ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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リビア軍VS英米軍?

 リビアでは、カダフィ派の軍が反体制派への反撃を開始し、本格的な内戦の様相を呈してきました。反体制派の側も組織をまとめ、軍事的にも「反体制軍」の整備に入っているようです。現在のところ、英米軍などの地上展開は要請されていませんが、とりあえず飛行禁止措置が求められる方向になっているようです。
 ということで、現在、英米軍がリビア上空の飛行禁止措置をとるかどうかということに焦点が移ってきました。

 ここで、まずはリビア軍の戦力を確認しておきます。
 政変前のリビアの兵力は、正規軍が約7万6000人。それに民兵が推定で4万数千人いたと思われます。それプラス予備役が4万5000人です。
 陸軍は職業軍人2万5000人と徴募兵2万5000人の計5万人。これらの兵力が、国境警備×11管区、地域防衛×4管区に分けられています。
 陸軍の主な部隊は、保安旅団×1個、戦車大隊×1個、機械化歩兵大隊×10個、歩兵大隊×18個、特殊部隊×6個、砲兵大隊×22個、地対地ミサイル旅団×4個、防空大隊×7個です。まあ普通な印象ですね。
 このうち、カダフィの7男であるハミス・カダフィが率いる「第32旅団」(通称「ハミス旅団」)がトリポリのカダフィ邸周辺を警備しているのですが、これが現在3個ある体制保安部隊(合わせて兵力1万名)の最強部隊で、ヘリや装甲車両を保有するほか、近代的な通信設備も配備されて、圧倒的に近代化された部隊とみられます。地方に出張って反体制派弾圧に乗り出している中核部隊もこのハミス旅団で、外国人傭兵もこのハミス旅団が仕切っていてるとの情報があります。
(追記⇒英米メディアなどの情報によると、カダフィ派の部隊はこの7男ハミスと、もともと軍・治安部隊を統率していた4男ムタシムに加え、以前のエントリーでも紹介したようにダメ息子として有名だった3男サアディと5男ハンニバルによって指揮されているようです。サアディとハンニバルはほとんどまともな軍事教育を受けていなかったはずですが、結局、独裁維持は息子頼みということになるわけですね。この息子たちの階級ですが、英米メディアではサアディが大佐、ムタシムが中佐、ハンニバルが中尉、ハミスが大尉という情報がありますが、よくわかりません)

 BBCなどイギリス各メディアの報道によると(ウィキリークスの米公電情報にもハミス旅団についての詳細な報告があります)、ここ数年、カダフィの次男のセイフ・イスラム・カダフィとハミス・カダフィの兄弟がイギリスとかなり接近していて、09年にはイギリス陸軍の特殊部隊である「陸軍特殊空挺部隊」(SAS)がリビア特殊部隊の訓練を行ったと報じられています。このリビア特殊部隊はおそらくハミス旅団内の特殊部隊と思われます ということは、現在、反体制派弾圧を主導している部隊を、これまでイギリスが半ば〝育ててきた〝ということになります。後述するように、イギリス軍はすでに水面下でいろいろ動いていますが、そういったわけである程度、人脈や土地鑑があることに加え、責任も感じているのかもしれません。

 リビア陸軍の装備は旧式ですが、北アフリカの5万人の陸軍としては装備は充実しているほうだといえます。
 陸軍の主な装備は以下です。
 戦車は2025台。T-72×200台、T-62×100台、T-55×500台、T-54×1040台。その他に、歩兵戦闘車BMP-1×1000台、装甲兵員輸送車BTR-50/60×750台、ブラジル製偵察装甲車EE-9 ×70台、旧ソ連製偵察戦闘車BRDM-2 ×50台などなど。
 このうちどれほどが反体制派に流れたかは不明ですが、それなりの陸上戦力です。
 野砲は2421基。うち自走砲は444基で、122mm砲、130mm砲、152mm砲、155mm砲などです。
 ロケット・ランチャーは830基で、うち107mm Type-63が300基あります。
 地対地ミサイルはフロッグ-7 とスカッド-Bです。

 米軍の空爆を受けた経験のあるリビアは、対空兵器を多数保有していますが、いずれも旧式のもの。対空ミサイルも多いですが、SA-2ガイドライン、SA-3ゴア、SA-5ガモン、SA-7グレイル、SA-8b ゲッコー、SA-9ガスキン、SA-13ゴファーなど、いずれも旧式の旧ソ連製です。
 対空砲も57 mm や23 mm、40mmなど多数をもっています。

