シリアの反政府運動はいまだ萌芽の状態ですが、流血が各地に広がっていて、状況はきわめて流動的になってきました。今後、いっきに政権転覆へということになるかもしれません。
ですが、問題はその後です。エジプトでは軍が、リビアでは寝返った高官や軍幹部がいましたが、シリアでは反独裁運動のリーダーがまったくいません。他の中東各地での民主化運動の高まりを受けて、▽SNSでデモ呼びかけるも不発⇒南部ダラアで少年たちが反政府運動のイタズラ⇒治安機関が弾圧⇒住民怒る⇒さらに弾圧⇒大規模デモ⇒弾圧で死者多数⇒SNSで情報伝わる⇒他の町でも抗議運動⇒弾圧、という流れでここまで来ました。
あまりにも長いあいだ独裁が続いていたので、反乱側も弾圧側7もどうしたらいいのかよくわからず、当初は手探り状態でしたが、いったん流れが出来れば、あとはいっきに動くことになったわけです。
現在のアサド大統領やアシフ・シャウカト陸軍副参謀長ら政権中枢は、父ハフェズ時代の古参幹部をほぼ一掃しており、流血で権力を築いてきた父親世代とは違いますから、カダフィのように徹底抗戦するかどうかはわかりません。性格的にもっとも強硬派なのは、大統領の弟のマヘル・アサド共和国防衛隊司令官です。さらなる流血騒動へエスカレートするかどうかは、この人物がカギを握っています。
いずれにせよ問題は、この国では権力がアサド家とその取り巻きに集中していたので、政治家にも軍部にも有力な〝次期指導者〟がまったくいないことです。反政府陣営でもっとも実力があるのは、先代のハフェズ・アサド大統領の弟で、最大のライバルでもあったリファアト・アサド元副大統領ですが、シリア国内ではものすごく評判が悪く、民主派とは相容れません。
その他には、海外亡命中の有力政治家にアブドルハリム・ハッダム元副大統領がいますが、この人物も国民人気はさっぱりです。シリアの反体制派としては、伝統的にモスレム同砲団とクルド人組織がありますが、これも両者ともマイノリティで、国内の影響力は非情に限定的なものです。イランと関係が深いシーア派のグループもありますが、やはり同国では特異なマイノリティにすぎません。
つい今しがた、シリアの駐インド大使が抗議辞職という未確認情報がSNSで流れました。政権内部から今後、どういった人物が離脱するかというのも注目されます。
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- 2011/03/26(土) 10:40:43|
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