自衛隊では海自の特殊部隊である特別警備隊などは海自の作戦専門の部隊ですが、米軍はそういうのではなく、陸・海・空・海兵隊の特殊部隊を、特殊作戦軍がまとめて運用しています。運用面では、陸軍とか海軍とかはあまり関係ありません。
 特殊作戦軍の中でも、テロ制圧に投入される精鋭部隊を運用するのが「統合特殊作戦コマンド」です。統合特殊作戦コマンドの下には、陸軍の「デルタ・フフォース」と海軍の「シール・チーム6」があります。イラクやアフガニタンのような「戦場」で、テロリスト制圧作戦となれば、このデルタ・フォースとシール・チーム6が、まさに2トップといえます。
 各特殊部隊の特徴を大雑把にいえば、「デルタ・フォース」(正式名称は「第1特殊部隊作戦分遣隊デルタ」は、ハイジャックや市街地での人質占拠事件などのような都市型のテロ制圧に非常に強い部隊といえますが、もちろんアフガニスタンの山中での活動なども充分に対処できます。単に戦闘能力があるというだけではなくて、敵を追い詰めるためのインテリジェンス能力も高いです。洗練されたテクニシャンで、エリート中のエリートという印象です。隊員はグリーンベレーのベテランなどから選抜されますから、メンバーのほとんどは30代以上ではないかと思います。
 シール・チーム6(正式名称は「特殊戦開発群」)は、海軍の「シールズ」の最精鋭で、テロ制圧の切り札といえます。(追記/シールズの全15個チームの1つ。バージニア州ダムレック基地を本拠としています)
 シール・チーム6もテロ対策のインテリジェンス活動を行いますが、デルタフォースや後述するグリーンベレーのようにインテリジェンス活動を本格的に行うというよりは、前述したように、とにかく瞬間的な強襲作戦の戦闘力に優れています。今回、チーム6がビンラディン殺害に投入されたのも、ひとつにはこの戦闘力が期待されたためだろうと思います。
 デルタフォースやシール・チーム6は、CIAなどの諜報機関と連携し、テロリスト追跡に参加しますが、そのため、活動のほとんどが秘密作戦になります。隊員の情報も公開しておらず、メディアの取材も受けません。
 それに対し、オープンな作戦に参加する特殊部隊もあります。
 グリーンベレー(正式名称は「特殊部隊群」。しばしばグリーンベレーAチームというような単位で投入されますが、それは「特殊部隊群作戦分遣隊アルファ」のことです)は、陸軍特殊作戦コマンドの隷下で、主に敵地に潜入しての特殊作戦に長けた部隊といえます。偵察・情報収集・近接戦闘・航空作戦支援などにも対応できますが、破壊工作、友軍訓練、民生活動、心理作戦なども行います。
 陸軍特殊作戦コマンドはその他にも、遊撃戦のスペシャリストである「第75レンジャー連隊」も指揮しています。
 海軍の「シールズ」は、前述したチーム6とは切り離され、海軍特殊作戦コマンドの隷下になっています{(追記/全6500人)。やはり個人レベルでの戦闘力に優れていて、隊員もみな戦闘力のあるマッチョなタイプが多いですが、そのかわり長期戦や緻密な駆け引きが必要な作戦などにはあまり向いていないとの評もあります。
 海兵隊の特殊部隊は「フォース・リーコン」(海兵隊偵察部隊)と通称されていますが、文字通り、テロ制圧というよりは、敵地での長距離強襲偵察に優れています。徒歩で密林・山岳・原野・砂漠などを長期間・長距離踏破しなければならないので、20代の隊員が主流といわれています。海兵隊特殊作戦コマンドの隷下には、このフォース・リーコンから精鋭を集めた「海兵隊特殊作戦連隊」も編成されています。
 特殊作戦軍の指揮下には、その他にもさまざまな専門部隊がありますが、ここではとくに実戦を担う部隊を簡単に紹介してみました。

