ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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インテリジェンスを学ぶ道

 一昨日、大学時代の恩師である横浜市立大学名誉教授の山極晃先生に久々にお会いしました。先生は現代(大戦以降)の国際関係論がご専門ですが、とくに太平洋戦争中から戦後にかけての米中関係に詳しく、中国で教鞭をとっておられたこともあります。
 御著書に『米戦時情報局の「延安報告」と日本人民解放連盟』(大月書店)『冷戦後の国際政治と地域協力』(中央経済社)『米中関係の歴史的展開 一九四一年~一九七九年』(研文選書)『東アジアと冷戦』(三嶺書房)、共著書に『資料マンハッタン計画』(大月書店)『資料日本占領〈1〉』(大月書店)『現代中国とソ連』(国際研究叢書/日本国際問題研究所)などがあります。
 なかでも『米戦時情報局の「延安報告」と日本人民解放連盟』などは、まさにインテリジェンス・ヒストリーそのもので、じつは私は『ワールド・インテリジェンスvol①』で、先生に無理やり頼み込んで、同書からの引用を許可していただいたことがあります。
 私が在籍していた当時の山極ゼミは、母校の国際関係学科では唯一の国際政治学ゼミで、私はもっぱら現代の紛争に関する題材ばかり次々に手をつけていたように記憶しています。他のゼミ生もそれぞれまったく別個のテーマを選んでいて、ゼミ発表は毎回バラバラに話が飛ぶのですが、それはそれで面白かったなと思います。

 ところで、先日、コメント欄に「日本の大学でインテリジェンスを学べるところは?」「将来、情報機関へ就職するために良い学部は?」というような内容の質問をいただきました。
 私は学術畑の人間ではありませんし、さらに情報機関の職員だったこともありませんので、あまり詳しいことは知りませんが、いちおう社会人経験はそれなりに積んできておりますので、あくまで私見ですが、この点を書いてみようと思います。若い人向けに少し上から目線な書き方になるかもしれませんが、何卒ご容赦を――。
 
 まず現在の日本の大学(学部)で、インテリジェンス論の講座を常設で持っているところは、私はまったく知りません。コメント欄にも書きましたが、私の知っている範囲でいえば、大学院では元外務省国際情報課長の北岡元・元政策研究大学院教授が、非常設の短期集中講座ですが、拓殖大学大学院で「国際情報管理論」という講座を受け持たれています。(追記→)また、慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の手嶋龍一先生もインテリジェンス関連の連続講座を受け持たれています。これらはまさに体系的なインテリジェンス論の講座といっていいかと思いますが、大学院ですので、これから大学で学ぼうという人向けの話ではないですね。
 大学の学部で学ばれる場合は、通常は国際関係論や国際政治学の学部で学び、ゼミ研究などでインテリジェンス系のテーマを自分で選択して研究するというかたちが多いと思います。
 もっとも、インテリジェンスは幅広いので、なにも国際関係論・国際政治学に限らず、歴史学系でも情報工学系でも経済学系でも、その気になれば研究テーマに選べると思います。インテリジェンス論そのものではありませんが、関連が非常に深い安全保障論ということでは、やはり防衛大学校がもっとも充実していると思います。
 一般の大学の場合なら、専門的な研究はやはり大学院となるでしょう。日本の大学院でインテリジェンス関連といえば、歴史学のなかの情報史学という位置づけで、京都大学大学院人間・環境学研究科の中西輝政先生、早稲田大学政治経済学術院の山本武利先生などがよく知られています。なかでも防衛研究所主任研究官の小谷賢先生や、皇學館大学講師の奥田泰広先生など、京大院の中西研究室からは多くの専門家が輩出されていて、アカデミズムの世界でインテリジェンス・ヒストリーという新たな分野を切り拓いています。
 他方、現代のインテリジェンスのほうは、文献資料があまり公開されないこともあって、なかなか日本では独自のアカデミックな研究領域とはなっていません。そこはやはり国際関係論や地域研究などの研究者がカバーするかたちになっています。それでも、私の知っている範囲だけでも(皆さんと面識があるわけではありませんが)、現代のインテリジェンスに精通された先生として、防衛大学校防衛学教育学群の太田文雄先生、慶應大学大学院政策メディア研究科の土屋大洋先生、東京工科大学コンピューターサイエンス学部の落合浩太郎先生などがいらっしゃいますので、こうした先生方から学ばれるチャンスがあれば、非常に有意義な勉強が可能かと思います。

