ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ウィキリークスは是か非か

 昨夜、大阪毎日放送ラジオの「Radio News たね蒔きジャーナル」に電話出演させていただき、ウィキリークス問題についてお話させていただきました。テーマは「ウィキリークスは是か非か」ということでした。
 結論を言ってしまえば、問題はウィキリークスのほうではなく、アメリカの機密情報管理であり、ひいてはネット時代の機密情報管理のほうにあるというのが、私の考えです。
 ウィキリークス自体は、以前からある暴露系サイトの一種にすぎません。以前、当ブログでも紹介したアメリカの「クリプトム」を大規模にしたようなものです。こういうものは以前からあります。ウィキリークスを内部告発サイトと捉えるからモラル面が問われるのですが、暴露系サイトと考えれば、それほど存在として新しいものとはいえません。暴露系サイトにしても、運営者や協力者は、情報は公開されたほうがいいという信念でやっていますから、そこで議論しても、こういうものはなくならないと思います。情報公開のハードルがいっきに低くなるのがネットの特徴ですから、こうしたものはネットがあるかぎり存続していくと思います。
 もっとも、ウィキリークスは多くのスタッフ、ボランティア協力者、資金提供者がいて、それなりにシステマティックに運営されています。個人情報を守ることを信条とするスウェーデンのホスティング・サービスを利用しており、複数分散しているといわれるサーバーもログをとっていないといいます。暗号もかなり高度なものが使われているようです。こうして情報提供者が特定されないように徹底した措置がとられています。

 ウィキリークスはむしろ他の暴露系サイトよりも、情報がそのままアップされないだけ、有害情報の流出に対してはまだかなりマシなほうです。クリプトムや2ちゃんねるが、基本的に自由に書き込めるのに対して、現在のウィキリークスは、情報の公開にあたっては、協力関係にあるマスコミやジャーナリスト、専門家の精査を経ています。
 ウィキリークス側はそうしたシステムを採用することにより、自分たちもジャーナリズムの一部だと認識しているようです。ジャーナリズムは昔から、機密情報を入手することがひとつのれっきとした業務であり、それを有害でないかたちで人々に知らせることを任務としています。ウィキリークスはジャーナリズムの手法を一部に取り入れていますが、それは偽情報を排除するという点に力点が置かれていて、情報自体はもともと「すべて暴露すべき」という考えのようです。
 仮にウィキリークスを閉鎖させたとしても、ネットで情報がばら撒かれるしくみは残されます。ログでIPアドレスを特定しても、本気で注意深くやれば、不特定多数が使用できる端末を使うことで身元を隠すことは可能です。明らかな犯罪に関与していれば、ネット業者がログ情報を捜査当局に開示することもありますが、原則的には個人情報保護は業者にとっても信用の問題になりますから、そのハードルは高いです。
 たとえば、警視庁公安部テロ資料流出で、国内の多数のネット業者が警察に協力したようですが、それはこの資料が人道上看過できないレベルの危険文書であるという特殊な事情であるからです。それでも協力を拒否した業者に対しては、被疑者不詳の偽計業務妨害で捜査協力を求めたとのことですが、ルクセンブルグの業者などからは協力が得られていないようです。
 これからの時代というのは、ウィキリークスがあろうとなかろうと、ネットによる情報流出はいつでも起こりえます。精査されない生情報がネットで拡散するということは、今後も止められないと思います。
 そうした時代には、できることといえば、機密情報の管理を厳格化することぐらいしかないのではないかと思います。今回のウィキリークス事案が画期的なのは、ウィキリークスの存在ではなく、おそらくたった一人の内部情報提供者が、簡単に信じられないほど大量の機密情報を入手できてしまったということにあるのだと思います。ウィキリークスはたまたまこの内部情報提供者の受け皿になったということにすぎません。そこに今回の事案の最大の問題があるのだと思います。
 まだ実際のところはわかりませんが、いま出ている報道によれば、今年5月に「自分で自慢して捕まった」という23歳のアメリカ陸軍上等兵がほとんどの情報源の可能性が高いようです。彼はSIPR(シッパー)ネットという部内情報ネットワークを通じて、簡単に情報をダウンロードしたとのこと。報じられているところでは、この機密情報ネットワークに、なんと50万人もの人間がアクセスできたということです。50万人もの人間がアクセスできる情報を守ることは不可能です。
 民主主義を守るためには情報の公開が原則ですが、同時に機密情報を厳格に守ることも必要です。これらは両立すべきものではないかというのが、私の意見です。ネット以前であれば、機密情報が漏洩しても、メディア側が内容を精査して、自らの責任のもとに公開すべきものと秘匿すべきものを分けていました。
 しかし、今のネット時代は、情報がすべてダイレクトに拡散する時代になっています。ただ、今も昔も、情報を持ち出すのは、ほんの一部の内部の人間です。こうした人は今も昔も、これからも出現します。仮にウィキリークスが大人しくなって機密情報を暴露しないようになれば、情報提供者は別のやり方で暴露するだけです。
 つまり、情報漏洩は今後も起こります。その傷を小さく留めることが必要で、そのためには、流出することによって人々の安全に害が及ぶような情報は、機密情報としてアクセスを厳しく制限するしかないのではないかと思います。
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  1. 2010/12/09(木) 14:51:24|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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