ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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国際テロ問題を学ぶ道

 先日、「インテリジェンスを学ぶ道」と題するエントリーを書いたところ、知人から「じゃ、国際テロ問題を勉強するとしたら?」と聞かれました。
 そこで、たとえば日本の大学で国際テロ問題を学ぶとすればどうすればいいかを考えたのですが、そう言えばインテリジェンス論と同じくらいに「ないなー」と思い至りました。
 基本的には、やはりインテリジェンス論と同様に、国際関係論や国際政治学の学部で学び、自分で〝テロ学”を研究テーマに選択するということになろうかと思います。
 とはいえ、もちろんこの分野を独自に研究されている先生方はいらっしゃいますので、そうした先生のおられる大学・学部で学ばれることもたいへん有意義であろうと思います。地域研究、国際紛争あるいは国際法の研究者の先生方に、テロリズム問題に取り組んでおられる方は少なくないかもしれませんが、いわゆる国際テロリズム論というようなかたちでいえば、防衛大学校人文社会科学群国際関係学科の宮坂直史先生が有名です。安全保障、危機管理の観点から鋭い論考を発表されている方で、安全保障一般を学ぶという点からみても、防衛大学校がこの分野ではやはり有利なのではないかと思います。
 国際テロリズム論ということではなく、個別の問題でいえば、現代の国際テロの本丸はなんといってもイスラム過激派のテロです。その分野では、静岡県立大学国際関係学部の宮田律先生が、また東南アジアのイスラム過激派の動向に関しては、獨協大学外国語学部の竹田いさみ先生が有名です(他にもいらっしゃるとは思うですが、私は学術誌や学界方面まではフォローしておりませんので、存じ上げません)。
 イスラム過激派のテロそのものではないのですが、その背景にあるイスラム社会の深層に関しては、東京大学先端科学技術研究センターの池内恵先生の著作がたいへん参考になります。もしもイスラム過激派のテロ問題を勉強されたい方がおられましたら、私は池内先生の御著書を強く推薦します。
 と、ここまで書いてふと気づいたのですが、先日当ブログでご紹介させていただいたインテリジェンスの先生方の多くは面識があるのですが、本日ご紹介させていただいた先生方とは、私はどなたとも面識がありません。つまり、専門誌編集者としてお話を伺いにいったり、原稿執筆をお願いしたことがなかったということです。『ワールド・インテリジェンス』でも、もう少し国際テロ分野をしっかりフォローしておけばよかったなと、今更ながら反省です。
 ところで、国際テロ問題は、きわめて時事的な問題です。その形態・動向は時代とともに激変しますので、たとえば数年前の国際テロ状況をいま勉強してもほとんど意味がありません。そういったことでは、学問というよりはジャーナリズムのフィールドになります。上記でご紹介した先生方が凄いのは、学術研究に留まらず、まさにジャーナリスティックな視点で現代の問題に継続して取り組んでおられるところですね。
 リアルタイムの国際テロの動向は、労力さえ惜しまなければ、いまやネットで膨大な情報を得ることができます。逆にいえば、個人でも充分に研究できるということなので、どこの大学のどの学部に在籍されたとしても、本人のやる気次第でいくらでも学ぶことが可能かと思います。
 なお、現在進行形のインテリジェンス・マターおよび国際テロリズムの動向に関してひとつだけ資料を挙げるとすれば、私は有名な『ジェーンズ・インテリジェンス・レビュー』を断然推薦します。取り寄せは安くはないですが(便利なWEB版もあるのですが、かなり高額)、『TIME』か『NEWSWEEK(日本版でも)』『Economist』あたりに加えてJIRを購読すれば(+欧米主要紙サイトのチェック)、そのあたりの動向はほぼフォローできると思います。
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  1. 2010/12/09(木) 10:57:38|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

ハルエルの本

「インテリジェンスを学ぶ」と言っても日本の場合にはそれを教えている人達自身がインテリジェンス機関での第一線での経験が無いという問題がありますね。京大の中西教授や教え子の小谷氏などがその典型。

不思議ですが、一方で元警察庁警備局や内閣情報調査室の中枢にいた人達が本を書かない。すると、外国語資料翻訳の必要ありなのですが、例えばイスラエルのモサッド元長官イセル・ハルエルなどは1971年から89年までに10冊の本を書いていますが1冊も翻訳されていません。と言うか、その事自身が知られていない。
http://en.wikipedia.org/wiki/Isser_Harel

物書きの落合信彦などは「モサッドに学べ!」と繰り返していますが具体的な事は一言も言わない上に出鱈目ばっかり。何と言っても、モサッド初代長官の名前を間違える人ですからね。イスラエル・インテリジェンスコミュニティー創設者で初代長官のシロアッフに付いてはイスラエル国営テレビの特集番組がCDにもなっているので翻訳発売すれば良いのに。

あと、インテリジェンスやテロというか安全保障全般について学ぶにはイスラエルのヘルツェリア大学があります。教員にはモサッドの中枢である分析局の元局長ウジー・アラッド教授らがいて、例のテロ研究所はその付属機関です。
http://portal.idc.ac.il/en/main/research/InstituteforCounterTerrorism/Pages/ICTmainpage.aspx
  1. URL |
  2. 2010/12/10(金) 00:32:53 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

