ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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新防衛大綱と国家安全保障室

11月17日、新「防衛計画の大綱」のたたき台となる民主党外交・安全保障調査会の提言案の内容が各紙で一斉に発表されました。11月中に政府に正式に提言され、それを基に今年中に新防衛大綱策定が予定されています。
 今度の民主党案で特徴的なのは、まずは陸自のリストラです。全体的な人員削減が考えられていますが、そのかわり、九州・沖縄地方を増強します。要は西方シフトですね。
 その考え自体は現大綱でも謳われていたのですが、今回は時代遅れの基盤的防衛力構想を完全に払拭し、「動的抑止力」という考えを導入しています。
 基盤的防衛力構想というのは、どこから攻撃されてもいいように「まあ、独立国ならこのくらいの戦力はあったほうがいいよね」という漠然とした考えでテキトーに基幹部隊を全国各地に配置しておいて、有事にはそれを元に各自が瞬時に戦力アップ(そもそもそれをどうやってやるのかよくわからないのですが)ができる態勢にしておくというような考え。日本全国に陸自の駐屯地を配置しておく理由になっていました。
 冷戦時代は対ソ戦が防衛計画の柱でしたから、陸自は北海道に大部隊を配置していたのですが、有事にはあまり関係のないような南東北とか信州とか中京、近畿、四国とかにも同じような編成の部隊を平均的に配置するという、非常に効率の悪い体制になっていました。
 これはどうもうまくないんじゃないかという考えはかなり以前からあったのですが、そこで問題となったのが、地元対策です。もともと日本政府がお願いするかたちで地方に駐屯地を作らせてもらい、その代わりに自治体に交付金を支払ったり、若者の雇用を確保したりといった恩恵を与えていたので、駐屯地を抱える地域、とくに北海道の関係自治体は自衛隊経済にかなり頼るようになっています。なので、今さら駐屯地閉鎖なんて約束が違うじゃないかと。
 それで、駐屯地の数を減らさずに実員削減ということで対処してきたため、陸自の現場は現在どこも深刻な人手不足に陥っています。陸自の関係者からはそれで「これ以上の人員削減は国防を破綻させる」と反発が大きいのですが、そもそも論から言えば、駐屯地削減で対処するのが筋でしょう。
 日本国民は特定地域の財政や雇用のために防衛経費を負担しているのではありません。地域経済を支えることは必要ですが、それは別のかたちで行うべきものではないでしょうか。
 陸自のリストラでいちばん反発するのは、経済基盤の弱い北海道の自治体です。なので、今回の民主党案でも、北海道の陸自の大幅削減はせずに、他の地域を重点的にリストラすることになっているようです。しかし、北海道に駐屯地はもうそんなに必要ないです。演習場と若干の管理部隊は残してもいいと思いますが、戦闘部隊そのものはリストラやむなしでしょう。それはイッキには無理でしょうが、北海道でも何か代替策を考えるべきです。
(たとえば、北海道の陸自だけ、人民解放軍みたいに自力で事業ができるようにして、北部方面総監に田中義剛さんを任命したらどうでしょう。いや、もちろん冗談ですが)

 今度出てきた「動的抑止力」というのは、平たく言えば、平時には警戒・監視を徹底して行い、有事には全国の部隊を統合的に機動展開させて対処するという態勢を作りましょうという考えです。通信や移動の技術が向上したことで、こうしたことが以前より可能になってきたという背景があるのですが、それ自体は正常な方向性だと私は思います。とすると、やっぱり駐屯地はそんなにあちこちに要らないですね。

 民主党案では、人件費削減案も盛り込まれています。早期退職者を後方部門専従として再雇用するかわりに、後方部門専従自衛官の給与体系は割安にすること、調達部門の自衛官を給与・手当ての低い事務官に身分換えすることなどが提案されています。
 もっとも、戦闘部門の自衛官がなんだかんだと受け取っている諸手当ても、民間企業からみるとものすごく優遇されていますから、あれももう少し仕分けしてもいいように個人的には感じますが。