(追記2)
 情報の端緒は、逮捕されたテロ容疑者の証言から、07年にアルカイダ連絡要員を監視下においたことだったと伝えられています。現時点では、それ以外にタレコミの類があったかどうかはわかりません。情報提供者がいればビンラディン情報に掛けられた超多額の賞金を得ることになりますが、情報源に関する情報は、仮に誰かがいても公式には公表されないのではないかと思います。
 いずれにせよ、それなりの日数をかけての監視が行われたことは間違いないようです。NSAによる通信傍受もピンポイントで行われた可能性があります。
 CIAで情報収集を担ったのは「国家秘密工作部」というスパイ部門でしょう。これは以前は「作戦本部」という名称だったのですが、他の情報機関との連携を強化し、国を挙げてのスパイ活動の司令塔とするという意味を込めて、05年10月に現在の名称に改称されました。
 そのCIA国家秘密工作部の中でも、国際テロの対する情報活動は「テロ対策センター」という部署がビンラディン追跡を取り仕切っていました。じつは05年4月にCIAの上位の「国家情報長官」が設置されると同時に、同長官室内に「国家テロ対策センター」が設立されたのですが、そちらのほうは実質的にはそれほど活躍することもなく、CIAテロ対策センターが現在に至るまで、もっとも重要な役割を果たしています。
 CIAテロ対策センターの内部には、ビンラディン追跡専管のセクションもあります。かつては「ビンラディン班」と呼ばれていたのですが、現時点でどういう呼称になっているかはわかりません。かつてはテロ対策センターに「重要標的班」という部署があって、アルカイダ幹部を追っていたのですが、そのしくみが基本的にはあまり変わっていないのだと思います。
 CIA国家秘密工作部の内部には、準軍事部隊として「特殊活動部」という部署があります。米軍特殊部隊OBがけっこう参加していますが、やはり戦闘力を考慮して、今回はお呼びがかからないようです。
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  1. 2011/05/02(月) 18:57:43|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

おひさしぶり

お久しぶりです。モスクワで一緒でしたA山です。第4第カリフではありませんが、アリーです。どこかの国のイスラム教徒の族長は迫力をつけるため顔大きくみせるようターバンをまく族長がいると聞いていますが、そんなことをしなくても顔がデカいアリーを思い出して頂ければ助かります(別に助かりもしないか)。
ビンラディン殺害されましたか、リベンジでまた大変なことになるんでしょうか。
今日、クライアント先で、昔護国寺近くのK社に黒井さんは勤められていたでしょう。樹林さんという方をご存じですか。アリーと年が一緒で一浪一留しているのでおそらく同時期に会社にいたとおもわれますが。竹さんならしってますかね?
またいつか新宿ででもお会いしましょう。
  1. URL |
  2. 2011/05/02(月) 20:35:54 |
  3. A山 #-
  4. [ 編集]

アリーことA山様、ご無沙汰しております。モスクワではたいへんお世話になりました。諸事順調なようで、何よりです。K林は同期の脱サラ組の出世頭ですね。なかなか面白い男です。
というか、コメントいただけるのはたいへん嬉しいのですが、個人的な話はなるべく直接メールでお願いいたします。拙エントリーに関係するコメントはここでも大歓迎ですが。
まあ、ぜひ竹でも呼んで呑みましょう。
  1. URL |
  2. 2011/05/03(火) 02:17:08 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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  1. |
  2. 2011/05/03(火) 17:47:22 |
  3. #
  4. [ 編集]

ウサマ・ビンラディン殺害指示

ウサマ・ビンラディンを殺害するように指示を出しました。
この経緯については、小説仕立てにして記述しました。
”原作「エシュロンキラー」”という小説で、
アルファポリス(http://www.alphapolis.co.jp/
の第4回ミステリー小説大賞(2011年7月1日
~31日)にエントリーしています。
宜しかったら、アルファポリスに市民登録して、
”原作「エシュロンキラー」”を読んでください。
そして、”原作「エシュロンキラー」”に投票してください。

直リンクは、http://www.geocities.jp/internetshow2000/index.htmlです。
  1. URL |
  2. 2011/07/03(日) 17:59:11 |
  3. 名無しのコン太 #mQop/nM.
  4. [ 編集]

小説方面はとんと疎くてよくわからないのですが、是非がんばってください。
  1. URL |
  2. 2011/07/09(土) 15:34:13 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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