ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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警視庁公安部外事3課資料流出で雑誌寄稿

 本日発売の『週刊朝日』に、「ネット流出資料でバレた非効率すぎる捜査 ~警視庁のテロ対策を仕分けせよ!」という記事を寄稿しました。
 また、本日夜、大阪・毎日放送ラジオの「たね蒔きジャーナル」(午後9~10時)という番組で、同事件についてコメントさせていただく予定になっております。

 とはいえ、世間はすっかり尖閣ビデオの話で持ちきりですね。尖閣ビデオ事件でもっとも利益を得たのは、外事3課かもしれません。内容的にはずっと深刻な機密情報漏洩なのですが、なんだかすっかり霞んでしまいました。
内容が内容だけに各メディアも様子見の小出し状態だったのですが、尖閣ビデオ流出までは、じつはいろいろなテレビや雑誌が動き始めていました。それがいっきにポシャったわけです。世間の目がそらされて、警察としてはこのまま責任問題とかがうやむやになってくれることを願っているかもしれません。

 逆に、この状況をみて、第2撃があるかもしれません。流出犯がたまたま入手した部外者だったらともかく、内部の不満分子だとしたら、まだまだネタを握っているはずなので、可能性はあります。外事課員の全個人台帳とかもあるかもしれません。もっとも、自分の個人情報も漏れるからということで止めているのかもしれませんが。
 尖閣ビデオの流出犯は、おそらく海保石垣の誰かみたいですが、公安のほうはまったくわかりません。どうやら少なくとも半年くらいネタを隠し持っていたようなので(追記/これは偽装の可能性もあるようです)、最初から部外者のハッカーによる犯行とは考えにくいです。現時点で断定はもちろんできませんが、警察官の個人情報も流すなど、ちょっと常軌を逸した行動から考えると、そうとう職場に恨みを抱いた内部の不満分子(もしくは元・不満分子)の可能性が高いような気がします。
 ちょっとした不満じゃないです。クビになったとか、上司に裏切られて何かたいへん酷い目にあったとか、そのくらいの恨みがないと、ここまでは普通はやらないと思います。単なる出世競争の道具とかでは、露呈した場合に致命的になるこれほどの〝犯罪〟の動機付けとしては弱いように感じます。 
 政治的な流出テロという臭いはあまり感じません。個人的な動機ではないかと思います。APECの警備態勢へのダメージを狙ったとかいう見方もありますが、流出資料にAPEC警備にマイナスになる内容のものはありません。

 さて、冒頭に紹介した週刊朝日の記事では、今回の流出資料を見ていて、思わずツッコミを入れざるを得ないことをいくつか指摘させていただきましたが、そこには書ききれないほど、ツッコミどころが多くて絞り込むのに苦労したほどでした。なので、いくつかここに書きます。

その1。
 前々エントリーで、外事3課がアルジェリア人の元ボスニア義勇兵の人脈を重点的に捜査していたということを紹介しましたが、それは本来、2004年にリオネル・デュモンの新潟潜伏の件が発覚した頃に、捜査を尽くしておくべき対象です。
 それを2008年になってもまだやっているというのは、逆に言えばそれ以外の有力な捜査対象が見つからなかったということなのかもしれません。
 しかも、その捜査に関しては、当時フランスで出国禁止状態におかれ、捜査対象になっていた群馬県在住の中古車販売業者を捜査していたフランス治安機関の協力要請があったため、それでまた再捜査に力を入れたという流れにも見えます。つまり、もともとたいした線じゃなかったということが言えるかと思います。

