ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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北朝鮮「ウラン濃縮」の危険度

 11月20日、『ニューヨーク・タイムズ』電子版が、北朝鮮から帰国したロスアラモス国立研究所元所長のシーグフリード・ヘッカー米スタンフォード大学教授が、同国訪問中にウラン濃縮施設を見学していたと、同教授の証言を元に報じました。
 同記事によると、ヘッカー教授が見たのは数百基の遠心分離機で、「ウルトラ・モダン・コントロール・ルーム」で管理された、驚くほど洗練された施設で、それを見た教授は「卒倒した」といいます。教授は未確認ですが、北朝鮮側の説明では「すでに2000基が稼働中」とのことでした。
 北朝鮮のウラン濃縮に関しては、最初は2002年10月にケリー米国務次官補(当時)が訪朝した際、北朝鮮側から濃縮ウラン計画の存在について非公式に仄めかされたことで注目されました。
 その後、北朝鮮側は一貫してこの計画について否定してきましたが、▽パキスタンのウラン型核爆弾製造をリードしていたアブドル・カディル・カーン博士とかつて協力関係にあったこと、▽同じくウラン型核爆弾製造を目指すイランと強固な協力関係を続けていること、▽ウラン濃縮プラント建設に使える大量の高強度アルミ管を北朝鮮が密かに輸入していたことが発覚したこと、▽北朝鮮が提出したそのアルミ管のサンプルから濃縮ウランの痕跡が検出されたこと、などによって北朝鮮が密かにウラン濃縮計画を進めているのではないかとの疑念が指摘されてきました。
 ただし、これらはいずれも状況証拠であり、ウラン濃縮説そのものは確認された情報ではありませんでした。北朝鮮のブラフではないかとの見方もありましたが、いずれにせよ真偽の判定は不可能な情報だったわけです。ちなみに当ブログでも3年半ほど前に、北朝鮮ウラン濃縮説に信頼すべきインテリジェンスが見当たらないことを記事にしています(→該当エントリー)。

 ところが、北朝鮮側は昨年4月にIAEA査察官を国外退去させると、同6月にウラン濃縮計画の着手を表明。さらに9月には、ウラン濃縮の実験段階がほぼ完了したと発表しました。
 これらの北朝鮮の主張は確認されたものではなく、本当に北朝鮮がウラン濃縮に乗り出したのかどうかはわからなかったのですが、今回のヘッカー教授の証言で、それが事実であることが初めて確認されました。
 北朝鮮は現在、寧辺に軽水炉を建設中であると公表しましたが、おそらくこのウラン濃縮を正当化するためのものであろうと考えられます。たしかに低濃縮ウランは軽水炉の燃料として使われますし、プルトニウムをあまり生産しない軽水炉であれば、平和利用目的と強弁するにも好都合ですから、なるほどうまく考えたなと言えます。
 ですが、ウラン濃縮施設はそのまま高濃縮ウランに濃縮度を高めることも可能です。核兵器開発が命綱の北朝鮮にとって、ウラン濃縮が平和目的限定などということはあり得ません。
 ニューヨーク・タイムズ紙も書いてましたが、ひとつ気がかりなのは、昨年4月にIAEA査察官が国外退去した時点では存在しなかった施設が、わずか1年半の間に建設されたという迅速さです。周知のとおり、現在、北朝鮮は国際社会の経済制裁下にあり、とくに核開発関連の資材の輸入は厳しく監視され、ブロックされています。そんな状況で、どうやってその施設を建設できたのでしょうか。
(※追記/ヘッカー教授がスタンフォード大学のサイトにアップした報告書によれば、場所は寧辺とのこと。また、同レポートには、北朝鮮の担当者が「(同施設について)ほとんど自分たちで国産したが、日本の六ヶ所村とオランダの施設を参考にした」と語っていたということです)

 現時点では推定でしかありませんが、イランの協力を得ていた可能性があります。仮にそうなると、さらに気になるのは、イランが今年、従来型の遠心分離機より数倍の濃縮効率を持つ新型遠心分離機を開発したということです。
 イランは現在、すでに9000基近い遠心分離機をウラン濃縮施設で稼働させていますが、新たに建設中の新施設に新型の国産遠心分離機を設置することを表明していて、今年4月には「従来型の6倍の能力の遠心分離機の実験に成功した」と発表しました。6倍というのは誇張された数字の可能性が高いですが、それでも最低でも2~3倍の能力強化は実現されたものと欧米の専門筋は判断しているようです。
 その最新型の装置が北朝鮮にそのまま移転されるということはないと思いますが、この分野ではかなり技術力を上げてきているイランの核技術者の協力があったとしたら、北朝鮮は今後、さらに驚異的なスピードで高性能のウラン濃縮プラントを増強していく可能性があります。

 困ったことに、北朝鮮は豊富なウラン鉱脈が存在します。北朝鮮が今後、軽水炉での平和利用目的と強弁してウラン濃縮をさらに加速すれば、兵器級濃縮ウランの製造が具体的タイムテーブルにのってくるのも、時間の問題です。
 北朝鮮はすでにプルトニウム型の核爆弾を完成させていて、少なくとも外国軍の侵攻に対しての防御力としては新段階に防衛力を強化させています。ただし、当ブログで何度も指摘してきたように、プルトニウム型核爆弾の起爆装置の構造はきわめて複雑であり、ノドン・ミサイルの弾頭に搭載できるまで小型軽量化することは、それなりに高い技術的ハードルがあります。
 それに対して、構造がはるかに簡単なウラン型核爆弾では、必要量の兵器級高濃縮ウランさえ入手できれば、それをノドンに搭載することはそれほど難しくはありません。北朝鮮がいま現在、最大の国家的目標としているのは核ミサイルの開発ですから、ウラン濃縮は前述したように、当然そのための措置と考えるべきです。
 それはまさに、ノドンの射程にすでに入ってしまっている日本にとって死活的といっていい重大問題です。
①軽水炉建設→②平和利用との名目でウラン濃縮→③こっそり高濃縮ウラン製造→④核ノドン配備、というシナリオが、今まさに現実のものになろうとしています。
「北朝鮮の脅威」というのは、核実験やテポドン発射実験などによって、もうなんとなく「またか」という雰囲気になっていますが、今度はこれまでとは比べものにならないほど、きわめて深刻な状況になりつつあるのだと思います。
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  1. 2010/11/22(月) 00:27:52|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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