ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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情報漏洩の多くは内部職員から

 尖閣ビデオ問題は、なんとなく「情報流出経路」「情報管理」に世間の興味の焦点が移ってきています。前エントリーで述べたように、今回のケースにかぎれば、もともとは海保内で「機密情報」の意識がないまま広くネットワーク共有され、コピーされ、あるいは知人同士で送付し合っていたという感じなのでしょう。
「おい、おまえあの映像視たか?」
「いや、おまえ持ってんの?」
「ああ、じゃあ、やるよ」
というようなやりとりが、海保組織内で普通に行われていたのではないかと思います。
 なぜなら、当時は「機密情報」でなかったからです。その点で、今回のケースはやはり情報管理の不備というのは、ちょっとあたらないのではないかと思います。(追記/その後、海保大学内参考資料にアクセスして多くの職員が視ていたことが判明しています)

 さて、警察のほうですが、当ブログで何度か指摘してきた「外事3課長周辺によるレジュメの下書き」以外にも、もう1点、警視庁外事3課流出元説の資料について言及していなかったので、お伝えします。
 それは東南アジア出張計画についての書類なのですが、その執筆者は外事3課の警部補になっています。提出先はおそらく外3課長ですね。同出張捜査では他に警察庁国テロ課から警視1名、警部1名が同行していますから、同文書執筆者の警部補は派遣チームでは末席ということになります。
 同出張捜査については、警察庁国テロ課長は国テロ課員から文書の提出を受けます。警視庁外事3課警部補のこの種の文書が警察庁に上がることは、通常はないと考えられます。これも流出犯のトラップの可能性はありますが、普通に考えると流出元は外事3課長周辺とみるのが自然です。

 尖閣ビデオの場合、大方の予想通りに犯人は海保内部の人間でしたが、警視庁のほうも内部犯行の可能性が非常に高いです。ひとつは以前も当ブログで指摘したように、犯人がそれなりに長期間、この資料を手元に置いて計画的な流出を行っていることです。単なるハッカーなら、そんなに悠長なことは普通はしません。(追記/ファイル作成日時については偽装の可能性も出てきました。しかし、流出資料に直近のものがなかったことから、少し前に持ち出したものである可能性は高いといえます)
 流出資料そのものも、コンピュータ・ネットワーク内のデータというよりは、部内で回されたプリント資料をコピーしたような印印象のものが比較的多いように思います。(追記/その後、資料の多くは警視庁サーバーに保管されていたことが明らかになっています)
 外事3課員のデータに接することができた外部の第3者による犯行という可能性はあります。ですが、過去の情報漏洩のケースなどをみると、これほどのレベルの内部情報流出では、部内の人間による意識的な流出が圧倒的に多いといえます。

 海外の例をみてみましょう。
 たとえば、イギリスの例ですが、97年にMI5の内部情報がタブロイド誌『メール・オン・サンデー』に流出しました。流出元はMI5を解雇されたデビッド・シェイラー氏という人物です。
 彼はMI5では国内左翼を監視する「F部」、北アイルランド過激派を監視する「T部」、国際テロ組織を監視する「G部」の「9課(中東担当)」のリビア班に所属していましたが、現役当時に知りえた情報を、退職後に堂々と顔出しで、続々とメディアに売りました。
 とくに注目を集めたのは、MI5がストロー内相などの現職の閣僚を監視対象にしていたことや、G部時代に交流があったMI6の担当部署が、リビアの指導者ムアマル・カダフィ大佐暗殺計画にタッチしていたといった内幕話でした。彼の場合、動機は金銭というわかりやすい話です。
 イギリスのもうひとつの例は、MI6を解雇されたリチャード・トムリンソン氏のケースです。
 彼はMI6を95年に解雇されたのですが、どうも目立ちたがりの性格と元職場への恨みが重なったようで、MI6の内幕を暴露する手記の出版を画策。それが英国内で出版差し止め処分となったため、その対抗措置として99年にインターネットにMI6の海外駐在員の全個人リストを公表したのです。
 これはMI6に大打撃を与えました。その後、彼はロシアの出版社から手記を発表しています。
 イギリスではもう1件、通信傍受機関である「政府通信本部」(GCHQ)でも情報漏洩がありました。2003年のイラク戦争直前、『オブザーバー』が「GCHQがNSA(米国家安全保障局)から、ニューヨークの外国国連代表部の通信の盗聴を要請されていた」とスクープしたのです。これは、GCHQの現職の中国語翻訳官だったキャサリン・ガン女史が、同紙に渡した内部情報がもとになっていました。
 彼女はたまたまNSAからGCHQに送られたメールを見たのですが、情報漏洩の動機は純粋に「イラク戦争に反対」という信条からのものだったようです。

