ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ミトロヒン文書とレフチェンコ・メモ

『ワールド・インテリジェンス』第4号にも書いたが、元KGB職員のワシリー・ミトロヒン氏(故人)とイギリスのインテリジェンス・ヒストリーの大御所であるクリストファー・アンドリュー氏の共著『ミトロヒン文書Ⅱ』と、日本の公安筋が作成したレフチェンコ・メモを付き合わせると、いろいろ興味深いことが見えてくる。
 たとえば、日本の新聞各紙が書かないところが、マスコミ内部のエージェントたちの件だ。レフチェンコ・メモには、サンケイ新聞編集局次長の山根卓二氏(コードネームは「カント」)、読売新聞の外山四郎記者(トマス)、テレビ朝日の三浦甲子二専務(ムーヒン)、『インサイダー』の山川暁夫氏(バッシン)の実名が明らかにされているほか、実名は不明ながら、サンケイ新聞東京版記者で山根編集局次長を補強しうる「デービー」(コードネーム・以下同)、韓国問題専門家の東京新聞記者「カミュ」、共同通信記者の「アレス」、大手新聞元モスクワ特派員の「アギス」、フリージャーナリストの「ドクター」の存在が明記されている。
 このうち、「友好的人物」あるいは「無意識の協力者」とファイルされている人物が、外山四郎氏、三浦甲子二氏で、その他は意識的な協力者ないしはKGBの正式エージェントということになっている。
 一方、ミトロヒン文書では東京新聞記者の「コーチ」、朝日新聞の「BLYUM」、読売新聞の「SEMIYON」、産経新聞の「KARL」(あるいは「KARLOV」)、東京新聞の「FUDZIE」、社名不詳大手新聞の「ODEKI」、社名不詳ジャーナリストの「ROY」、詳細不明の「FET」(あるいは「FOT」)の存在が指摘されている。ミトロヒン文書とレフチェンコ・メモにあるエージェントのコードネームはいずれも一致しないが、一部に同一人物がいるものと推定される。
 もっとも、記者の場合はネタ元としてソ連大使館員あるいはKGB要員に接触することもあるだろうから、彼らが必ずしもホンモノのエージェントだったとは断定できない。KGB要員側が勝手にエージェントにファイルしているケースも考えられる。
 その点、これは明らかに悪質だと考えられるケースもある。
 ひとりはレフチェンコ・メモに「フリージャーナリストの『ドクター』」と記載されている人物である。レフチェンコ証言によれば、彼は元共産党員で、ただ情報を提供するだけでなく、KGBの秘密活動をバックアップしていたという。これはもう犯罪行為といえる。
 もうひとりは、ミトロヒン文書で「社名不詳ジャーナリストのROY」となっている人物だ。この人物について、ミトロヒン文書の説明文では「金銭目的でKGBに協力。日本の防諜機関上級幹部のリクルートに貢献」となっている。
 じつは、この説明に符合する人物がレフチェンコ証言にもある。共同通信記者の「アレス」だ。レフチェンコ証言には、アレスは「公安関係の友人から膨大な秘密情報を入手し、KGBに渡していた」とある。レフチェンコの回想録『KGBの見た日本』では、こんな表現もある。
「ソ連のために働く日本在住の優秀なジャーナリストがいる。有力通信社勤務で、若い頃、プロニコフというKGB東京支部員にリクルートされた。日本の公安関係機関の秘密情報をもう何年も提供してくれていた」
 こうしたことから、『ミトロヒン文書Ⅱ』でもROY=アレスと断定されているのだが、これらの記述をみるかぎり、ROY=アレスは完全なスパイといえる。公安に食い込んでいた優秀な記者というならば、もしかしたら著名なジャーナリストなのかもしれない。KGB側は金銭目的としているが、記者ならばバーターでソ連情報を入手していた可能性もある(当然ながらKGB要員は自己保身のため、自分が記者にネタをバーターしたとは報告しない)。とするならば、ROY=アレスはソ連情報に強い記者として共同通信内で鳴らしていた人物だった可能性もある。
 レフチェンコ証言によれば、アレスは70年代半ばに日本の防諜機関にマークされたために一時スパイ活動を縮小していたが、77年より再び活発に動き始めていたという。では、70年代前半に公安情報とソ連情報に強いとして鳴らした共同通信記者とは誰か? そうたくさんいるわけではないだろうから、同社関係者ならだいたいアタリはつくのではないか。

 そんなROY=アレスにエージェントに引き込まれた公安機関幹部も問題だろう。レフチェンコ・メモによればコードネーム「シュバイク」。ミトロヒン文書には、「ROYは日本の防諜機関幹部(KHUN)をリクルートするにも役立った」とあるが、このKHUNがシュバイクだったのか。あるいは、レフチェンコ・メモには元内閣調査室員「マスロフ」がKGB正式エージェントだったとあるが、KHUNとマスロフはともに「中国情報に強い」とあるので、こちらが同一人物かもしれれない。いずれにせよ「KHUN」あるいは「シュバイク」あるいは「マスロフ」の行動も問題だろう。

