ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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北方領土、FBI、アフガニスタン

 いくつかのテレビ番組を視聴しての雑感です。
 まずは、昨日のNHKスペシャル『北方領土 解決の道はあるのか』です。よく取材されておりまして、北方領土問題がきわめてハードルが高いことを経緯検証から浮かび上がらせています。「解決の道はあるのか」というサブタイトルで、番組の〆のコメントも同様なものでしたが、実際に番組を見ると、「もう解決の道はないのだ」と言っているような印象でした。私自身、この問題の取材をかなりしたことがあり、きわめて悲観的に感じていますので、それもしょうがないだろうなと感じました。

 番組では日露双方の関係者のインタビューや発言が詳細に紹介されていましたが、やはり「ロシア側は北方領土を返すとの言質を日本側に与えていない」ことがわかります。外務省が間違っていると私は思うのですが、彼らは「2島を返す」とも一度も約束していません。ロシア外務省側が「日本側の頑なな態度を批判」しているのは事実ですが、それが「4島一括にこだわる」ことだとはロシア側は具体的に指摘していません。「4島一括だから動かないのだ」というのは日本側の思い込みだと思います。
 番組では収監前の鈴木宗男さんのインタビューも流していました。私も昨年、まさに対ロシア外交をテーマに、鈴木さんにお話を伺ったことがあります。鈴木さんは、ロシア側が一時期、本気で2島返還を決意していたと信じています。ですが、それはあくまで鈴木さんが交渉の過程で「そう感じた」というだけで、あちらの責任者が約束した話ではないわけです。もちろん鈴木さんほどの方がそう感じたのですから、交渉相手の誰かがそれらしきことを仄めかしたことはあったのでしょう。ですが、それはおそらく仄めかしただけだったのではないでしょうか。
 いくつか異論を書くと、番組では、90年代に国民経済が崩壊したロシアは、日本の経済協力を得るために領土を売ろうとしたかのような表現がありましたが、ロシア側担当者がインタビューで答えていたように、それはないと思います。領土問題で妥協すれば、最盛期のエリツィンでさえ失脚していたでしょう。エリツィン政権時代、モスクワでいろいろな方に話を聞きましたが、私の見聞でもそうでした。
 これは単なる私の推測ですが、ロシア外務省のなかに、「日本側が大きいほうの2島の主権を放棄するなら、小さいほうの2島の返還の可能性について話し合いをスタートさせてもいいのではないか、というくらいのことはクレムリンに打診できるかもしれない」と考えた人はいたのでしょう。「2島放棄+2島交渉継続」という、連中の「新たなアプローチ」ですね。以前も書いたことがありますが、実効支配している側はそれくらいアドバンテージを持っています。
 中国など他国で領土問題の妥協がありましたが、それらは現実上の「係争地」でした。日本の北方領土に関して、日本政府は単に言葉上の話をしているだけで、ロシア側には痛くも痒くもありません。
 北方領土でなにかしらの成果を本気で目指すなら、「係争地」にするほかありません。ロシア側がアクションを始めてますので、日本側もすかさずアクションを起こすくらいでないと話になりません。むろん軍事的なアクションも含みます。北方領土正面を軍事的最前線にして一触即発の状態にするくらいでないと、ロシア側を動かせないでしょう。
 日本政府は「国際法的にはわが領土」と繰り返し述べていますが、それなら国際社会に堂々と訴えるべきです。最低限、「国際問題化」+「軍事問題化」を仕掛けないと、事態は動かないのではないかと思います。言うまでもありませんが、私自身が「そうせよ!」と言っているわけではありません。
 番組の終盤、前原外相がインタビューに答えて「両国の指導者が決意を持って問題解決にあたることが求められます」というような意味のことを語っていますが、あちらのリーダーはあちらの国益のためにすでに動いています。

 ところで、やはり昨日視聴したのですが、ディスカバリー・チャンネルの『FBIが追う指名手配犯ワースト10』という番組を見ました。この分野は私のもっとも得意分野であり、内容はだいたい知っていることばかりだったのですが、ちょっと驚いたことが1点ありました。
 98年にアフガニスタンでウサマ・ビンラディンのインタビューをとったことで有名なABCテレビの敏腕記者ジョン・ミラー氏が、なんとFBIの広報担当官として番組に出ていたのです。花形記者からFBIへ転身って、日本ではまず考えられないですね。さすが転職が当たり前のアメリカです。

 最後は、数日前にやはりディスカバリーで拝見した『レストレポ~アフガニスタンで戦う兵士たちの記録』というドキュメンタリーです。最前線のコレンガ渓谷で戦う米軍小隊の長期密着ドキュメントで、2010年のサンダンス映画祭グランプリ受賞作だそうです。
 いやあ、凄いドキュメンタリーでした。ある戦闘では仲間が戦死するシーンまで撮影しています。泣き崩れる兵士もいますが、指揮官が激しい戦闘中にも冷静に対処する姿がありました。タリバン側の話は出てきませんが、米軍兵士の日常がよくわかる秀作です。レストレポというのは、戦死した仲間の名前ですが、彼らは最前線に築いた基地をレストレポ基地と命名しています。年若い兵士たちは、仲間が何人も戦死するような戦場を、日々坦々と過ごします。渓谷の最前線に、ギターだの電飾だの筋トレ用ダンベルだのを持ち込んでいるあたりは、さすが米軍という感じです。
 ただ、番組では帰国後(彼らはイタリアの基地からの派遣)の兵士たちを個別にインタビューしているのですが、彼らが精神的にかなりダメージを受けている様子がよくわかります。
 こういうドキュメンタリーを見ると、私もつい20代の頃の戦場取材の日々を思い出します。とくにシビアだった90年代のボスニア戦線ですね。現代のアフガンも死がごろごろしている戦場ですが、ボスニアもたいへんでした。
 私は当時、戦闘の最前線を撮影することだけをひたすら考えて行動していて、仮に死んでも「しかたがない」と覚悟していました。戦場の最前線では、ここから先は極めて危険だというラインがだいたいわかるのですが、私は自分の意思で、その先の行けるところまで行くことがよくありました。銃弾が目前を飛び交い、ブロック塀や足下の瓦礫で弾けたり、砲弾が飛来し、ついさっきまで話していた兵士が血まみれで倒れているような場所ですから、死はとてつもなくリアルなもので、以前書いたことがあるように、自分自身も迫撃砲弾に当たってほとんど観念したことがあります。
 ですが、そうした時間は濃密なものでもありました。『レストレポ』でも、若き兵士たちは自身の死をある程度はしかたがないものと覚悟し、それでも戦友たちと充実した生を生きます。ただ、私はたとえば戦場から逃げ出すことができますが、兵士たちはそうではありません。タリバン兵士なら、さらにそうでしょう。エンドレスというのはかなり精神的にキツいはずです。
 交代で引き揚げる日、取材者はレストレポ基地の兵士たちに「名残惜しいという気分は?」と問います。兵士たちの答えは明快です。
「嬉しいに決まってるじゃないか」
「もう2度とここには来ないさ」
 そうだろうな、と思います。
 戦場といっても、場所によって緊張感の濃淡があり、シビアな戦場はやはり地獄のような場所です。そこから脱出できたときの安堵感はたいへん大きなものです。しかし、砲撃下の時間はたいそう濃密なもので、その後の平和な日々のなかで、思い出すと懐かしさすら感じることがあります。
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  1. 2011/02/14(月) 12:11:00|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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