 民主党案でいちばん注目されているのは、武器輸出3原則の見直しで、これはまだ議論が決着していないようですが、私からみると、民主党案でも不充分に感じます。
 武器輸出なのに「平和構築や人道目的に限定する」とか「人を直接殺傷する能力や可能性の低いものに限定する」とか、あいかわらず奇麗事が多いですね。武器は武器であって、そういう区別はあまり意味がないと思います。

 海外派遣に関しては、停戦合意がなくても国連安保理の要請があればPKOに参加できるとするとか、武器使用基準を世界標準に見直すとか、他国要員も救援できるようにするとか、ようやくあたりまえのことができるようになるようです。

 インテリジェンス関連分野では、首相官邸に「国家安全保障室」(仮称)を創設するという提案が注目です。かつて安倍政権の失速とともに葬られた国家安全保障会議(日本版NSC)案の復活ですが、それよりも小規模なものになりそうです。
 官房副長官もしくは首相補佐官を中心とし、20人程度の専属スタッフから構成されるものが考えられているようです。この20人の力量次第ですが、うまく機能すれば日本政府の戦略不在を補う切り札になる可能性もあります。
 専属スタッフは防衛、外務、警察(+法務、財務、経産、厚労、環境、国交、総務?)などの官僚が中心になると思われますが、ぜひとも海外経験の豊富な国際派が任命されていただきたいと思います。日本の安全保障政策すべてにだいたい言えると思うのですが、とにかく内向き、ドメスティックすぎるので、永田町・霞ヶ関の論理よりもワシントンや北京の事情に精通された方に活躍していただきたいと願います。
 冷戦時代は世界は米ソが取り仕切っていましたから、日本はアメリカにぶら下がってソ連の脅威から守ってもらえばいいという気楽な立場でした。これからの世界は、良くも悪くも中国がキープレイヤーの1極になります。中国はワールドワイドなアクターというよりは、やはり東アジアのアクターですから、本来なら日本はその対抗勢力として国際政治上ももっと重要な役割を負うべき立場かと思います。
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  1. 2010/11/18(木) 14:17:15|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

つまり
今後自衛隊は、地域の防災訓練支援はもちろん民間企業委託教育支援やもしなくなるし、各地に所在する予備自衛官もはるばる遠くの駐屯地まで休みを削って出頭して訓練して、少ない人員が遙か遠くの人脈も無い自治体の地誌・警備情報も収集すればやればいいんだと、それが良いんだというわけですね。
 さすが数年前に坪井さんが自ら告白されるまで、ご自身で足で稼ぐこともせずに青桐グループとか反共集団とか適当な駄文を記述されていた自称インテリジェンスの専門家様はおっしゃることが違いますなぁ(棒読み
  1. URL |
  2. 2010/11/21(日) 22:20:02 |
  3. 通りすがり #-
  4. [ 編集]

初コメントさせてもらいます。
国家安全保障室の設置は喜ばしいのかもしれないですが、指摘にもあるように「戦略の不在」が
一番日本の抱える問題かと小生は判断します。
そう考えると、以前「日本にはインテリジェンスを専門に学ぶことはできない」と指摘したように、戦略を学術や実践として
使えないというのにも設置することで有効に機能するか判断がつきにくいと思われます。
  1. URL |
  2. 2010/12/14(火) 10:57:50 |
  3. エキゼエル #Uoonf6s2
  4. [ 編集]

エキゼエル様 コメントありがとうございます。
国家の戦略の強化はなかなか難しい問題ではありますが、少人数でも安全保障の実務経験者グループが内閣官房に配置されれば、少なくとも一歩前進として期待したいところではあります。単なる出身省庁の代弁者の集まりとか、あるいは中堅議員のポストの受け皿とかにならなければいいのですが。
  1. URL |
  2. 2010/12/15(水) 08:50:59 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

返信ありがとうございます。
言葉は汚いですが、ようやくマシな状況になりつつあるといったことですね。
これからの進展に小生も注視してます。
  1. URL |
  2. 2010/12/26(日) 00:07:27 |
  3. エキゼエル #Uoonf6s2
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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