その2。
 外3はなぜかヒズボラに固執しています。ヒズボラが日本でテロなんてまず考えられませんが、もしかしたら、イラン大使館員の情報が欲しいモサドあたりが吹き込んでいるのかもしれません。
 ある流出資料によると、日本でヒズボラ情報がとれる情報源がいくつかあるそうですが、それはないと思います。日本で、ヒズボラの「テロに関する情報」に繋がるルートは1本もありません。
 ヒズボラは巨大政治組織ですから、それは日本在留レバノン人でも縁者くらいはいるでしょうが、テロ部門はまったく別物です。完全にイラン革命防衛隊の特殊部隊「クドス部隊」の特殊作戦班と連携している、というか別働隊のような存在です。テロ対策の観点からヒズボラの情報源を日本で捜すなんて、いないものを捜すわけですから、不可能な話です。
 私もレバノンでヒズボラ政治部門を取材したことがありますが、テロ部門は地元のベテラン記者でもまったく情報ルートはありません。在日レバノン大使館員でも、ベイルートのヒズボラ地区長でも無理です。そんな力があるのは、モサドの専門追跡チームくらいのものでしょう。
 外3では、ヒズボラ情報をとるべく情報源開拓を推奨していますが、意味のないことだと思います。日本人の中東研究者、マスコミ記者、NGOスタッフ、ビジネスマン、そのあたりもみんな無理です。
 ヒズボラやイラン情報機関を研究することはいいことだと思いますが、外事の認識がなんだかズレているのは、警察の方々が不勉強だということでも、知力に乏しいというわけでもありません。日本国内でだけ調査しているからだと思います。
 ヒズボラがいかなるものか、南ベイルートやベッカー高原に行って、実際に調査してみればいいと思います。白人は警戒されますが、東洋人ならべつに殺されはしないと思います。もちろんジャーナリストか研究者あたりに偽装する必要はありますが。
 現在の安藤長官が調査官室にいた頃は、日本の外事警察官も日本赤軍を追ってベッカー高原とかまで入っていたと聞いています。今はテロ犯を追っているわけでなくて、単なる調査だけですから「やればいいじゃん」と普通に思うのですが。事件班でなく、分析班の人が。
 結局、日本国内だけで対外インテリジェンスをやろうとしても限界があります。まず情報の収集と分析ありきです。それで必要とあれば国内で解明作業、とこういう順番が定石のはずです。
 上部機構である警察庁の国テロは海外調査をそこそやってるはずだと思っていたのですが、それでヒズボラ対策というのがよくわかりません。税金たくさん使っているのですから(たぶん)、納税者としてよろしくお願いしたいです。私たちはレバノン行くのも全部自腹ですから、逆に羨ましいです。機密費いただけるなら、私が代わりに行きます。
 いずれにせよ、日本にいて、詳しい人を探して話を聞くという方法は、北朝鮮相手ならある程度は有効かもしれませんが、イスラム・テロに対してはまったく意味がないです。とくにアルカイダに関して、テロ対策に役立つ核心情報を持っている人なんて、日本にはいません。パキスタンのラシュカレ・タイバやパキスタン・タリバン、マグレブのアルカイダ、チェチェン人のテロ・グループ、ジェマ・イスラミアその他みんな同様です。
 そういうドメスティックな活動しかできないテロ対策機関ということが、すべての流出資料に共通して感じられるズレ感の大元なのだと思います。FBIはじめ、外国機関とも接触しているようですが、あまりに内向きすぎて、警察の方々も肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。

 オマケ。
 ある中東出身者の調書のなかに、彼が本国に一時帰国した際、現地の情報部から「日本のスパイか?」としつこく尋問されたという話がありました。さすが紛争本場の情報部員の考えることです。
 日本も、ホントはそんなスパイを世界各地で運営するくらいになっていただきたいものですが、現状では夢のような話ですね。
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  1. 2010/11/09(火) 12:42:05|
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  4. | コメント:7
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コメント

インテリジェンス学部について

 初めまして。黒井さんのブログには興味深い話が多く、いつも楽しみにしています。ところで質問が有ります。現在、日本の大学にはいわゆるインテリジェンス学部は存在しませんが、敢えてそれに近いものを挙げるなら、或いは将来情報機関等への就職を考えている人が入ると良い学部としては、どういったものが在りますか?

追伸:上記とほぼ同じ内容を「拍手」ボタンのメッセージから送ったのですが、ひょっとして届いていませんでしたか?(正直インターネットに関してはまだまだ不慣れなもので)
  1. URL |
  2. 2010/11/10(水) 19:56:50 |
  3. イージス #MOEoYrDQ
  4. [ 編集]