 日本の政治家としては、レフチェンコ事件の際にすでに実名がいくつも漏洩しており、大きな問題になった。レフチェンコが実名を明らかにしたのは、自民党の石田博英氏(フーバー)、社会党の勝間田清一氏(ギャバー)、伊藤茂氏(グレース)、佐藤保氏(アトス)である。(その他、レフチェンコ・メモに実名が記載されている人物に上田卓三氏がいる)
 このあたりはKGBに利用されたということなのだろうが、ミトロヒン文書によって、じつはかなり悪質だったのではないかとの疑念がもたれるのが、石田博英氏だろう。この人物は親ソ派で知られた人物だったが、ソ連側の意向を受けて政府中枢にいろいろ働きかけていたらしい。ソ連側が嫌った駐モスクワ日本大使の召還を福田首相に意見していたなどという話も指摘されており、明らかに親ソ派政治家の域を超えているようにみえる。
 ミトロヒン文書では、自民党関係者にさらに2人のエージェントがいたと指摘されている。自民党議員の「KANI」と、田中角栄の側近の「FEN」である。
 このうち、FENはおそらく、レフチェンコ・メモに「フェン・フォーキング」というコードネームでファイルされていた人物と同一人物と推定される。じつは、レフチェンコ事件の際、関係者がいちばん大きな関心を寄せたのが、このフェン・フォーキングの正体である。レフチェンコ・メモによれば、彼は「自民党員で、党内の一派閥に影響力を及ぼしえる立場にいる。KGB東京支部の中国班が担当している」とあった。
 このフェン・フォーキングの正体について、マスコミでは一時期、レフチェンコのアメリカ議会証言直後に自殺した中川一郎代議士ではないかとの噂があった。だが、中川議員であれば、わざわざ自民党員と記すのはおかしい。レフチェンコ・メモの説明文からは、議員本人ではなく、派閥領袖クラスの大物議員の大物秘書のような立場の人物が強く示唆される。
 ということで、これは誰も表立っては言わなかったが、マスコミ記者のあいだでは、「鈴木宗男さんじゃないの?」という噂も根強かった。なぜKGB中国班かというのは謎だが、自民党員で一派閥に影響力を及ぼしえる人物で、ソ連との関係が深い人物ということではまさにドンピシャリだったからだ。
 だが、今回のミトロヒン文書によって、鈴木氏でないことが判明した。「田中角栄の側近の自民党員」であることが明らかにされたからだ。
 ということは、謎のフェン・フォーキングはいったい誰なのか? 田中角栄本人あるいは側近議員の大物秘書、金庫番、後援会のドン、のような立場の人物だったのか?

 この他、ミトロヒン文書から、とくに見逃せないケースがいくつか明らかになっている。明らかにKGBスパイとして活動した外務省職員の「RENGO」および「EMMA(女性)」。レフチェンコ・メモには「レンゴー」は外務省職員で夫妻でエージェントだったとされているので、2人はおそらく夫婦で外交官だったのだろう。彼らのスパイ活動は明らかに違法と思われる。
 また、ミトロヒン文書で「MISHA」、レフチェンコ・メモで「ナザール」と記載されているおそらく同一人物の外務省電信官は、ハニートラップでKGBに篭絡された後、金銭報酬で日本の外交公電をKGBに流し続けるという明らかな犯罪行為を長年続けた人物ということである。レフチェンコ・メモとミトロヒン文書に存在が記された日本人エージェントのなかでも、もっとも日本に損害を与えた悪質な人物といえる。
 この他、これはマズイのではないかと思われるケースを挙げてみよう。
 たとえば、そのほとんどが駐ソ連日本大使館勤務経験のある外交官たちがいる。ミトロヒン文書では「OVOD」(2回もハニートラップに引っ掛かった)、「MARCEL」などの存在が明記されている。MARCEL経由では駐ソ連日本大使館に派遣されていた防衛駐在官「KONUS」もリクルートされている。防衛駐在官がKGBにリクルートされていたという話は今回のミトロヒン文書で初めて明らかになったことだ。
 社会党議員のブレーン的存在で、親ソ派研究者の指導的立場にあった大学教授の「ヤマモト」も、これらの資料から、KGBエージェントであることが明らかな人物である。ミトロヒン文書によれば、ヤマモトがKGBにリクルートされたのは77年。それ以降、活発に政治的な活動を開始した著名な教授とはいったい誰か? これも関係者にはなんとなく「あああの先生では・・・」とわかるのではないだろうか。
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  1. 2007/01/08(月) 01:37:55|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:2
  4. | コメント:2
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コメント

ウイキでは、石田博英がKGBエージェントだと記述しています。
それに、三宅雪子衆議院議員は、石田博英の孫だとウイキに書いてありますね。
じいさん、まごで、工作活動しているように思います。
  1. URL |
  2. 2010/05/18(火) 08:52:37 |
  3. ぐりぐりももんが #NhtfC5XQ
  4. [ 編集]

ぐりぐりももんが様 コメントありがとうございます。
しばし所用があり、御礼が遅れてもうしわけありませんでした。
今後ともよろしくお願いいたします。
  1. URL |
  2. 2010/05/31(月) 16:43:03 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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