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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ムスリム同砲団

 昨日発売の『サンデー毎日』の「エジプト・ショック~どうなる日本経済」という記事で、コメントを採用していただきました。
 エジプトのデモは現在も続いていますが、軍がしっかりと機能していて、現時点では混乱は収拾されつつある印象です。デモ隊は「ムバラク退陣」を要求し、政権側はボスのメンツをなんとか保ちながら、緩やかな妥協の道を探っている状況ですね。問題は野党勢力ですが、懸念していたとおり、モスレム同砲団の暗躍が始まっているようです。
 モスレム同砲団は現在、脱過激主義を前面に押し出してソフト・イメージ戦略を図っていますが、内部はかなりバラバラな派閥の集合体であり、当然ながら過激な勢力も存在します。いきなり反米=親アルカイダに振れることはないと思いますが、反イスラエルはすでに鮮明に出していますから、中東の平和ということではあまりよろしくないアクターになる可能性が高いといえます。仮に同砲団が発言力を高めた場合、内部の強硬派と、各地でコプト教徒と〝抗争〟していたイスラム武闘派がシンクロしたりすると、さらに攪乱要因になっていくかもしれません。
 それにしても、「モスレム同胞団」という日本語訳は誰が考えたのでしょう? 名訳といっていいですね。現地語では「アル・イフワン・アル・ムスリミーン」(AL-IKHWAN AL-MUSULIMEEN)といって、直訳すると「イスラム教徒の兄弟たち」となります。英語では「モスレム・ブラザーフッド」と訳されています。「ブラザーフッド」を「同砲団」と訳した人のセンスは素晴らしいですね。
 同胞団の創設は古く、1928年に教師のハッサン・アル・バンナ(1906~49)によって、ナイル川下流地方のイスマイリアで結成されました。バンナはもともとはイスラム神秘主義教団「タリーカ」(「道」あるいは「方法」という意味。英語の「ウェイ」に相当)に関係していたのですが、そこから社会運動としてのイスラム復古運動に乗り出したのです。
 創設者のバンナは、今のカテゴリーで分ければ、はっきり言って過激派に分類されます。同砲団は瞬く間に100万人近い巨大組織になりますが、バンナはその内部に100~200人の若者たちから成る秘密のテロ組織「特別局」(TANZIM AK-KHAS)を創設し、マフムード・ヌクラシ・バシャ首相など多くのエジプト支配層を暗殺しています。
 その後、バンナ自身も暗殺され、それから組織は迷走しますが、ナセル政権時代にサイード・クトブという指導者が出て、組織そのものがテロ組織化します。クトブはその後のイスラム・テロの元祖というべき人物で、「ジハード団」や「イスラム集団」などのエジプトの過激テロ組織も元をただせばクトブ主義から誕生したような背景があります。「ジハード団」「イスラム集団」は後にアルカイダに繋がっていますから、現在のイスラム・テロの源流のひとつが同砲団だったとも言えます。
 巨大組織モスレム同胞団は早くから他の国に支部を広げてきました。エジプトの〝本家〟が各国の〝分家〟に指示を出すような関係ではありませんが、人的ネットワークは今でもあります。
 同胞団主流派がソフト路線を打ち出しているのが、どれほどホンモノなのかはわかりません。世俗主義が根強い一般社会への迎合かもしれませんし、単にムバラク強権独裁政権下でのカムフラージュだったかもしれないわけです。私がいま興味あるのは、現時点でのモスレム同胞団の内部事情なのですが、なかなかそれがわかるOSINT資料が見つかりません。

追記)今しがたロイターで見たのですが、昨日スレイマン副大統領が語ったところでは、デモ騒擾のドサクサに脱獄した囚人たちのなかに、アルカイダ系のイスラム過激派やヒズボラのメンバーたちもいたとのことです。エジプト北部ではすでにテロも起きていますが、今後の動向も懸念されますね。
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  1. 2011/02/09(水) 13:37:40|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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