 とはいえ、このように、やはりインテリジェンスそのものの研究は、日本の大学の学部レベルではほとんどないのが現状で、私の知っている若手の研究者も、アメリカかイギリスの大学院に学んだ方がほとんどです。
 もしも当ブログの読者の方のなかに、現在は高校生で、これからインテリジェンスを本格的に学びたいと希望されている方がいたら、経済的な事情が許されるならば、イギリスかアメリカの大学に進むことを検討してみるのもひとつの道ではあると思います。
 私の知人のインテリジェンス研究者の方のなかには、日本の高校には行かず、大検で留学資格を得て海外の大学に入り、そのまま博士課程まで進まれた方もいます。以前は海外の大学卒は日本での就職に不利でしたが、(業界にもよりますが)今ではむしろ有利なくらいだと思います。

 一方、情報機関への就職に関しては、自衛隊の情報部門であれば、当然ですが防衛大学校を経て情報職種に進むというのが、もっとも有利です。一般大学卒でも、幹部候補生から情報職種の幹部へという道があります。
 一般の隊員から情報関連に進むことも可能ですが、情報職種に進んでも対外インテリジェンスの関係はなかなか狭き門です。コンピュータ技術関係を別とすれば、語学力があれば断然有利ですので、できれば英語力を自分なりに鍛えておくことをお薦めします。
 それ以外の情報機関は、外務省でも警察でも公安調査庁でも内閣情報調査室でも、就職にあたっては出身学部はそれほど重要でないと思います。もっとも、なるべく偏差値の高い大学を出てキャリアを目指すほうが、役人として断然有利なことは事実です。
 ですが、もしも対外インテリジェンス関係の現場をご希望であれば、外国語学部でアラビア語、ペルシャ語、ウルドゥ語、インドネシア語、中国語、ロシア語、韓国語あたりを専攻していれば、断然有利ではあると思います。それで公務員試験をパスして公安調査庁や内閣情報調査室、あるいは警察に就職できれば、外事部門の即戦力として期待されると思います。
 さらにカイロやテヘランや北京などの留学歴があって、アラビア語の各方言までわかる人や、韓国語と中国語の両方ができるような人は、ものすごく大事にされることでしょう。
 とはいえ、道は無限にありますから、結局は各人がそれぞれ自分で考えて道を選ぶしかありません。いずれにせよ、自分がこういうことをやりたいという目標があれば、そのためにどうすればいいかということが見えてくるのではないでしょうか。自分の目標のために情報を収集して分析し、最良の選択肢を導き出す――まさにインテリジェンスそのものですね。
 それと、これはコメント欄にも書いた私の個人的な意見ですが、若い頃に海外の僻地を一人旅する経験は、後々非常に役立つと思います。その際、なるべく先入観を持たずに世界を見るということを心がけていただけるとベターです。
 私自身はたいしたこともやっていないのにエラそうなことを書き連ねましたが、インテリジェンスの道を志す若い方に、少しでも参考になれば幸いです。
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  1. 2010/12/03(金) 22:51:02|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

感想と質問

 追加情報ありがとうございます。日本の学部について大雑把に捉えると、情報機関の対外部門を希望する場合は外国語学部、対内部門の場合は公務員試験に強い法学部に行くのが良い、といった所でしょうか。
 ところで上の記事とは関係無いのですが、質問が有ります。近年海上保安庁でも、本庁及び第三~五,七~九管区海上保安本部に警備情報課を新設する、内閣情報会議の正式メンバーに加わる等インテリジェンス部門の拡大を図っている様ですが、海保の情報活動にそれに伴う具体的変化は在りますか?黒井さんの知っている範囲でお願いします。
  1. URL |
  2. 2010/12/04(土) 15:38:32 |
  3. イージス #MOEoYrDQ
  4. [ 編集]

 海保情報部門については、3年前に『日本の情報機関』を書いた際に調べて以降フォローしてきませんでしたので、それ以後の動向は把握しておりません。お役に立てずに申し訳ありません。
 ただ、尖閣問題などで国防関連事案における海保の役割が非常に増していますので、情報コミュニティの正規メンバーにしていこうという流れではないかと思います。また、海自から海保への情報連絡の遅れが毎回問題視されていますので、その部分で海保側から情報共有要求が出ていることも考えられます。
  1. URL |
  2. 2010/12/06(月) 11:14:45 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

 ありがとうございました。
  1. URL |
  2. 2010/12/06(月) 12:09:33 |
  3. イージス #MOEoYrDQ
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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