 他方、リビア空軍ですが、そちらもそれなりに整備されてはいますが、やはり装備はかなり旧式のもので、米英軍などを相手にした場合には、まったく無力といっていいでしょう。
 ただし、国内反体制派への攻撃ということなら、それなりに力を発揮することになりそうです。
 空軍の兵員は1万8000名。空軍基地は13箇所。空軍は現時点では反体制派へ転じた部隊は少ないようです。
 リビア空軍の主な装備は以下のとおりです。
▽ミラージュF1 BD/ED 多目的戦闘機
 4機がありましたが、うち2機が2月21日にマルタに亡命。残り2機となりましたが、うち1機が23日に撃墜されたと報じられています。とすると、残りわずか1機ということになります。
▽MiG-23 BN/MS/ML/UB 対地攻撃機・要撃機
 全部で124機。ベンガジおよびタブルクの空軍基地にあった機は、反体制側の手中に転じたと思われます。
▽Su-24MK爆撃機
 3機。爆撃機が反体制派攻撃に使われたとの情報は、今のところありません。そうなったらもう単なる虐殺ですが。
▽Su-22M3/UM-3K対地攻撃機
 全部で39機。1機が2月23日にアイダビヤで反体制派に撃墜されています。
▽MiG-21要撃機
 全部で25機。古い機体ですね。
▽Mi-24ハインド重攻撃ヘリ
 38機。 1機が2月28日にミスラタで反体制派により撃墜されています。
▽J-21ジャストレブ軽攻撃機
 旧ユーゴスラビア製の旧式機。13機保有。
▽G-2ガリブ軽攻撃機
 旧ユーゴ製の旧式機。116機保有。
▽L-39ZOアルバトロス軽攻撃機
 チェコ製の旧式機。110機保有。
▽Il-78空中給油機
旧ソ連製。4機保有。
▽Mi-14 中型ヘリ
 旧ソ連製。12機保有。
 その他にも輸送機や輸送ヘリ、訓練機などを多数保有しています。
 また、空軍にも対空兵器は多いです。SA-2ガイドライン地対空ミサイルは88基ありますが、少なくともタブルクにあった2基は反体制派の手に落ちたと思われます。
 その他、SA-3 ゴア×10基、SA-6ゲインフル×43基などがあります。
 これらの航空戦力を、カダフィ政権側は反政府勢力への攻撃に使おうとしていまずが、そうなれば大量殺戮となる可能性もあります。そのため、飛行禁止区域の設定などという話が出てきているわけですが、仮に米英中心の多国籍軍が飛行禁止区域を設定すれば、リビア空軍の航空戦力レベル程度なら、ほぼ完璧に抑えられるでしょう。

 これらの陸軍・空軍に比べると、リビア海軍の出番はなさそうです。英米軍を相手にするには弱体すぎるし、反体制派攻撃にも使われなさそうだからです。
 いちおう紹介すると、リビア海軍の要員は8000名。艦艇は全35隻で、その主力は2隻のフリゲートと2隻の潜水艦です。
 その他の装備としては、コルベット×1隻、ミサイル艇×11隻、哨戒艇×1隻、揚陸艦×1隻、エアクッション艇×2隻、掃海艇×4隻、輸送艦×10隻など。その他に、固定翼機やヘリが若干あります。

 さて、こうしたリビア軍に対し、国際社会はどう対処するのでしょうか?
 今のところ明らかになっているのは、米中央軍が、海兵隊400名を乗せた強襲揚陸艦キアサージと、ドック型輸送揚陸艦ポンセの2隻を地中海に移動させ、リビア近海に展開したことです。
 トリポリで米国大使館あるいは同盟国の大使館、さらには何らかの外国施設、重要な石油施設などが危険に晒された場合に、強襲揚陸する可能性があります。
 キアサージは本来は、第26海兵遠征隊の水陸両用群と行動していましたが、同部隊はすでにアフガニスタンに展開しているため、今回の400名はノースカロライナ州キャンプ・レジューンの第2海兵師団第1大隊から派遣されています。
 また、イギリス軍の特殊部隊である前出のSASと海軍特殊部隊(SBS)の要員がリビアに急派され、石油施設で立ち往生していたイギリス国民ら150人の救出にあたったということです。
 また、イギリス各紙の報道によれば、SASはさらにリビア国内の化学兵器貯蔵施設を急襲する作戦を準備中との情報もあります。
 当面、軍事面で注目されるのは、飛行禁止措置が実行されるかどうかです。現在、ロシアとフランスが反対のようなので、国連安保理のお墨付きは出そうにないため、米英プラス伊という多国籍軍による作戦となる可能性が高いですが、今のところアメリカ当局者は慎重な物言いに徹しており、どちらかというとイギリスが牽引役になっています。
 仮に実施となれば、キプロスのイギリス軍基地、イタリア軍基地、トルコのインジルリク空軍基地あたりが出撃拠点になりそうです。前述したような旧式のリビア軍相手なら、軍事的にはそれほど難易度の高い作戦ではありませんが、常設の警戒態勢となれば、かなりの経費が必要となることは必至です。
 アメリカとしては、その前にさっさとカダフィが諦めてくれればという思いでしょうが、あの人はそう簡単に諦めそうもないですね。
※追記⇒その後、国連安保理が飛行禁止区域設定と民主派保護活動の容認を決議しました。ロシア・中国・ドイツは棄権。フランスは当初こそ慎重な態度でしたが、イギリスへの対抗もあってか一転して積極的な軍事活動容認に乗り出しました。アメリカも当初は消極的でしたが、賛成に転じました。というわけで、カダフィ派への空爆作戦は英仏米が主導するかたちになっています。
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  1. 2011/03/03(木) 14:52:57|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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