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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

シリア脱走兵の告白映像

 シリアではさらにデモが継続していますが、治安部隊や軍は実弾射撃による弾圧をさらに強化しており、犠牲者がどんどん増えています。少なく見積もっても500人以上が一方的に殺害されており、完全に「虐殺」レベルになっています。
 南部に展開中の第5師団の一部に反乱の動きもあるようですが、全体的には軍の謀反はまだ起きていません。反政府側は懸命に軍の将兵に合流を呼びかけていますが、なかなかうまくいっていません。
 とはいえ、少しずつ脱走兵も出てきています。その中の1人のインタビュー映像が、本日初めて出てきました。
▽シリア脱走兵の告白
 この映像を流しているシャム・ニュースは、映像発信で反体制派をリードする有力な情報サイトで、映像の信憑性は非常に高いサイトです。当該の兵士はこの映像内で、自分の身分証と認識票を提示していますので、インチキであればすぐにバレますから、本物であると判断していいと思います。
 話の内容の真偽までは判断できませんが、実際にデモ弾圧が行われていますので、こちらもほぼ正直に話していると考えていいと思います。
 この兵士の名前は、ワリード=アブド・カシャアミールといいます。身分証を明らかにしていますので、本名ですね。本人いわく、徴募兵で、ダマスカス市内・北東部丘陵の「共和国防衛隊」カーシユーン司令部第227部隊の所属です。
 4月23日、指揮官に「テロリストを逮捕しにいく」と告げられ、250人の仲間とともにバスに分乗して、ダマスカス東部郊外のハリスタに行きました。彼いわく「この250人は『サイカ』のメンバー」とのこと。サイカ(稲妻)とは、かつてシリアが運営していたパレスチナ人武装組織の名前として有名ですが、おそらくこのサイカはそれとは直接は関係なく、共和国防衛隊内の部隊の通称のようなものだと思います。
 で、このときこのサイカ部隊は、通常の迷彩服ではなく、市街地特殊作戦用の黒色の戦闘服を着用し、実弾と銃を装備していました(この映像では彼は迷彩服なのですが、後でどこかで入手してこの映像のためにわざわざ着替えたものと思われます)。
 バスを降りると、丸腰のデモ隊をアムン(治安部隊)とムハバラト(秘密警察)が銃撃していて、たいへん驚いたと言います(彼は「アムンとムハバラト」と言っていますが、どこまで正確に認識しているのかは不明です)。
 すぐに、指揮官から射撃命令が出ました。彼は丸腰の市民を撃つことが出来ず、他の4人の仲間とともに、武器を捨ててデモ隊に参加しました。その際、部隊から狙い撃ちされて、仲間のうちの1人は肩に被弾したといいます。

 実名・身分を明らかにした非常に勇気ある行動と思います。こうした映像が他の将兵たちに勇気を与えるといいなと思うのですが。

 こちらはホムスのデモ弾圧。たいへんな緊迫感です。
▽ホムスのデモ弾圧
 下は銃撃される人々。こういう目に遭えば、もう政府は許せないと思うでしょうね。
▽銃撃される人々
 下はダラアの集会で少女が演説している場面。たいへんな熱気で、もう完全に革命の光景ですね。
▽少女の演説

 以上は数あるネット映像の一部にすぎませんが、本当に世界中の人に見ていただきたいものだと思います。
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  1. 2011/05/01(日) 14:18:56|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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