 イスラエルと日本では、実務経験者の経験値のレベルが雲泥の差という哀しい現実があります。これは日本という国のポジションと、あとは国内の制度の問題なので、個人の潜在能力が低いということではないと思うのですが。
 佐藤優さんのように外務省系の実務者の中には経験・見識ともに深い方もいますが、日本の対外インテリジェンスにおいては、霞ヶ関のインテリジェンス・コミュニティの中枢に君臨する国内治安機関系のインテリジェンスでは、国内テロ対策&国内スパイ対策のみに焦点があてられますから、どうしても限界があります。こういってはナンですが、某庁が出している国際テロ要覧とか、それほど参考になるレベルではないです。
 学識経験者のなかには、日頃の研究で広い見識を持っておられることに加え、実務の方々との交流でその世界にも精通している方もいらっしゃいます。転々と部署を異動させられる実務の方より、そういった専門の研究者の方のほうがいろいろな面で詳しい傾向があります。
 諜報専門誌でさまざまな専門家にお会いましたが、概して「実務経験者」「学識経験者」「報道経験者」が互いに批判する傾向が露骨にありました。が、私から見ると、それぞれ長所はあります。そういえば、そうした日本のインテリジェンス研究の世界の統一のなさを憂いた何人かの関係者から「君の雑誌に、みんなの連結点になってほしいなあ」とマジに言われたことがあります。力及ばずの結果でしたが。
  1. URL |
  2. 2010/12/10(金) 11:14:49 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

日本の場合

日本諜報当局の「個人の潜在能力が低い」とは書いてませんが、ラグビーで例えるとニュージーランドでは子供にスパイクをプレゼントするのが慣わしですが、同様イスラエルでは子供の頃からしょちゅうテレビでテロ報道を見ていて、「自分達の身を守る」という意識が無意識レベルに達している。優秀な軍隊や諜報機関が出来るはずで、制度というより環境から来る空気と経験の蓄積の問題ですか。また、イスラエルの場合は地域研究(膨大なアラブ・イスラム専門家層)とインテリジェンスが密接な関係があります。

ところで最近気が付いたのですが、日本の場合には北朝鮮による拉致被害者救出支援に集結しているコリア専門家のインテリジェンス能力が非常に高い。『北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会』会長の西岡力氏や『特定失踪者問題調査会』の荒木和博氏のみならず、『北朝鮮による拉致被害者家族連絡会』事務局長の増元照明氏も凄いですね。

こういうところにインテリジェンス人材が集中するのは当然の事で、イスラエルでも拉致された兵士救出の交渉担当には元総参謀部諜報局分析部長のアモス・ギルアッドが勤めていましたし、インテリジェンス専門記者のロネーン・ベルグマンはそのテーマで『イスラエルよ全てを行え』という本まで書いています。
  1. URL |
  2. 2010/12/10(金) 18:41:34 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

 日本には他にも北朝鮮問題の優れた専門家が何人もいらっしゃいますが、中には韓国の北朝鮮問題専門家や軍事情報アナリストとの交流からインテリジェンスを入手されている方もおられます。韓国発情報は飛ばしも多いのですが、国情院(OB含む)や保守系政治家ルートで流れる情報には核心情報もたびたび出ます。イスラエルほどではないですが、そこはやはり準戦時体制の国ならではということでしょうか。
  1. URL |
  2. 2010/12/11(土) 12:16:13 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

地図の変化

黒井さんは御著書『日本の情報機関』の中で韓国や台湾の情報機関を高く評価。ただ、それらにとって対象の朝鮮や大陸は言葉の壁が無い国内問題的要素が有るので日本の能力と単純比較出来ないのでは。

また、イスラエルに関しては中近東・北アフリカ生まれのアラビア語を母国語とするユダヤ人がイスラエル化して玉切れになったので現在では軍諜報局の主流は欧米系子弟が高校で東洋学専攻した後で義務徴兵中にアラビア語の集中コースを受けるという形であり、一方でイスラエル国内のアラブ人は小学校2年生からヘブライ語を習うのでユダヤ人のアラビア語能力とアラブ人のヘブライ語能力は逆転どころか差がつく一方なのでハイテクのシギントで補うのは世界的傾向です。

また、最近ではエリート特殊部隊にドルーズ族を活用してアラビア語要員を補充しているが、ヒズボラはヨルダンに留学するアラブ人学生などをスカウトしたり、国境付近でハッシシをベドウィン兵に渡す換わりに軍の内部情報の提供を受けたりと第二次レバノン戦争の苦戦はインテリジェンス地図の変化をそのまま反映しているようです。

ところで黒井さんがお勧めの7ヶ国語で欧米語はロシア語のみですね。自衛隊で教えている3ヶ国語(中朝露)以外はイスラム系の言葉ですか。
  1. URL |
  2. 2010/12/14(火) 00:19:09 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

 語学に関してですが、とにかく今は中国語とイスラム系のエスニック言語の専門家が不足していると、いくつかの政府系機関の関係者から伺ったことがあります。外務省でも中国語はともかく、イスラム系言語の専門家にはかなり不自由していると聞いたこともあります。数少ないアラビア語やペルシャ語の専門家などは、外務省との関係が緊密すぎるので、他の政府機関はなかなか協力要請も出来ないらしいです。
  1. URL |
  2. 2010/12/15(水) 09:02:16 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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