ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ミスターxの正体は??

 かの田中均・元外務審議官(元アジア大洋州局長)の謎の交渉相手として注目を集めていた北朝鮮の対日交渉担当者=通称「ミスターx」について、朝日新聞のスター記者・船橋洋一氏が今月、著書『ペニンシュラ・クエスチョン』を発売し、そのなかで、「国防委員会幹部の軍人で、金哲(キム・チョル)と名乗る人物だった」と断言したらしい。らしいというのは、まだ本書を読んでおらず、その宣伝記事を朝日一面で先日目にしただけだからである。
 その朝日記事の書き方をみるかぎりだが、どうも日本の外務省サイドの動きがかなり具体的に書かれているようだ。ということは、船橋氏は田中元審議官ないし外務省サイドから情報を得た可能性が高いようにみえる。ネタ元を隠すためにわざとネタ元以外のルートに目がいくような書き方をするケースも多いので、一概には断定できないが、船橋氏といえば日本を代表する高名な国際派ジャーナリストであり、当然ながら外務省中枢とも太い人脈があるだろうから、そちらからネタを得ていてもなんの不思議もない。

 このミスターXに関しては、かねてからさまざまな説が飛び交っていたが、今年5月に重村智計・早大教授(元毎日新聞記者)が出した『外交敗北』という本のなかで、「国家安全保衛部(秘密警察)の第一副部長の金(キム・チョル)という偽名の人物だ」と断定したことが大きく注目されていた。重村教授といえば、朝鮮問題のスペシャリストであり、コメンテーターとしてテレビ各局から引っ張りダコの人物でもある。同書は瞬く間にベストセラーともなっていた。
 だが、この重村氏の著書、とくにミスターXの記述をめぐっては、北朝鮮ウォッチャーの間でも賛否両論がある。同書は私も熟読し、その鋭い指摘に膝を打つことも少なくなかったものの、いくつかの重要な情報でその根拠が示されていないことは気になった。情報源を守るためであろうが、それだと読者は情報の信憑性をまったく判断できない。
 というわけで、『ワールド・インテリジェンス』第3号「北朝鮮&中国の対日工作」では、ミスターXの正体について、あえて別の位置から解説していただこうと、コリア・レポートの辺真一編集長へのインタビューを行なった。
 その辺氏の見方はこうだった。
「ミスターXは軍人。軍を代表する立場で、軍から出向のかたちで金正日の側近となっているような人物だろう」
 その根拠は、金正日は現在、軍を外交にコミットさせるために、軍を代表する人物を外交交渉に充てる傾向があるからということだった。
 この辺氏の見方は、まさに船橋氏の国防委員会幹部説と一致する(辺氏インタビューは9月中だったので、もちろん船橋情報が出る前だ)。
 とすれば、重村説は誤報だったのか?
 私は、船橋氏クラスの著名ジャーナリストが朝日一面を使ってまで断言しているということは、その情報には絶大な自信を持っているものと考えていいと思う。とすれば、おそらく田中氏本人(あるいは福田元官房長官あたりかも)からウラをとっているのではないか。
 そこである邪推が思い浮かんだ。田中氏は重村氏を陥れるためにリークしたのではないかというものだ(もちろん邪推です)。
 というのも、重村氏の著書では徹頭徹尾、田中氏が「国民を欺き、国益を害する諸悪の根源」のごとく描かれているからである。前述したように同書はベストセラーとなっているが、これを読んだ人は全員、「田中という高級官僚はとんでもない売国奴だ!」と信じてしまうことだろう。
 政策当事者を批判することはべつに珍しいことではないし、とくに田中氏のスタンドプレーには北朝鮮ウォッチャーのなかからも批判の声が少なくないのは事実である。だが、たしかに同書内での田中氏の言動の表現のなかには、それだけでは事実かどうかよくわからないものもないわけではない。
 とすれば、悪玉説を喧伝された田中氏としても、重村氏に一矢報いたいという気持ちが出ても不思議ではない。その最も効果的なやり方こそ、「重村氏の著書の不正確な部分に注目を集め、同書および重村氏自身の信用を貶める」ということではなかったか。
 とまあ、ここではちょっと陰謀論な見方を披露してみました。
 けれども、興味深いのは、船橋説も重村説も、ミスターXの自称名を「キム・チョル」としていたことだ。漢字の当て字が違うが、もともと漢字は使われていないし、それ自体が便宜上の自称名だから、漢字の違いにはまったく意味はない。つまり、仮に船橋説が正しかったとしても、重村氏もミスターXの自称名そのものはほぼ正確に掴んでいたということになる。キム・チョルなどごくありふれた名前ではあるが、偶然ということではないだろうと思う。
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  1. 2006/11/03(金) 21:39:43|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

はじめまして。僕もインテリジェンスに興味があって、ワールド・インテリジェンスvol1から
購入しています。何分にもボリュームがありすぎて精読できていません。
でも、本誌をサポートする形でblogで加筆するという点に黒井さんの誠意が感じとれます。

ありがとうございます。

最新号である北朝鮮&中国の対日工作 日本人向け上海カラオケの写真・記事は特に面白かったです。できれば「没になった写真」などblogで紹介頂ければ嬉しいです。
今後の益々のご活躍を祈念しています。加えて来号も・・・楽しみにしています。
頑張ってくださいませ。
  1. URL |
  2. 2006/11/05(日) 08:06:18 |
  3. venus_san #-
  4. [ 編集]

venus_san様
コメントありがとうございます。
上海カラオケの写真は残念ながらあれでほぼ打ち止めです。
せっかくコメントしていただいたので、本誌には書かなかったネタを追加すると、噂になっている対馬の中国スナックは上対馬町比田勝の港の前にある「か××」という店だそうです。ただし、店自体が怪しいというわけではなく、楽しい店のようです。外国人ホステスを供給するプロモーターが何か絡んでいるのかもしれませんが、そのあたりは捜査中とのこと。
私としては、事件発覚後に退職した28歳の3曹に興味がありますが、本人に取材したわけではないので、ここでは何とも書けません。
まったく関係ないですが、「ドクターコトー診療所」でも自衛官が大塚寧々ママのスナックによく来てます。孤島ではスナックは重要です。
  1. URL |
  2. 2006/11/07(火) 01:47:07 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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