 他方、アメリカの場合は、まさに現在、膨大な数の機密資料がウィキリークスに流出して大問題になっていますが、情報の流出源は特定されていません。ウィキリークス側が情報源に繋がる情報を完全に守っているため、自分で名乗り出るようなことがない限り、情報源はおそらくこのまま隠されることになるでしょう。(追記/今年5月、自分でウィキリークス投稿を自慢していた米陸軍上等兵が逮捕されていますが、この人物がほとんどすべての情報源ではないかと現在は報じられています)
 アメリカにもそういった暴露系サイトは以前からあって、たとえばニューヨークの建築家ジョン・ヤング氏が運営する「クリプトム」なども、再三FBIから圧力を受けていたのですが、頑として撥ね付けていました。ちなみに、ヤング氏は『ワールド・インテリジェンスVol⑧』で取材に応じていただいています。
 もっとも、アメリカは近年、かなり機密情報的な領域まで非公式にメディアに公開する傾向にあります。有名な『ワシントンポスト』のボブ・ウッドワード氏の一連の著作もそうですし、NSAもジャーナリストのジェームズ・バムフォード氏にちょっと羨ましいほどの便宜を与えています。なんでそうなるかというと、どのみちある程度の情報は漏れると考えているからではないかと思います。
 匿名の情報発信者として注目されたのは、04年に「著者・匿名」というクレジットで出版された『帝国の傲慢』という本です。これはアメリカ政府のテロ対策を徹底的に批判する内容でしたが、米政権中枢やCIAの内幕話が満載だったため、出版直後から「謎の覆面筆者は誰だ?」と話題になりました。
 この覆面筆者はまもなくCIAを退職して自ら身元を明らかにしました。CIAテロ対策センターで、ビンラディン追跡ユニットのビンラディン情報分析班(通称「アレック・ステーション」班長だった幹部情報分析官のマイケル・ショワーという人物でした。
 彼の動機は、自分の主張が政権で認められず、間違った対テロ政策をとっていると考えたため、それを正したいということでした。

 日本では、99年に公安調査庁職員名簿が、『2ちゃんねる』や『デア・アングリッフ』(※管理人の河上イチロー氏も前出『ワールド・インテリジェンスVol⑧』で取材に応じていただいています)など複数のサイトに流出した事件が知られています。この名簿はその後、前述したアメリカの暴露系サイト『クリプトム』にも掲載され、公調の依頼でFBIが削除要請に動いたこともありました。
 当時、その情報源ではないかと噂されたのが、元公安調査庁調査官だった野田敬生さんです。野田さんは当時、古巣の公安調査庁と敵対関係になっていて、そのために疑われたのでした。
 野田さんは『ワールド・インテリジェンス』でもしばしば寄稿をいただいていた方ですが、野田さんはこの件については関与を否定しています。私はこの件について、その事情を知る立場にありません。
 公安調査庁に関しては、2001年出版の別冊宝島『公安アンダーワールド』が、これも本来は部外秘である某ベテラン調査官の「工作日誌」を掲載しました。
 私は当時、同誌の社外編集者として当事者のひとりだったのですが、匿名の情報提供者(後述するように、後に自身が明らかにします)も私たち編集部も、出版にあたっては特定の個人を危険に晒さないように配慮し、記事中でも個人情報に関しては伏字としました。
 当然ですが、治安へのダメージや、監視対象である極左組織の利益になることがないように注意も払っています。関係者の一部に誤解があるようですが、情報提供者は当初から、この情報の取扱に関しては非常に慎重な立場でした。
 ところが、同誌の出版直後から、ある民間の関係筋より「あれは野田氏が流出元だ」との噂が流れ、彼に対する執拗な個人攻撃が始まったので、後に野田さん自身が自衛手段として自分が情報源であることを公表し、対抗措置をとったようですが、その経緯については私は当事者ではないので、詳しくは知りません。

 いずれにせよ、このように内部情報の流出で近年話題になったケースの多くは、内部の人間が流出元となっています。このような確信的な動機の場合、情報流出はまず止めることは難しいと思います。
 内閣衛星情報センターの衛星写真のように、徹底して物理的にデータの外部持ち出しをブロックするということも場合によっては必要ですが、オフィスの中だけで仕事はできない捜査部門などでは、それも限界があるはずです。
 今回の警視庁公安部外事3課の流出資料をざっと見た印象では、とりたてて政治的な意味があるというよりは、暴露そのもののよる「外事警察組織へのダメージ」が狙いのように感じられます。外事警察内部(外事3課内に限らず)に、警察組織とトラブルになったような人などはいなかったのでしょうか。
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  1. 2010/11/12(金) 11:28:29|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

srt

ttp://uni.2ch.net/test/read.cgi/police/1349421787/
警視庁外事3課流出資料  国際テロリズム緊急展開班班員名簿 やで
  1. URL |
  2. 2012/10/05(金) 19:50:09 |
  3. dfせ #-
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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