イージス様
 拍手ボタンからのメッセージもいただいておりましたが、あちらはこの寂しいコメント欄よりもさらに閑散としているので、めったに確認しないため、気づいておりませんでした。
 さて、私は日本の大学の事情はあまり知らないのですが、知っている範囲でいえば、北岡元先生が拓殖大学大学院で、非常設ですが「国際情報管理論」(理論と実際)という講座を受け持たれています。
 また、講義内容まで存じませんが、インテリジェンスに精通された先生としては、防衛大学校の太田文雄先生、京都大学大学院人間・環境学研究科の中西輝政先生、慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の手嶋龍一先生、東京工科大学の落合浩太郎先生、皇學館大学の奥田泰広先生が、さらに私は面識はないのですが、慶應大学大学院政策メディア研究科の土屋大洋先生がいらっしゃいます。たしか佐藤優先生、恵谷治先生も早稲田で講座を担当されていたように思いますが、詳しくは存じません。
 現在、インテリジェンスを学びたい学生さんの多くは、大学院で京大の中西先生のゼミに参加される方、あるいはイギリスかアメリカの大学院に留学される方が多いようです。
 日本の大学の学部では、とくにインテリジェンスの講座はありませんが、国際関係論、国際政治論などであれば、ゼミ論文などで自分で研究テーマを選択することも可能かと思います。
 情報機関への就職で、出身学部はそれほど重要でないと思いますが、対外インテリジェンス関係をご希望であれば、語学は必修かと思います。英語は最低条件ですが、それに加えて今はとくにアラビア語などのエスニック系と中国語ができると断然有利かと思います。
 それと、これは私の個人的な意見ですが、若い頃に海外の僻地を一人旅する経験は、後々非常に役立つと思います。
  1. URL |
  2. 2010/11/11(木) 13:49:04 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

 黒井さん、詳しい情報をありがとうございました。やはり日本では、大学の学部レベルではインテリジェンスはほとんど学べないんですね。価値ある学問のはずなのに・・・・・。
  1. URL |
  2. 2010/11/11(木) 20:27:28 |
  3. イージス #MOEoYrDQ
  4. [ 編集]

どういったメディアで

黒井さんはヒズボラについてもお詳しいようですが、日頃どういったメディアをチェックされているのでしょうか、あるいはした方がいいのでしょうか。差し支えない範囲でご教授頂けないでしょうか。
  1. URL |
  2. 2010/11/12(金) 01:19:38 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

ワールドインテリジェンス終了後は、主に英米のマスコミのサイトから中東関連のニュースをウォッチしている程度です。たまにアルジャジーラとかハーレツとかも覗きますが、日課にはなってません。
 99年末から月刊軍事研究でインテリジェンス関連ニュース紹介のコーナーを受け持ったのですが、当時は業務上必要だったので、いろいろ漁ってました。有料ではジェーンズの複数のメディア(これは結構高額)、インテリジェンス・オンライン、ストラトフォー、ISRIAコムなど、大手どころはとりあえず契約しておりました。
 無料サイトは最近はとんとサボっていたのですが、「お気に入り」にアドレスが残っていたので、ちょっと試してみましたが、イスラム系サイトはほとんど繋がらなかったですね。
 ざっくりとチェックしただけなのですが、今も残っていて役立ちそうなものとしてぱっと思いつくのは、ご存知とは思いますが、イスラエルの対テロ国際研究所(ICT)、米国自由レバノン委員会(USCFL)、counterterrorismblog、MEMRI日本語版くらいかなと思います。反イスラミスト系ばかりですね。
 イスラム系メディアはこういう情報分野ではあまり役立たたなかったように思います。他人の褌になりますが、英米の専門家の記事を読むほうが、いろいろタメになることが多かった気がします。
 道楽Qさんには物足りない答えだと思いますが、すみません。
  1. URL |
  2. 2010/11/12(金) 21:10:06 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

「情報の読み方」は為になりました

黒井さん、御丁寧にご説明有難う御座いました。『ワールド・インテリジェンス』8巻での特集「情報の読み方」は凄く為になりましたが、黒井御自身の情報源が書かれて無かったので秘密(笑)かと。中東ウォッチは「英米サイトから」という事ですね。通常ニュースはBBCで追い、さらにサンデー・タイムズやオブザーバーなど調査報道を押さえるという事でしょうか。黒井さんは御著書で英国メディアを高く評価されています。

さて、以前有能な日本人女性アラビストと話した時にメディアをどこまでウォッチしてるか問うたら、「英語で読める物を敢えてアラビア語では読む必要があるのかジレンマがある」との事。しかも、彼らの読むのは必ずしも安全保障と関わる物でないので、どこまで語学に時間と労力を投資するはインテリジェンスの課題ですね。
  1. URL |
  2. 2010/11/15(月) 00:24:44 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

srt

http://uni.2ch.net/test/read.cgi/police/1349421787/
警視庁外事3課流出資料  国際テロリズム緊急展開班班員名簿 です
  1. URL |
  2. 2012/10/05(金) 17:39:38 |
  3. dfせ #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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